LIFE

「ダンスには、心の栄養となる体験が詰まっている」。10代から脳の病気を抱えてきた女性が子どもたちに教えたいこと。

社交ダンスで数々の世界大会に出場してきた篠田美保さんが、ダンス教室にたくす想い。
キッズラボの様子
キッズラボの様子

子どもたちの習い事として人気のダンスと英語。東京・新宿の「Kiss Kiss キッズ スタディ&ダンスラボ」は、両方の楽しさを同時に体験できる教室だ。指導するのは、社交ダンスで数々の世界大会に出場してきた篠田美保さん。実は10代のころから脳の病気を抱えている篠田さんは「多くの子どもたちに社交ダンスの魅力を伝えることでダンスに恩返しをしたい」と話す。教室を安定して運営するため、クラウドファンディングで支援を募っている。

篠田さんは専門学校に入学した18歳のとき、趣味として社交ダンスをスタート。その面白さに目覚めて、2年後には本格的なプロを目指すようになった。

当時の先生でもあった今の夫にパートナーとして誘われ、21歳でプロとしてデビュー。34歳まで、自分たちが経営するシノダ・スポーツダンスクラブで講師を務めながら、数々の競技大会に出場してきた。

競技選手として活動していた頃は、日本と海外を行ったり来たり。1年のうち、半年は海外へダンス留学に出かけ、本場で社交ダンス、バレエ、英語のレッスンに明け暮れていた。競技生活を引退後は、スクールで後進の指導に当たりながら、社交ダンスの普及活動にも力を入れるようになった。「スタディ&ダンスラボ」もそのひとつだ。

篠田美保さん(右)と夫の篠田龍佑さん
篠田美保さん(右)と夫の篠田龍佑さん

「ダンスをやることで、私自身、人間的にとても成長できました。世界が広がり、自分の考えもきちんと主張するコミュニケーション力がついたのはダンスのおかげです」

■持病の「もやもや病」を乗り越えて

実は篠田さんは、10代の頃から「もやもや病」という脳の血流が悪くなり頭痛を引き起こす病気を抱えている。

「社交ダンスのような激しいスポーツをして大丈夫か、と親には心配されました。でも、自分の人生なのだから。やりたいことはあきらめずに打ち込みたかった。この年まで元気でこれたのも、ダンスをやってきたからだと今では思っていますし、ダンスにとても感謝しています」

だからこそ、多くの子どもたちに社交ダンスの魅力を伝えることでダンスに恩返ししたいと篠田さんは語る。

「ダンスを楽しむことで、子どもたちは思いやりや自分自身を表現して主張する楽しさ、コミュニケーション能力など多くのことを学んでほしい。ダンスには、子どもたちの心の栄養となる体験がつまっています。その経験が、将来、社会を生き抜く力になっていくはず」

ダンス教室インストラクターと生徒さん
ダンス教室インストラクターと生徒さん

■リズムに合わせて体を動かし、英語で自己表現も

「スタディ&ダンスラボ」は東京都ダンススポーツ連盟と新宿区ダンススポーツ連盟 、篠田さんが代表理事を務める一般社団法人スターダンスクラブ・ジャパンの運営で、昨年9月にスタートした。対象 は3歳~小学校低学年で、参加費は1回1000円。新宿区の公共施設やシノダ・スポーツダンスクラブなどを会場に週1回ペースで開催している。

プログラムは簡単な英語を使って行なわれ、子どもたちは英語とダンスの楽しさを両方体験することができる。リズムに合わせて動物の動きを真似したり、ダンスのステップ、 ゲーム 形式で英語の自己紹介をするなど、1時間半の中に、5〜10分程度のプログラムを細かく組み合わせている。

英語とダンスを組み合わせたのは、篠田さん自身が社交ダンスで数々の世界大会に出場してきた経験から、コミュニケーションスキルとしての英語力の重要性を感じているからだ。

「社交ダンスでは、さまざまな国で大会が開かれ、いろいろな国の人たちとコミュニケーションをとります。これからの子どもたちは、ますますグローバルな世界で活躍していくことになるはず。ダンスを英語で学ぶことで、『英語を話せると楽しい!』『 もっと英語ができるようになりたい!』 と子どもたちに感じてもらいたいですね」(篠田さん)

■子どもたちにも社交ダンスの魅力を伝えたい

現在の社交ダンス人口は年齢層が高く、若い世代からの人気が低迷しているという課題がある。スタディ&ラボでは、ワルツのステップを入れるなど、簡単な社交ダンスの要素も取り入れている。教室は、子どもたちの未来に役立つ力を育成するためのものだが、子どもたちが社交ダンスに興味をもつきっかけになってくれたら、とも考えている。

「社交ダンスは年齢に合わせて、ジュニア、ユース、アダルトと分野が分かれています。子どものうちから社交ダンスの楽しさを知ってもらうことで、ジュニアから アダルトまで一貫して学びたいという人材もでてくるはず。この教室がそんな子たちにとって、チャンスになってくれたらうれしいですね」

教室の選手大会出場の様子
教室の選手大会出場の様子

もちろん、社交ダンスだけでなく、ダンス全般の楽しさを知ってもらえるだけでもいい。

「将来、社交ダンスの道に進んでくれたらうれしいですが、別の道に進んだとしても、このスタディ&ダンスラボでやることはきっと役に立つはず。体力がつくし、コミュニケーション力や自己表現力の基礎も養えます」

リズムに乗って体を動かし自分を表現する喜び 、英語でコミュニケーションする楽しさ。そんな体験の積み重ね が子どもたちの未来の 翼になっていく。そんな思いで、スタディ&ダンスラボをもっと大きく育てていきたいという。

「子どもを持つことは病気のせいで難しいと 言われてあきらめました。その代り、ダンスの生徒である子どもたちみんなが、私の子どもだと思っています。その子たちひとりひとりの未来に役立つことをしていきたい」

クラウドファンディングによる支援の受け付けは8月9日まで。詳細はこちら

(工藤千秋)