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2018年05月16日 11時16分 JST | 更新 2018年05月16日 11時16分 JST

サイボウズ式:「大企業でくすぶっている若者たちは、就活に失敗したんだわ」──ツイートの真意を社長の青野に聞いてみた

会社を選ぶ基準は「理念と代表に共感できること」

サイボウズ式


「大企業でくすぶっている若者は就活に失敗した......?」
「イケてない会社を選んじゃった......?」

サイボウズ社長・青野慶久が書いたこのツイート。

長かった就職活動を終え、春からの社会人生活を心待ちにしている身としては、ちょっと衝撃的......。これは真意を聞いてみたい! ということで、サイボウズ式のインターン生・眞木が、青野に突撃インタビューを試みました。


「この人たちは学生時代、大企業に入ること自体を目的にしてしまっていたんじゃないかな」

眞木:青野さんのこのツイートを見て、「大企業に入社しちゃダメなの?」と疑問を感じた人もいると思うんです。

青野:そうかもしれませんね(笑)。

サイボウズ式
青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得している。2011年からは、事業のクラウド化を推進。厚生労働省「働き方の未来 2035」懇談会メンバーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)。2018年3月に『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているかもしれない。』(PHP研究所)を出版予定

眞木:なぜあのツイートを書いたんですか?

青野:きっかけは、最近あるイベントに登壇したことなんですよ。そのイベントには、大企業に勤めている若手の方々がたくさん参加していました。

眞木:はい。

青野:でも彼らには、なんというか、勢いがなくて......。正直、僕には「子羊」に見えちゃったんです。

眞木:子羊?

青野:「何を言っても会社が変わらないんですけど、僕はどうすればいいですか?」みたいな質問をしている人がいて、まるで会社に飼われている子羊のように感じてしまいました。だから、その感想をツイートしたという感じです。

......でもね、あれは自分自身に言っている部分もあるんですよ。僕も昔は「大企業に入る人は優秀なんだ」という思い込みがありました。

眞木:そうなんですか?

青野:それこそ僕が社会に出た頃は、「大企業に入る人は優秀だ」というのが常識でした。新卒で松下電工に入ったとき、「自分は就活の勝ち組だ」という思いがあったことも否定できなくて。

眞木:青野さんもそうだったんですね。

青野:でも今は、就活に対する価値観も多様化しているじゃないですか。

眞木:そうですね。優秀な人が必ずしも大企業へ行くわけではないと思います。

青野:むしろ優秀な人の中には、あえて大企業を選ばない人もいますよね。就職後の転職だって、自分の意志でどんどん動ける。

そんな時代に大企業にいて、一歩を踏み出せない人たちがいるわけです。「この人たちは学生時代、大企業に入ること自体を目的にしてしまっていたんじゃないかな」という気もします。

だから最近、そういう人たちに向けて新しく『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』という本を書いたんです。どんな会社に入ったら楽しく働けるのか、就職活動の時期から考えた方がいいと思いますね。

サイボウズ式

最も安定しているのは、会社が潰れてもすぐに転職できる人

眞木:私は、誰かが大企業の内定をもらったと聞くと「優秀なんだなぁ」と感じます。これも大企業に入ることをゴールにしている発想なんでしょうか。

青野:そうそう。その人が本当に優秀かどうかは、入社後の活躍を見ないとわかりませんからね。

眞木:なぜ、働いてもいないのに「大企業に就職=優秀だ」という風に感じてしまうんでしょう?

青野:小さい頃からの経験が積み重なっているからじゃないでしょうか。

親戚のお兄ちゃんが大企業に入社したと聞いて、家族みんなで「◯◯君はすごいね〜!」と話したり、逆に誰も知らないような会社に入ったと聞いて「大丈夫かな」と心配したり。

眞木:たしかに、身に覚えがあります。

青野:でもね、「大企業は伝統があるからすごい」とか「莫大な利益を出しているからすごい」と単純に考えるのは、ちょっとあぶない気がしませんか?

眞木:どうしてでしょう?

青野:今現在もその会社が伸び続けているのか、その会社にいる人が優秀なのかというのは、外から見ているだけではわかりません。パワフルな創業者が作り上げた「儲かるビジネスモデル」に従って、同じことをやり続けているだけなのかもしれない。

眞木:大企業を選ぶ人は「安定」を求める傾向が強い気がします。実際のところ、大企業に入れば安定できるんでしょうか?

青野:そうとも言い切れなくなってきた感じがありますよね。日本の名だたる大企業が大幅な業績悪化に陥っている。

そもそも、「安定」とは何なのか、という話だと思います。

眞木:安定とは何なのか。

青野:はい。最も安定しているのは「会社が潰れてもすぐに転職できる人」です。会社に依存しないから、とても安定している。

一方で「この会社じゃないと生きていけない」という人はリスクが高いですよね。経営者が間違えた瞬間に道連れになってしまうかもしれません。

眞木:会社が潰れてもすぐに転職できる人」になるには、どうしたらいいのでしょうか?

青野:自分のスキルが何なのか、それを求めている人が誰なのか、という質問に答えられるようになることが必要ですね。

眞木:もう少し詳しく教えてください。

青野:要は仕事って、自分と会社の「マッチング」なんです。1つの会社でしか通用しないスキルを持っている人は転職できない。

だから、社外価値を意識しながらキャリアパスを作っていくことが重要だと思います。 そのためには、複業のように社外の活動に参加して、会社以外のつながりを持ち続ける必要があります。

会社を選ぶ基準は「理念と代表に共感できること」

眞木:就活生が大企業に入ることを目的にしてしまうのは、何を基準にして会社を判断すれば良いかわからないからだと思うんです。

自分が成長できる環境を選ぶには、会社のどんな部分を見ればいいのでしょうか?

青野:新しく出す本にも書いたんですけど、僕は「理念と代表」だと考えています。

会社の理念を見て「自分はこのチームが目指している姿に共感できるか」を考えるべき。これは仕事でモチベーションを保つための大前提だと思います。多くの日本の大企業は、これがあいまいになってしまっています。

眞木:たしかに「スケールが大きすぎて自分を重ねにくいな」と感じる理念の会社も多いですね。あとは、就活中に社員の人と話していても、ほとんど理念に関する会話がないとか。

青野:おそらく創業者が理念を作った当時は社内での共感も高かったのでしょう。創業者が亡くなってからもずっとそのまま掲げられ、アップデートされずに宙に浮いてしまっている。

そんな理念なら、やめちゃえばいいと思うんですけどね。

眞木:理念って、アップデートするべきものなんですか?

青野:もちろん。時代や会社の状況が変われば、理念も変わるはずですから。ちなみにサイボウズの理念は何回もアップデートしていますよ。

最近では「理念にバージョン番号をつけておけばよかったな」と後悔しています(笑)。「理念はアップデートする前提で掲げるものなんだ」ということも伝わりますし。

眞木:とはいえ、自分に合っている理念を見つけるというのもなかなか難しい気がします......。

青野:たしかに難しいですよね。そもそも自分のことをよく理解していないといけない。自分はどんなときに楽しいと感じるのか、とかね。

眞木:はい。

青野:個人の考え方は働きながら変化するものなので、「理念に合わなくなった」と思えば会社を移ればいいんです。人もどんどんアップデートされていく。それは自然なことだと思います。

眞木:もうひとつの「代表」というのは?

青野:会社のように人が集まって運営している組織では、代表を名乗るトップが人事権や予算権を持っています。

代表はちゃんと見極めたほうがいいですよ。その人が信じられないと、「陰で悪いことをしているかもしれない」とか、いろいろ考えてしまうじゃないですか。

眞木:はい(笑)。でも、経営トップのことは就活生からはなかなか見えにくい気もします。直接聞くこともできないし......。

青野:代表自らが「発信しているかどうか」が重要なポイントですね。

サイボウズ式

眞木:発信、ですか。

青野:みんながみんな同じではないけれど、自分の行動に自信のない代表というのは、陰に隠れてあまり情報を出さない傾向があります。発信していない人は後ろめたいことがあるのかもしれません(笑)。

逆に自分の行動に自信のある代表は積極的に発信し、共感する人が多く、仲間も多い。どんなことを発信しているか、どんな風に共感されているかを見るのは大切だと思います。

内定をもらったタイミングでは、就活の成功・失敗を判断できない

眞木:青野さんが考える「就活の成功」についても聞いてみたいです。成功・失敗を簡単に判断できるものではないのかもしれませんが。

青野:ひとつ言えるのは、「内定をもらったタイミングでは就活の成功・失敗を判断できない」ということですね。

自分も周囲も「内定をもらえたから、就活は成功だ!」となりがちだけど、このタイミングではない。

眞木:逆に、内定をもらった後に「これでよかったのかな......」と考えている人も多い気がします。

青野:内定をもらったからといって安心できないですよね。それは、ハズレくじかもしれないし。

眞木:ハズレくじ......。

青野:就活が成功したかどうかを見極めるときに大切なのは、入社後に「自分の求める報酬」を得られているかどうかだと思います。

報酬といってもお金だけではありません。仕事で得られるスキルや人脈、仕事内容、お客さまや仲間からの感謝の声、働く場所。いろいろあります。

眞木:もし自分の望む報酬が得られないと感じ、それに早く気づくことができたなら、すぐに行動するべきなんでしょうか。

青野:そう思います。怖いのは「当たりを引いた!」と思って舞い上がったまま入社すること。望む報酬が得られれば最高ですが、もしそうでない場合は、モヤモヤを募らせて子羊になってしまうかもしれません。

もちろん、入社して実際に働いてみないことにはわからない部分も大きいと思います。もっというと、働きはじめるだけじゃわからない。働きはじめてから「自分が欲しい報酬がちゃんと得られているか」を考え続けることが大事なのだと思います。

「大企業に入れば幸せになれる」というのは妄想

眞木:「最初の会社には少なくとも3年は勤めるべきだ」ということもよく言われます。

青野:僕はそう思いませんね。

学ぶべきことを学んだら次に行けばいいと思います。大企業の場合、めちゃくちゃ成長を引き出してくれる部署に入れる可能性もありますが、そうでない場合もありますから。

眞木:大企業では成長できない可能性もあるということですか?

青野:はい。そう考えるのは、いまだに「年功序列」の考え方がはびこっているからです。

日本の大企業の多くは年功序列。入ったときはみんな同じ給料で、そこから10年、下手をすると20年くらいほとんど給料に差がつかないんです。これ、すごくないですか?

サイボウズ式

眞木:ある意味すごいと思います。

青野:そうやって10年、20年と過ごすわけです。基本的に給料は下がらない。でも40歳くらいになるとだんだん差がつきはじめ、ふるい落とされずに残っていればいいポストがもらえるという。

大きいテレビを作れば売れていた時代ならそれでよかった。とにかく真面目な人が勝てた時代で、「漢字1万字レース」のようなことをひたすらやっていればよかったんですよ。

眞木:漢字1万字レース?

青野:目的を考えずに、言われたことをひたすらやるがまんレースのことです。子供の頃、「漢字をノートに10回書いてきてください」という宿題ありませんでしたか?

眞木:ありました。

青野:先生の指示をうのみにする必要はないんです。目的は「漢字を正しく書けるようになること」なのだから、「わからない漢字だけ、必要な回数だけ練習したい」と、宿題を出している先生に交渉すればいいんです。

学校を卒業しても、会社からは「何も考えずにとにかく漢字を1万字書け」みたいな指示が飛び、個人はひたすらそれをやり続ける。サボったら負けという競争、これが漢字1万字レースです。

眞木:自分も気づかないうちに、そのレースに参加している気がします......。

青野:「みんなで残業して頑張るぞ!」と団結していれば世界で勝てた時代もありました。でも今はもう、それを続けても中国やインドには絶対に勝てません。いまだに漢字1万字レースを続けているような大企業では成長できませんよ。

眞木:もし漢字1万字レースにはまってしまっている自分に気づいたら、すぐに動き出すべきなんだ......。

青野:そうですね。「大企業に入ればエスカレーター式に幸せになっていける」という妄想を持つのはやめたほうがいいです。

「頑張れば来年、再来年には良いことが待っている」と考えがちですが、その実、モヤモヤ感がどんどん高まっているだけということもある。

眞木:なんだかギャンブルみたいですね。「次こそは当たるはず!」という。

青野:その感覚はあるかもしれないですね。大企業でモヤモヤしている人にはギャンブル感がありそう。「そろそろ面白い仕事が回ってくるはず」「そろそろ良い上司に当たるはず」といった、根拠のない期待があるんじゃないかな。

就職先の最終決定権は、親ではなく自分が持つ

眞木:最後にもうひとつ、青野さんに聞きたいことがあります。

青野:どうぞ。

眞木:大企業に入らなきゃいけないと考えている就活生の場合、「親の期待に応えるため」という理由も大きいと思うんです。

青野:なるほど。

眞木:理念や代表に惹かれて入社したいと思っても、「大企業に入ってほしい!」と頑(かたく)なに考えている親を説得するのは大変なんじゃないかと。

青野:その大変さはよくわかりますが、「自分がどこに就職するか」という最終意思決定の権限は、自分自身が持っていないとダメです よ。

親に承認をもらって就職するというプロセスでは、主体的に自分の人生を選んでいないことになる。将来的に幸福度が下がっていってしまうかもしれません。

眞木:親に言われたからといって大企業に入り、それで幸せに働けなかったとしても、親のせいにはできないですもんね。

青野:そうそう。かえって親を不幸にしてしまうんですよ。子どもが幸せに働いていれば親も「良かった」と思うはずですから。

自分の人生を主体的に選ぶというのは、何事においても大切なのではないでしょうか。

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執筆・多田慎介/撮影・栃久保誠/企画編集・明石悠佳、眞木唯衣


サイボウズ式」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。 本記事は、2018年2月27日のサイボウズ式掲載記事「大企業でくすぶっている若者たちは、就活に失敗したんだわ」──ツイートの真意を社長の青野に聞いてみたより転載しました。