裏アカを使って自分を誹謗中傷。 子どもの「デジタル自傷」について知っておくべきこと

自分の体を傷つけるのと同様に、デジタル自傷行為も助けを求める「叫び」であることが多いという。
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2013年、イギリスで14歳のハンナ・スミスさんが自殺した。

彼女の父親はその後、スミスさんがネット上でいじめを受けていたことをメディアに語った。

スミスさんの家族に起きた悲劇は、ネット上のいじめ行為などを取り締まるため、ソーシャルメディアの規制強化を求める声を高めた。

しかしその数日後、意外な事実が発覚した。

スミスさんがいじめを受けていたオンライン・プラットフォームが、問題のメッセージの多くがスミスさん自身のIPアドレスから送信されており、彼女自身がそれらを送信したと示唆するコメントを発表したのだ。

自分自身を傷つける内容をネット上で匿名で投稿するなどの行為は、研究者や心理学者の間で「デジタル自傷行為」と呼ばれており、近年、問題意識が高まっている。

7月には、デジタル自傷行為を行う10代の若者と、希死念慮を抱いたり自殺を図ったりすることの間に関係性があるという研究結果が発表された。デジタル自傷行為をおこなった10代の若者は、希死念慮を抱く確率が5〜7倍、自殺を図る確率が9〜15倍高かったという。

ここに必ずしも因果関係があるわけではない。デジタル自傷行為によって10代の若者が希死念慮を抱くのか、希死念慮が自傷行為を引き起こすのかはまだ不明だ。

この研究の主執筆者で、ウィスコンシン大学オークレア校で刑事司法部教授をしているジャスティン・パッチン氏はハフポストUS版に、「どちらが先かはまだわかっていません。ただ、関連性があるのは確かです」と述べた。


デジタル自傷行為とは?

スミスさんの事件にショックを受けたパッチン氏は事件以降、同僚と共に10代の若者のデジタル自傷行為に関する研究をいくつか行っている。

「デジタル自傷行為とは、個人が匿名のオンラインアカウントを作成し、それを使って自分を傷つけるメッセージや脅迫をみんなに見えるように送ることです。ヘイトメッセージや脅迫といったものが一般的で、より極端で珍しいタイプのネットいじめです」とパッチン氏は説明する。

一般的にネットいじめと呼ばれるものとの違いは、いじめの加害者と被害者が同一人物という点だ。

2017年にパッチン氏が10代の若者5500人以上を対象に実施した調査では、約6%が自身に対してネットで悪質な投稿をしたと報告している。男性は7.1%で女性の5.3%よりも高く、過去にいじめやネットいじめを受けたことのある人や、LGBTQを自認する人の間でも確率は高かった。


動機は?

自分の体を傷つけるのと同様に、デジタル自傷行為も助けを求める「叫び」であることが多いという。

小児科医でメンタルヘルス支援もおこなっているシャイリ・ターナー医師は、「自傷行為は、より深く重大な精神的な問題に関連する感情を管理するための対処方法になりうる」と述べる。

「デジタル自傷行為は、悩んでいても助けを直接求めることのできない10代の若者にとって、注目や同情を集める方法となっているのです」

パッチン氏は、デジタル自傷行為の経験のあった研究対象者の中には、自尊心の低さや自己嫌悪の問題を訴えている人もいたという。また、「面白いから」や「注目を浴びるため」にやって人もいたという。

中には、悪質な書き込みをして、それを友人が否定して守ってくれるかを試すケースもあるという。


親が知っておくべきこと

いじめや自傷行為は、10代の若者の間でますます問題となってきている。テキストメッセージでメンタルサポートを行うCrisis Text Lineでは、2020年と比べ、2021年にはいじめに関する会話が20%増え、自傷行為に関する会話は10%増えたという。

残念ながら、親は自分の子どもがデジタル自傷行為をしていることに気づかないことが多い。

パッチン氏によると、心配した親が警察などに介入を求めて、初めて悪質コメントは自分の子どもが自身宛に書いていたと明らかになったケースも複数あったという。

10代の若者のオンラインでの活動を全て監視することは不可能だ。また、子どもたちの方がデジタル知識が豊富で、親がセキュリティを設定をしても回避する術を知っていることも多い。

「親としてできる最善策は、いつでも頼れる存在であること。そうすれば、オンラインでもオフラインでも、何か傷つくようなことがあれば、安心して親に助けを求めることができます」とパッチン氏は話す。

児童心理学者のシンディ・グラハム氏は、自傷行為を「若者が注目されたくてやっている」と解釈することに警鐘を鳴らす。

「相手をはねつけ否定するような反応は適切ではありません。それにより、自傷行為を悪化させたりするなど、助けを求める『叫び』をさらに強める可能性があるからです」

子どものメンタルヘルスの問題を批判せず、いつでも話し合えるという姿勢を親が持つことで、子どもたちは自分の苦悩について話すことができるようになるという。また、子どもが友達の危険を心配している時は、子ども同士で話をするのではなく、信頼できる大人に話すよう勧めるべきだという。

子どもたちはネットを使い始めると、いつネットいじめや自傷行為を目にするかわからないため、こういった会話はできるだけ早くしておくべきだとグラハム氏は話す。

また、子どもの友人の親と関係を築いておくことで、こうした問題をいち早く察知する助けになるという。



注意すべき兆候

自傷行為を考えている、あるいは行なっているという兆候は、うつ病の兆候と似ている。

実際、パッチン氏のチームは研究で、あらゆる種類のいじめはデジタル自傷行為、薬物使用、うつ症状、自傷行為(身体的)と関連していることを発見したという。

ターナー氏は、親は子どもの変化に注意するよう助言する。自傷行為や薬物・アルコール使用などの行動に加え、活動への興味の喪失、友人関係の変化、友人から引きこもる、睡眠の増加・減少、食欲の増加・減少、学校の成績や、行事への参加の変化に気づくかもしれない。

また彼女は、オープンな会話と子どもを否定しない事の重要性を強調した。
「最も重要なことは、子どものことをよく知り、できるだけ早い段階で気分の落ち込みやメンタルヘルスについて、親が話し合いたいと考えていることを伝えることです」

また、子どもが自傷行為を考えているかについて聞くかについては、「迷わず聞いてください」とターナー氏は強調した。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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