NEWS
2020年12月21日 15時43分 JST

Z世代「10の行動特性」は、SDGs企業の可能性とインパクトを広げる鍵だ

Z世代は、「権力に従わなければという概念を一人一人が変えることで、社会構造を根本から変える」というコンセプチュアルな社会変革を牽引していく。

Illustrated by Oshi Kuru

Z世代特徴

SDGsの申し子といわれるジェネレーションZ(1990年代後半以降生まれ、以下Z世代)が今年に入り、前にも増して注目されている。2020年1月のダボス会議はその象徴だ。グレタ・トゥーンベリさんはじめ各国の若年社会活動家が登壇、世界経済を牽引するリーダーたちが彼らの意見に重きを置いた。そして、3月以降のパンデミックによるニューノーマル。世界中に広がったその生活様式は、Z世代の価値観と親和性の高いものだった。

【Z世代の行動特性(アジア大学生編)】

  1. セルフケア意識が高い(食事・運動・メンタル)
  2. オンラインでスキルを磨くことに熱心
  3. 起業家に共感するが、リスク回避も徹底する
  4. 自分が没入できる/リラックスする時間を意識的にとる
  5. 多様性を尊重、価値観の押し付けを心から嫌う
  6. 生理の話題をオープンにしたい、フェムテックの採用が早い
  7. 倹約志向で、いらないものを買ってごみになることを嫌う
  8. 権威ある人の言論をうのみにせず、事実の裏取りをする
  9. 人間らしい弱さも見せる正直なリーダーシップに共感する
  10. 旧システム・権力を壊そうとはせず、見方を変える
※2019―2020年 日本・中国・タイ・インドネシア・フィリピン大学生調査をもとに電通作成

世界中でもこれらのトレンドは可視化され、今年だけでなく、将来も続く長期トレンドと見なされるようになった。また政府や企業も、既存の延長線上にはない未来に何を優先すべきか、考え直す必要に迫られている。そのため、これらの変革を先取りしていたZ世代に、世界中から熱い注目が集まっているのだ。

Z世代の行動特性の中でも、これまでの世代との象徴的な違いといえそうなのは、10「旧システム・権力を壊そうとしない」点だ。ソーシャルメディア・ネイティブとして育ったZ世代は、お互いの正義が対立したまま収束しない議論や、きれいごとだけで実行が伴わない理想家を、うんざりするほど見聞きしてきた。

古いものを否定する形で、新たな正しさを主張しても、やがて組織として行き詰まるか、別の新勢力が生まれて滅ぼされていく。その繰り返しになるなら、彼らは旧体制を壊すような無駄な力は使わない。常に焦点は自分の未来に向けているため、旧体制を敵に回すことに関心すらない。 

これまでの社会変革は、既存システムを壊してつくり直すという分かりやすい形をとってきたから、象徴となるリーダーが必要だった。しかしZ世代は、「権力に従わなければという概念を一人一人が変えることで、社会構造を根本から変える」というコンセプチュアルな社会変革を牽引していく。

そのため、Z世代は年長者の発言を無視せず、「そんな考え方もあるんですね」と好奇心と歩み寄りを見せる。しかし歩み寄るからといって、指導してほしいわけではない。「あなたの時代とは違う、私に合ったやり方がある」と心から思っているから。

彼らの行動は多面的で、一見すると矛盾も多く含まれている。「弱さを見せる強さ」「柔軟だが頑固」「マイペースに他者も尊重する」「主張するが押し付けない」「多国籍を受け入れるが愛国心も強い」など。そして、その矛盾を許容する姿勢は、正義を掲げる議論や武力行使とは異なる、人間らしい対話につながっていく。多様性を受け入れ、相反する意見や行動をそのまま受け止め、柔軟にバランスをとるZ世代の世代感覚は、利害関係を超えた多様性と協力が必須となるSDGsの推進力となっていくだろう。

ドライな日本のZ世代

日本のZ世代はSDGsの認知は高く知識もあり(図1)、若き社会活動家や起業家も目立ってきている。しかし、Z世代が他世代に比べて政治や環境問題への熱量が特別に高いわけではなく、「毎日盛ってインスタ投稿」(図2)や「自分たちが動けば世界は変わる」(図3)といった熱量も他国に比べて低めだ。インフルエンサーをまねて、盛った自分を褒められてもそれは「ありのままの自分」ではない、という成熟ともいえる。若年人口が少なく意思決定のシステムが見えにくい日本では、政治や社会問題に関する意見表明はバッシングされるリスクが高い割に、成功確率が低いので、リスク回避志向が強くなるのかもしれない。

電通
電通
2020年12月 電通5か国ソーシャルグッド意識調査 N=2500より:各地域の15~24歳のソーシャルメディア利用者を抜粋
電通
2020年12月 電通5か国ソーシャルグッド意識調査 N=2500より:各地域の15~24歳のソーシャルメディア利用者を抜粋)

もちろん#MeTooや女性スポーツ選手の告発、彼女たちを支援するハッシュタグなどは日本でも賛同された。だが、今のところアメリカのように、人種差別に反対する態度表明や支援団体への寄付を行わない企業に対し、商品をボイコットする、デモに参加するような行動にまでは、日本のZ世代の多くは至っていない。

では、日本ではSDGsビジネスをZ世代が牽引しないのだろうか?サステナブル消費をZ世代のトレンドとして動かせないというとそうではなさそうだ

電通
エコ・有機・フェアトレード商品の購入経験電通定点パネル調査より(2014年3月~インターネット調査 各年:20代=600ss前後/10代=300ss前後)

日本のZ世代は、自分では政治や環境について押し付けがましい発信はしないけれど、同世代の社会活動に関する発信は支援する。そしてもちろん、Z世代の社会活動家の発信も、共鳴できる人に呼び掛ける形で、押し付けがましくならないよう配慮されている。

また、商品購入の際にストーリーがあるもの、ユーザーと作り手の両方のエピソードに共感できるものを選び、セルフケアを大事にすると同時に、地球環境に与える負荷や労働環境にも思いをはせる。Z世代は、消費トレンドの先頭を走っている。

Z世代視点が教えてくれること

人口が少なく、かつ経済力も高くないZ世代だけに、そこで流行するものは見えにくい。しかし例えば、2027年に6兆円規模といわれているフェムテック市場(Emergen Research/2020年)。昨今のステイホームで注目が高まった市場のひとつで、Z世代が消費を牽引する分野だ。女性10~20代は年代的に生理トラブルが多く、外出機会が多い上に、自身で休みをコントロールしにくい学業・スキル取得の時期にも当たり、その悩みは切実である。 

生理用品の定期購入では、女性向けだからといってピンク色や女性の身体をかたどったシンボルが描かれたものではなく、生活空間になじむ色合いが受け入れられ始めている。日本においてもモノトーンや茶色の包装が出始め、無印良品の生理ナプキン販売も始まった。

そして、購入時に特別につけられる外袋はごみになるだけでなく、自然の摂理なのに隠すという習慣自体が不自然だという議論も出ている。また、ステイホームでごみの量を気にする人やリサイクルできる素材かを気にする人が増え、ごみを減らすため「布ナプキン」や「吸水ショーツ」に注目が集まった。さらに派生商品として、肌がかぶれやすい人のためのオーガニックなフェミニンケア用品も注目されている。

これらのムーブメントは、先に見たZ世代特性の6「生理の話題をオープンにしたい」、5「多様性の尊重」、1「セルフケア意識が高い」、7「ごみになる買い物を嫌う」など複数の価値観とぴったり合っている。

またInstagramから知ってそのままD2Cサイトで購買することへ抵抗感が薄いため、20代女性は他の年代よりも、これらのフェムテック商品の利用が早い。吸水ショーツは日本、台湾、アメリカ、韓国などさまざまな国・地域で女性起業家が開発しているが、生産国の違いは注目されず、「それをつくった創業者の開発ストーリーと機能性・デザイン・ラインアップ」に力点が置かれる。「自分が買いたいと思ったときにレビューが少なく困ったので、誰かが買うときに役に立てたらいいなと思って書きました」という日本人女性のnoteでは、予算以上の一枚を買うために慎重に吟味する姿がつづられていく。ランキング形式ではないのは、何を重視するかでおすすめの商品が変わるからだ。

このようなnote記事は、日記的なブログとも、ショッピングサイトの★のレーティングと短文レビューとも異なり、ストーリーテリング型のウェブ記事に近い。Instagramも、日本ではもはや「映え」ではなく、実用的な情報と長文レビューが多く掲載されるようになった。Amazon payなど決済手段がシームレスになっているD2Cサイトも多く、どの国から、どのプラットフォームから来ても、ストレスなく買い物ができるつくりになっている。

電通には「GIRL’S GOOD LAB」というプランニングチームがある。チームメンバーには男性もいて、年代も幅広い。10年前は電通ギャルラボという名前で、事業を興したり消費をけん引する若い女性をあえてギャルと呼んでいた。今そのチームが「GIRL’S GOOD」と銘打ち、チームの存在意義となる切り口を消費・ビジネスではなく、ソーシャルグッドへと変えている。「電通」をロゴマークに入れないことも象徴的で、ミレニアル世代からZ世代をターゲットに、日本と海外、ビジネスと社会貢献の枠組みを超えた活動を推進している。

girls good lab
https://www.girlsgoodlab.com/

「GIRL’S GOOD LAB」は日々変わっていく女子の気持ちや価値観をとらえ、

時代に合ったソリューションを提案する女子専門プランニングチーム。

日本でも、女性や若年を幹部に登用していない企業や団体に対し、ソーシャルメディアで問題提起されることが増えてきた。未来への変革をテーマにする企業・団体の幹部が50~60代の男性一色であることは非難の的となり、スローガンだけではなく実態が伴っているかチェックされるようになった。 

また日本では、芸能人やスポーツ選手が個人として政治的な発言をすることは、影響力が大きいという理由で今もバッシングされる傾向にある。しかし、先にも述べた通り、有名人の発言だからといってうのみにしないZ世代からすれば、弱者が被害を受ける内容でない限り、著名人が正直に自分の意見を述べること自体はネガティブではない。

これまで日本の教育や職場では、反対意見や批判的思考がよしとされず、従順さが求められたため、“疑う力”は長く培われなかったスキルだが(図5)、ソーシャルメディア・ネイティブのZ世代は、他世代に比べて、学生時代からさまざまなものの見方があることを価値観に取り入れることができているのだ。

電通
GENZ

″指導役の発言が、若手から常に疑われる”ことに慣れない日本の中高年は多いだろうが、自分の正しさに従わせる時代ではない。しかし、遠慮して、あるいは距離をとって、何も言わないことが良いわけでもない。それでは偏見が存在していることにも気づけず、女性や若年層抜きの意思決定に疑いを持たないままに、彼らへの支援を堂々と表明する、という“喜劇”が起き続けてしまう。

多様性は、互いの違いが生まれる背景を理解することで、これまで平行線で見つけることができなかった第三の道、新しい解決策に気づけるチャンスだ。もし他者とは異なる点に目をつけてビジネスチャンスを広げたい、あるいは他がやっていない切り口で社会課題を解決したいのであれば、まずは自身の持つ偏見に気づかなくてはならない。ビジネスを自己批判的・客観的に見て、Z世代に何かを教えようとするのでもなく、Z世代の世界を分断するのでもなく、Z世代視点から気づけることを、経験を生かしてビジネスに落とし込むことが、SDGsビジネスの可能性とインパクトを広げるカギになるだろう。