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2015年11月02日 23時44分 JST | 更新 2016年11月01日 18時12分 JST

サイボウズ式:産後クライシスなんて知らなかった──離婚の危機からV字回復した男がいまだから語れる話

当時の僕にもっと知識と経験があれば、「これが産後クライシスというものなんだな。だから今は俺を受け入れられない状態なんだな」と考えられたのかも

左より株式会社エムティーアイ「ルナルナ」事業部長 日根麻綾氏、日本愛妻家協会 主任調査員 小菅隆太氏

日本愛妻家協会」ってご存知ですか? 「妻というもっとも身近な赤の他人を大切にする人が増えると、世界はもう少し豊かで平和になるかもしれない」という甘い理想のもと、愛妻家というライフスタイルを世界に広めていくことを目指している団体です。キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ、通称「キャベチュー」なんていうイベントも実施しています。

この日本愛妻家協会の主任調査員で初代サケビストも名乗る小菅隆太さんと、株式会社エムティーアイが運営する女性のカラダとココロをサポートするスマホサービス「ルナルナ」の事業部長を務める日根麻綾さんの対談をお届けします。 

今でこそ立派な愛妻家に成長した小菅さんですが、実は過去には奥さまと険悪な関係になり、離婚の瀬戸際までいったヘビーな経験があるそう。一方の日根さんは、新婚で幸せ真っ只中。自分の夫にも愛妻家になってほしいとの思いから、夫婦関係の「奇跡のV字回復」を果たした小菅さんの話に興味シンシンです。 

夫婦はいったいどうすれば、生涯にわたって愛し、愛される良好な関係を築いていけるのか? 以前から知り合いだというお二人の息の合った話に耳を傾けつつ、一緒に考えてみましょう。

お互いが思い描いていた夫婦像が、まったく違うものだった

日根:わたしは今年、交際3年半で結婚して、新婚4ヶ月目です。今のところ夫との関係はわりとお互い対等で、良好かなと思っていて。あ、今朝も夫に、「今日は愛妻家と対談するんだ」と言ったら、「そのポジションいずれ俺が奪うから待ってろ!」と言われました。

小菅: おお! それはすごい(笑)

日根:ええ。ただ、一方で不安もあるんです。今後、妊娠・出産・子育てといった大きなライフイベントを迎えるだろうし、仕事も続けていきたい。 

そうした中で、果たしてずっとこのままの良好な夫婦関係を維持していけるのかな、と。どう変化したら、お互いいい感じに成熟していけるのか。それを今日、小菅さんに聞きたいと思っています。

小菅: 僕は2003年に、27歳で結婚しました。周りを見ても早めの結婚だったんですけど、それは僕が「女の人は20代で結婚して、30になる前に子供を生むのが当たり前」という考えの両親に育てられたこともあってだと思います。 

妻とは結婚前、6年付き合ったんですけど、その間、「こういう夫婦になろう」みたいな話は、まったくしたことがなかったんです。

日根:奥さんは小学校の同級生なんですよね?

小菅: そうそう。昔からよく知っている人だからこそ、そんな話はしなくてもわかりあえるだろうと思っていて。だけど実際は、坂道を転がり落ちるように、どんどん夫婦仲が悪くなっていきました。

日根:お互い「こうなりたい」という理想像もない状態だったんですね?

小菅: それぞれが思い描いていた「夫婦ってこういうものだろうな」みたいな像はあったと思います。けれどもそれが、お互い、まったく違うものだったんです。 だからさっきの日根さんの話はすごくうらやましいですよ。「愛妻家のポジションはいずれ俺が奪う」なんて旦那さんが言う、そういう関係で結婚できていて(笑)

子供の誕生をきっかけに「人生のダークサイド」へ

日根:夫婦のすれ違いの原因はなんだったんですか?

小菅: 最初に、のっぴきならない価値観のぶつかり合いが出たのは、子供が生まれたのがきっかけかな。赤ちゃんを作ろう、しかも早くできるといいね、という点ではお互い合意していました。

けれども、「子供ができた後も夫婦仲良くしよう」という点については合意できていなかった。というか、そもそも仲が良いから結婚したんだから、何も変わらないだろうと思っていたんです。

日根:まあそうですよね。

小菅: ところが、子供という自分の分身ができた瞬間に、横にいる妻が血族ではなくて、一番身近にいる他人であるという事実を突きつけられた気がしたんです。特に異性である娘が生まれたので、自分の愛情の矢印がどんどん娘に向かっていって、正直、妻が少し目の前から見えなくなっていた

日根:そういうものですか。

小菅: 口ではなかなか表現するのが難しい、感覚的なものなんだけどね。妻のほうも、頭ではそういう僕を理解しようと思っていても、毎日の生活が完全に子供の面倒を見ることにシフトしていったこともあって、ものすごい寂しさを感じるようになったようで。そこからお互いがモヤモヤを引きずる状態になってしまいました。

日根:その状態はどのくらい続いたんですか?

小菅: 第2子の娘が生まれるくらいまでだから、2年半くらいかなあ。あのころが一番つらかったなあ。人生のダークサイドでした。

あの時サインした離婚届は、今もしまってあります

日根:きっかけは子供ができたことで、そこにいろいろなことが乗っかっていった感じだったんですかね?

小菅: そうだね。当時は僕も、相手の気持をおもんばかることがまったくできていなくて。例えば、子供が生まれる前は、2人とも、友達を家に招いておもてなしをするのが大好きだったんです。 

で、そのノリで僕が、「娘を友達に披露するためのホームパーティーをやろう!」なんて提案するわけですよ。まだ産後1ヶ月なのに。そこで妻がトーンダウンすると、「なんで俺がこういう楽しい企画を考えているのに、ふてくされた対応をするの?」みたいになってしまい。

日根:うわ〜、それはちょっと...。

小菅: しかも「子供を連れて出かけるのは大変だろうから、あえて家でやろうと言っているのに、なんで理解してくれないの?」なんてことまで思っているんですよ。人を招くなら、その前に掃除をしなくちゃいけない、料理も用意しなくちゃいけない、皿も洗わなくちゃいけない。そういうことはまったく考えていないんですね。 

すると妻は「結局あなたは自分がかわいい娘をみんなに見せたいだけでなんでしょ。自分ばかりいい顔をしようとして」と不満に感じる。そういうことが、どんどん蓄積されていってしまったんです。

日根:奥さんの気持ち、すごくわかる気がします(笑)。小菅さんの対応も原因の1つだと思いますが、それに加えて、女性は産後、ホルモンバランスが変わって、メンタルが落ちやすくなったりするそうです。 

「ルナルナ」でアンケート調査をしても、「産後3ヶ月くらいはすごくつらかった」とおっしゃる方が多くて。妊娠中は夫に対する想いやかかわり合いが上がっていくのに、産後、それがガクンと下がったりもします。いわゆる「産後クライシス」というものですが。奥さんもそういう状態だったのかもしれませんね。

小菅: 当時の僕にもっと知識と経験があれば、「これが産後クライシスというものなんだな。だから今は俺を受け入れられない状態なんだな」と考えられたのかもしれませんが、そんなことにはまったく思いが至らず。

だから、「勝手にメンタルが落ちていく妻、そういう妻とまったく向きあおうとしない僕」となって、どんどんすれ違いが広がり、結果として2年半も引きずり続けてしまったんでしょう。

日根:なるほど。

小菅: とにかくあのころは、顔を合わせれば常に口論でしたから。ドラマの象徴的なシーンで、「家に帰れない夫」ってあるでしょう? 近所の公園でブランコに乗って時間を潰す、みたいな。本当にそれをやっていましたもん(笑)。 

妻のほうも、僕が帰るまでは今日は笑顔で玄関のドアを開けようと思っているけど、いざ帰ってきて僕の顔を見た瞬間、目尻が上がって低い声で「おかえり」となる。最悪の時には、妻が取ってきた離婚届に僕がサインして、あとは妻がサインして役所に出せば終わり、というところまでいきました。

日根:そこまでですか!

小菅: 今もその離婚届は、封筒に入れて引き出しにしまってありますよ。戒めとして。

離婚という"武器"がなくなった

小菅: 僕らは運良くV字回復ができたんですが、その要因として、シンプルに「覚悟を決めた」ということがありますね。離婚するかしないかギリギリまでいって、僕ら夫婦が出した結論は「絶対離婚をしない」ということだったんです。

日根:なぜですか?

小菅: 口はばったい言い方になるけど、「ケンカもするけど、お互いやっぱり好きなんだよね」ということを確認しあえたんです。ならばとにかく離婚はしない、と。それまではお互い、口論する時に、離婚というのが1つの"武器"になっていたんです。なにかと「お前、離婚したいんだろ!」「あなたこそ!」みたいに言ったりして。 

でも、離婚しないと決めたことで、その武器がなくなってしまった。それからは、今後も夫婦でい続けるなら、残りの何十年かをどうやって過ごすの? と、前向きに考えられるようになりましたね。

日根:今、回復して、当時の最悪だった時期のことを、奥さんと振り返ったりしますか?

小菅: やはりトラウマになっていたというか、時間はかかりました。リハビリのように、徐々に会話を増やしていった感じです。 

今は毎晩、子供を寝かせたら、コーヒーを淹れて、お互い最近考えていることを話し合うのが日課になっているんですよ。たまに妻が話しているのにサッカーの日本代表戦に夢中になってしまったりして、妻からコーヒーが飛んでくることもあるんですけど(笑)。そういう対話も、習慣化してしまえば徐々にできるようになります。

日根:習慣化して、続けることが大事なんですね。

後編に続く 

文:荒濱一 撮影:尾木司 編集:渡辺清美

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本記事は、2015年10月29日のサイボウズ式掲載記事産後クライシスなんて知らなかった!──離婚の危機からV字回復した男がいまだから語れる話より転載しました。