データビジュアリゼーション、動画、長文記事......編集者として思ったこと【編集ノート】

過去、今、これからと常にニュースサイトの編集につきまとっているのが、スマホの画面という制約のなかでどうやって伝えるべきことを伝えていくのか、というテーマだ。
Kohei Hara via Getty Images

編集ノート。ついに回ってきてしまった。

何を書けばいいのか。自分が取材して書いた記事に関して、書くべきことはすべて書いたつもりなので特にここで付け加えることはない。ニュースサイトにとって大事なのは今とこれから。こうしている今も、取材済みだが書かれていない「積みネタ」オバケがどこからともなく現れ、書け、書け、と耳元で囁いてくる。

そんななかで、過去、今、これからと常にニュースサイトにつきまとっているのが、スマホの画面という制約のなかでどうやって伝えるべきことを伝えていくのか、というテーマだ。

いまのネット媒体編集者にとって、テキストも画像も動画も、伝えるための手段であって、それ自身が目的ではない。それぞれが持つ特性を存分に活かして、伝えるべきことを最大限伝わるよう、アレンジしなければならない。そうした視点から見て、今の流行となっている、1.データを元にした記事と、2.動画記事について、思うところを書いてみたい。

海外メディアから流行が始まった、データを元にした記事、とくに視覚要素に訴えるコンテンツは、本サイトでも都知事選やサッカーワールドカップ、パレスチナ紛争などをテーマに記事を提供してきた。

本サイトにとどまらず、今年はデータを可視化したデータビジュアライゼーションも流行したが、いざスマホ、ということを考えると、とくに自分でグラフや地図を触れる、インタラクティブ性のあるものは非常に使いづらい。さらに、そうしたツールがメインコンテンツとして前面に出てしまうと、そもそもテーマに興味を持ってもらう仕掛けに乏しく、読者にとっては「だから何?」と素通りされ、その新奇性で業界関係者だけが感心する、みたいな笑えない流れになってしまう。

ひと通りビジュアライゼーションが流行ったあとに求められるのは、そこから紡ぎだされるストーリーやオピニオン、そして読者自身の「そうだったのか!」という気付きだ。多くのニュースサイトがビジュアル要素を強化し、「見慣れた」今後はより、「見える」だけではなく、そこから「何が言えるか」が大事になりそうだ。

動画に関しては、スマホで動画を見るケースを考えると、記者会見や中継のような本当にリアルタイム性が重視されるものか、生主、YouTuber、人気ブロガーといった発信者そのものにファンが付いているケースか、どちらかだろう。最新の情報通信白書でも、利用者が関心を抱いているのは動画「投稿・共有」サイトと分類されていて、SNS、コミュニティの一種として消費されている側面が強い。実際の読者の行動を見ても、ニュース記事に単に動画が貼られているだけでは、なかなか再生には至らない。自分も一般ユーザーとしてYouTubeはよく見るが、ちょっとニュースを見たい、くらいの動機で、内容にまったく関係ない動画広告を流されると、動画自体をスルーしてしまう。

そういう状況下で、まず動画でやるべきなのはFacebookの活用ではないか。スマートフォンのFacebookアプリではスクロールするだけで直接動画が再生されるため、ハードルが低く、「ついつい見てしまう」。記事のイントロダクションや冒頭の鋭い問いかけ、つまりキャッチの部分をFacebook動画で引きつけて、そして......という流れを作っていけたら良いと思う。アメリカではVoxが、時事問題について1〜3分で解説した動画を制作し、Facebookで流している。こうした試みがどれだけ受け入れられているのかも見守りたい。

もうひとつ、動画周りで今年、衝撃を受けたのは6秒動画「Vine」によるスポーツハイライトだ。ワールドカップ期間中には、テレビで放映されたリプレイシーンを切り取って、Vineにゴールシーンが大量に投稿された(もちろん著作権的にはアウト)。ツイッターのタイムラインにそうした投稿が流れてくると、本当に美味しい部分だけがたった6秒で切り取られ、読み込みに時間がかからず、さらに見返すのに再生ボタンや巻き戻しをタップする必要がないので何度でも見てしまう。今のスマホユーザーの時間感覚にバッチリなのだ。ああ、これは大会公式Vineアカウントがあったらいいのになあ、と感じた。

Vineはアメリカで主に活用例が増えてきていて、NASAの宇宙飛行士がオーロラを投稿したり、

ロサンゼルス・タイムズはインフォグラフィックを見せる手段としても活用している。

ハフポストUS版で、ファーガソン問題を現地取材しているレポーター、ライアン・ライリーも暴動の模様をVineで伝えた。

見る方も作る方も手軽な6秒動画の活用は「スマホ前提」の今後、ひとつのピースになりそうだ。

最後にもうひとつ。よく言われる、「長い記事は読まれない」というのは、本サイトのデータを見る限り、決して真実ではない。ただ、今のスマホユーザーは浴びるほどの大量の情報にさらされているため、費やす時間に対して、どれだけのものが得られるか、という時間あたりの満足感についてはとにかく厳しい、というのが実感だ。長いのならば、長い必然性と最後まで読ませるクオリティを備えていなければ読まれない。単純だが、結局そういうことなのだと思う。ハフィントン・ポストでも、短く伝えられることはスマホネイティブな短い記事で、同時に、それでは伝えられないことをクオリティを備えた長文記事で提供する、どちらかだけではない、バランスの良い構成を目指していきたい。

2015年もきっと、いろいろな新しい表現が生まれるだろう。

来年もどうぞ、ハフィントン・ポストをよろしくお願いいたします。

注目記事