「知らないのはヤバい」日本の若者が伝えたい気候変動に並ぶ“もう一つの危機”。生物多様性条約のCOP15が開幕

一般社団法人Change Our Next Decade(COND)の矢動丸琴子さんは、生物多様性条約のCOP15の現地に入り、日本へ情報を届ける。

国連生物多様性条約の締約国会議(COP15)第2部が12月7日(日本時間8日)、カナダ・モントリオールで開幕した。

COP15では、“生物多様性版のパリ協定”ともいえる世界の新目標「ポスト2020枠組み」が採択される見込みだ。「少なくとも2030年までに生物多様性の損失を逆転させ回復させる」ためにどこまで野心的な目標が設定できるのか、注目されている。

現地には、世界中から政府関係者はもちろん、企業や環境活動家、先住民族や女性、若者などの多様な立場のグループも集結する。日本のユースの一人として参加するのが、一般社団法人Change Our Next Decade(COND)の矢動丸琴子さんだ。

一般社団法人Change Our Next Decade(COND)の矢動丸琴子さん
一般社団法人Change Our Next Decade(COND)の矢動丸琴子さん
Maya Nakata

CONDはCOP15でブースを出展し、CONDの活動紹介や、生物多様性と気候変動を同時に解決するためのユースアクションプランのドラフトに関するワークショップなどを行う予定だ。会場内のユースパビリオンで、アジア地域の若者とこれまでの10年を振り返り、これからの10年について議論するセッションも実施予定だ。

さらに力を入れたいと矢動丸さんが意気込むのが、COP15の現場から日本への情報発信だという。そこには、COP15に向けて、準備会合や国際会議へ参加し、日本各地の地域の声を聞いてきた中で感じた「分断」や「危機感」があった。

生物多様性の危機「怖っ」

生物多様性の損失で何が起きるのか、想像しづらいという人もいるだろう。矢動丸さんは生物多様性の損失などがもたらす被害の一例として、「新しい感染症のリスクが高まる」と指摘する。

動物由来感染症のリスクが高まる原因の一つは、人が森林を破壊し土地を改変することで生態系や環境のバランスが崩れ、これまで接することのなかった動植物と人間が接触してしまうことだ。WWFによると、「過去30年間、ヒトに発生した新しい病気の約60〜70%は動物由来であった」という。

「はっきりしたことはわかっていませんが、新型コロナウイルスも人と自然の距離が近くなり起こったものだと考えられています。レポートには『毎年およそ3〜4種類の新しい感染症が発生しており、そのほとんどが野生動物に由来している』とも書かれていて、正直怖っと思いました」

一般社団法人Change Our Next Decade(COND)の矢動丸琴子さん
一般社団法人Change Our Next Decade(COND)の矢動丸琴子さん
Maya Nakata/ハフポスト日本版

私たちの暮らしを支える基盤となっている生物多様性は、実は気候変動に並ぶ、あるいはそれ以上の危機に直面しているともいえる。

地球上で人が安全に生きるために重要な9つの領域の状況を示した「プラネタリー・バウンダリー」を見ると、生物多様性の喪失にあたる「絶滅の速度」は「気候変動」よりも危機的だ。すでに人間が安全に生存できる境界を越えるレベルに達しているといわれている。

気候変動対策を話し合うCOP27でも「生物多様性の日」が設けられるなど、世界で生物多様性の保全が急務だと認識され始めている。

プラネタリー・バウンダリー(右):オレンジは「不安定な領域を超えてしまっている(高リスク)」、黄色は「不安定な領域(リスク増大)」、緑は「地球の限界の領域内(安全)」を示す。
プラネタリー・バウンダリー(右):オレンジは「不安定な領域を超えてしまっている(高リスク)」、黄色は「不安定な領域(リスク増大)」、緑は「地球の限界の領域内(安全)」を示す。
Yuki Takada/ハフポスト日本版

「殺さないでください」環境活動をするだけで…

生物多様性条約は、人権問題にも深く関わっている。条約の目的にも「生物多様性の保全」だけでなく、「生物多様性の構成要素の持続可能な利用」「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」が明記されている。

これまでタダ同然で消費し続けてきた自然資源をどう持続可能に利用するか、また途上国や先住民族から搾取した資源や利益をどう公平に配分するか。利権が複雑に絡み合う中で、暮らしや命が脅かされるケースも少なくない。

特に東南アジアやアフリカ、南アメリカでは環境活動家が次々に殺されている。COP15に向けて、準備会合や国際会議に参加してきた矢動丸さんは、生物多様性の損失と人権問題が深く関わっていることを実感したという。

「ジュネーブの会合の時には、殺されてしまった活動家たちの写真と名前、どうやって殺されたかを書いた紙を持って会場の外を歩くアクションが行われました。環境を守るために活動をするだけで殺されてしまう人がいるなんて…と衝撃を受けました」

生物多様性条約のジュネーブ会合で、殺されてしまった環境活動家たちの写真と名前などを掲げ、“Stop the killing”と訴えた人々
生物多様性条約のジュネーブ会合で、殺されてしまった環境活動家たちの写真と名前などを掲げ、“Stop the killing”と訴えた人々
矢動丸琴子さん提供

自分たちの命や暮らしの基盤となる生物多様性に待ったなしの「赤信号」が点滅している。ところが公益財団法人旭硝子財団の「生活者の環境危機意識調査2021」によると、「生物多様性が危機的」と答えた日本人はわずか1.9%

認知度の低さにも危機感を覚えるが、それに加えて深刻なのが、生物多様性の損失、それを巡る世界の急速な動きと、自分の生活が繋がって見えている人が日本には少ないことだと矢動丸さんは言う。その危機感は、矢動丸さんが日本の地域を訪れる中でさらに高まっていった。

自分の生活と海洋環境が直結する19歳の漁師は、グレタさんを知らない

CONDでは2021年、地域の若者団体の活動を取材して発信を行う「生物多様性ユースレポーター事業」を実施した。生物多様性の損失を食い止めるためには、それぞれの地域に根差した活動が重要だと考えたからだ。

宮城県の若手漁師の団体を訪れた時、19歳の漁師が「海洋汚染が進むと自分の生活に直接関わるんですが、生物多様性的にはどうなんですか」と尋ねてきた。

漁師の仕事と生物多様性の損失は密接に関わっている。彼にとって死活問題のはずだが、国際動向や国の政策についてほとんど知らなかった。活動家なら誰もが知るグレタ・トゥーンベリさんの名前すら知らないことに衝撃を受けたと矢動丸さんはいう。

「政策提言の場に、本来届かなければならない声が届いていないのではないかと。彼が情報を取っていないから悪いという話ではなく、現場レベルの課題を持っている人と、国際レベルの議論がもっと繋がらないとだめだと強く思いました

現地から生物多様性損失の「切実さ」を日本に伝えたい

国内の現場と国際会議の分断を乗り越え、生物多様性の切実さをもっと多くの人に知ってほしい。そう思った矢動丸さんは、COP15の現地に入り、現場の様子や会議の内容をSNSや動画で発信することにした。

「国際会議の場で起きていることやそこで決まる新しい世界の目標などが、実は自分たちにも身近なことだと気づくきっかけになるような発信にしたいです」

COP15の現地に入った矢動丸さん(右)と豊島亮さん(真ん中)
COP15の現地に入った矢動丸さん(右)と豊島亮さん(真ん中)
矢動丸琴子さん提供

また、今年は例年のCOPではあまり見られなかった、会場外でのマーチも行われる予定だ。矢動丸さんは、「国際会議場で起こることが「議題の交渉」だけではない点をお伝えできればと思っています」と意気込んだ。現地での活動のサポートを求め、クラウドファウンディングも実施中だ。

ハフポスト日本版とCONDのコラボ企画「#世界から日本に言いたい」
ハフポスト日本版とCONDのコラボ企画「#世界から日本に言いたい」
Maya Nakata/ハフポスト日本版

ハフポスト日本版と一般社団法人Change Our Next Decade(COND)は特別コラボ企画「生物多様性条約 COP15 #世界から日本に言いたい」を実施。

生物多様性条約のCOP15の現場に世界中から集まった人々に、「日本に伝えたいこと」をインタビュー。動画や記事などで、集まった人々のリアルな思いをお届けする。

TwitterやInstagramでは「 #世界から日本に言いたい」で発信。お楽しみに!

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