なぜヒトは老いるのでしょう。現代の科学で提唱されている、細胞が老化していく2つのメカニズムとは?
現代の科学では、「老い」のメカニズムを2つの解釈によって説明しようとしています。
1つは「プログラム説」です。これは生命の誕生から成長、成熟、老化、死に至るまで、すべての段階はあらかじめ遺伝子に組み込まれているとする説です。
「ヘイフリックの限界」といって、細胞には分裂する回数に限界があり、現在ではその原因は「テロメア」にあると考えられています。「テロメア」は遺伝子の端っこに存在するDNA配列で、あらゆる生物に存在しています。「テロメア」は細胞分裂を繰り返すごとに短くなることが分かっており、それ以上短くなれなくなると細胞が分裂を停止し、死に至るわけです。
哺乳類の寿命は、この「テロメア」の影響により、成熟にかかる年数の5~6倍とされています。ヒトの場合、18歳で成熟するとすれば、寿命は90歳~108歳となります。運良く病気にならなければ、これぐらいの年齢までは生きられるように、遺伝子にプログラムされているということです。
もう1つのメカニズムは「障害蓄積説」です。いろいろな原因による障害が蓄積された結果、老化が起こり、死に至るという説です。
活性酸素や紫外線といったストレスによって遺伝子を構成するDNAが傷つけられると、通常はこれを修復する遺伝子が活性化します。ところが傷の程度がひどいと修復が間に合わなくなり、異常なDNAを持つ細胞が生まれ、必要なタンパク質が合成できなくなります。または、酸化や糖化といった化学反応によって、体を構成するタンパク質や脂質の変性が引き起こされます。このような遺伝子やタンパク質、脂質の異常が起こると、細胞は正常に機能しなくなり、「老い」が起こるということです。
「プログラム説」と「障害蓄積説」は、どちらが正しいということではなく、おそらくはどちらも正しいのだと思います。2つのメカニズムが相まって細胞が老化し、「老い」ていくのでしょうが、現代の科学ではその詳細は不明のままです。
さて、いまだ謎に満ちた「老い」という現象、現代の医学はどこまで食い止めることができるのでしょうか。
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医師プロフィール
宮山 友明 循環器内科
千葉大学医学部附属病院循環器内科
2004年 千葉大学医学部卒業後、国立国際医療研究センター、榊原記念病院で内科系研修と循環器専門研修を修了。2012年 千葉大学大学院で博士号取得。研究テーマは冠動脈疾患とカテーテル治療。患者に優しい細小カテーテルによる狭心症、心筋梗塞の低侵襲治療の施行をはじめ、高度救命救急センターで救命医として研鑽している。そのかたわら、未病への対処(予防医学)の重要性を感じ、アンチエイジング医学への挑戦やスポーツ医学の普及も行う。大学生や一般社会人への各種セミナーの催行、タレントやプロアスリートの健康管理も実践している。
宮山 友明