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東京から鹿児島のベンチャーへ。IT人材の地方移住には活躍の場があふれている

NTTデータを退職して鹿児島にUターン、現在は建設業向けクラウドサービス「現場クラウド」で開発を指揮する吉田竜二さん。吉田さんのお話から、地方で働くメリットが見えてきた。
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東京で働くIT人材が、地方に移住してやりがいのある仕事をしていく―その可能性を探る今企画。新卒で入社したNTTデータを辞めて鹿児島にUターン、現在は地元のベンチャーで建設業向けクラウドサービス「現場クラウド」開発を指揮する吉田竜二さんのストーリーからIT人材の新しい活躍の場を考える。

IT人材の地方移住・Uターン。そこに活躍できる場はあるか?

満員電車で通勤することなく、自然に近い場所で人間らしい生活と仕事ができたら…、都会で働いていると、そんなふうに夢想することも一度ならずあるだろう。

実際、最近は地方への移住を考える働き盛りの世代が増えているという。しかし、移住を考えた時にネックになるのが仕事だ。リモートワークの環境が整ってきたとはいえ、まだまだ取り入れる企業は少ないし、その働き方は誰にでも合うものでもない。

今回紹介する吉田竜二さん(34)は、東京からのUターンで鹿児島の小さなIT企業に転職し、今年で7年目を迎える。東京の大企業にはなかった充実感を感じているという吉田さんの話からは、地方の中小企業ならではの働きがいや、IT系の人材の活躍の可能性が見えてきた。

【プロフィール】

吉田竜二 株式会社 現場サポート ソリューション開発部部長

1982年生まれ。筑波大学に進学し、機械系と情報系をミックスしたような学部である光学システム学類に所属。卒業後4年間はNTTデータにて企画・開発に従事。その後、東京と鹿児島の数社を経て2010年「現場サポート」に入社。現在に至る。

会社が作った枠に人が入る大企業。集まった人が会社を形作る中小企業

吉田さんが大学卒業後の就職先として大手SierのNTTデータを選んだのは、「大規模な社会インフラとなるようなシステムを構築し、社会に対しインパクトを与えたい」という気持ちからだった。

入社後は大小のシステムの企画・開発に関わったが、途中からうつ病になってしまい、4年で去ることに。吉田さんいわく「病気は事故にあったようなもの。働き方が分かっていなかった。もっと人に頼ればよかったのに、抱え込みすぎてしまった」という。NTTデータには尊敬できる人がたくさんいて、今でも好きな会社。何事もなければずっと働き続けるつもりだったというが、アクシデントにより新たなキャリアを模索することになったのだ。

その後、一度は東京のWeb系ベンチャーに入るが、力が発揮できずに退社した。このときに「都会の生活スタイルも、自分には合っていない」と気づき、鹿児島へのUターンを決めたのだった。

現在の「株式会社現場サポート」は、最初の面談で社長のビジョンやオープンな姿勢にひかれ、気づけば入社7年目になった。

入社以来、吉田さんは経営企画や自社サービスの開発に携わっている。吉田さんが入社直後の企画段階から携わってきた建設業向けのクラウドサービスは、ここ2~3年で会社の主力製品に。これからもそのときどきに出てくる課題やニーズを反映させながら、良いサービスに育てていくつもりだ。

サービスのみならず会社の方向性も、小さい組織ならではの機動性を活かし、柔軟に変化しているそう。

経営はそんなに調子がいいわけじゃないんです。しょっちゅう危機がきて『やべーやべー』って言いながら、方向修正してますよ。5年の中期ビジョンと、1年間の具体的な計画は毎年決めているんですけど、その通りに行くことは100%ないです。フットワークが軽いのは、この会社のいいところですね。

最初に経験した大企業と大きく違うと感じる点は、「ひとりひとりの役割、影響力の大きさ」だという。

NTTデータの時は会社として枠が決まっていて、そこに上手くはまれるかどうかだったんですよね。自分がいてもいなくても会社は変わらない。でも今は、人が集まって会社の形を成している。誰が入ってきたかで会社の形は変わります。労働時間は今の方が断然短いんですけど、逆に自分が会社やお客様に与えるインパクトは、今の方が大きいと感じています。

「やりがいは何ですか?」と聞くと、吉田さんはしばらく考えこんだ後にこう言った。

「やりがい」なんて特に考えていなくて、やるのが当たり前という感覚なんです。東京にいた時はワークとライフが別のものだったけれど、今は人生の中に仕事が取り込まれているような感じで。子どもが成長すると嬉しいのと同じように、メンバーが成長したり仕事が上手くいったら嬉しいんですよね。

東京では感じられなかった、地域を支えるという気持ち

もう1点、吉田さんが東京で働いていた時と今とで大きく異なるのが、「地域に対する意識」だ。「会社を良くしたい」と思うと同時に、「鹿児島を良くしたい」という思いを強く持つようになった。そういう思いは吉田さんだけでなく、周囲や他の会社の人からも感じられるという。

東京では、会社と会社は競争関係ですよね。勉強会なんかに行ったとしても、それはあくまで自分のスキルを上げるためという面が強いと思います。でも鹿児島でイベントに参加すると、それぞれが持っているものを出し合って、みんなで地域を良くしていこうぜという、雰囲気が感じられるんです。地方の小さい会社は1社ですべてを賄うことはできないから、周りの会社と協力しあわないといけないということもありますしね。

吉田さんが地元出身者だから殊更にそう感じる部分があるのかもしれないが、他県から移住した人からも、「鹿児島で出会う人には、東京では感じられない隣人感を感じる」という声を聞く。東京と比べればかなり人口が少ないから、1度関係ができれば濃い付き合いにならざるをえないということもあるのだろう。

地方にはエンジニアやIT系人材の活躍の場がたくさんある

吉田さんは、次のような理由から、地方には都会から移住するIT人材が活躍する場がたくさんあると語る。

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・ビジネスモデルや整備されたワークフローなど、東京の大企業で得たノウハウがある。それを地方の中小企業に移植するだけでも大きな価値がある。

・エンジニアの募集は多くあり、特にプロダクトマネジメントができる人材はどこでも需要がある。

・特に非IT企業は、ユーザー側のニーズが分かるIT人材が入って改革する余地が大きい。今はまだ顕在化していないが、そのうち需要が増えてくるだろう。

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移住者にとってのメリットとしては、環境の良さももちろん大きい。吉田さんの場合、東京では1時間半かかっていた通勤が、ドア・ツー・ドアで30分以内。生活費も東京に比べれば相当安い。地方に移住となると収入が下がることを心配する人も多いが、吉田さんは「住居費や飲み代もすごく安いので、大丈夫」と太鼓判を押してくれた。

話を聞いていて、吉田さんが仕事で充実感を感じられているのは、たまたま良い会社に巡りあえたという幸運もあったのではないかと感じられた。吉田さんは、「それは確かにある」と認めつつ、狭い地域だから行動すれば自分に合う会社と出会えるはずだと、次のようなアドバイスをしてくれた。

地方だったら、どこかの会社の社長とだってすぐに会えます。鹿児島の場合、間に人をひとり介せばつながれるんです。転職サイトとかを使うよりも、イベントに参加したり、知り合いのつてをたどるのが早いですよ。今、こっちのしっかりした会社だと、経営者が2代目や3代目の若い人に変わってきていて、地方に新しいやり方を持ち込んでくれる人材を欲しがっています。そういうところにコンタクトを取ってみるといいですよ。何かあればぜひ私に連絡ください(笑)

地方には整った制度や用意されたポストはないかもしれない。だが、IT系人材が足りていない場所はたくさんある。相手がその必要に気づいていなくても自ら売り込んでいくくらいの気概があれば、IT人材が幸せに働き、暮らしていける可能性は大いにありそうだと感じられるお話だった。

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