アートとカルチャー
2019年07月18日 11時56分 JST | 更新 2019年07月18日 11時58分 JST

セックスレス、どうすればいい? 男女に愛されるポルノを手がけるエリカ・ラスト監督と語る

普段はなかなかオープンに話せないセックスや性のこと、いろいろ聞いてみた。

Eriko Kaji

最近、女性向けの性をめぐる商品やニュースは増えてきているが、日本のAVは男性向け、女性向けと分かれており、一緒に楽しめるコンテンツはまだまだ少ないのが現状だ。

一方、エリカ・ラスト監督が手掛けるポルノ作品は、男性の視聴者が6割。自然光の降り注ぐスタジオで撮影された美しくおしゃれなポルノ作品は、女性にも深く響いている。

ラスト監督は、スウェーデン出身で現在はスペイン・バルセロナで活躍。美しい作品でポルノ界に革命を起こす彼女には、世界中から「ありがとう」とお礼のメールが届くそうだ。

日本=セックスレスの国としても海外でしばしば報じられるが、何が原因なんだろう? 監督のポルノはなぜみんなに愛されるの? 初来日したラスト監督に、普段はなかなかオープンに話せないセックスや性のこと、いろいろ聞いてみた。

Eriko Kaji

――日本は女性向けAVが人気ですが、男女がともに楽しめる作品はまだまだ少ないです。監督の作品は、男女を問わず愛されていますね。ご自身はなぜだと思いますか?

私にも詳しいことはわかりませんが、男性向けのAVは、昔ながらの手法やアイデアで撮られていると思います。セクシュアリティは性別を超えて、一人ひとりに違います。私の作品では(男女で分けるのではなく)ヒューマン・セクシュアリティを大事にして撮っています。

人生のライフステージによって、性に対する捉えかたや志向も変わってきます。例えば映画や本やポルノを見て、自分の考えかたも変わることもあります。とても流動的なものなのです。

――監督の元には、たくさんの感想メールが届くそうですね。

世界中からたくさん届きます。特に男性からのメールが多いですね。「ありがとう、エリカ。あなたの作品を見て、今まで一番、最高の夜を過ごすことができました」とか(笑)。 

「これまでも妻とポルノを見たことはあったけど、自分が好きなものを見ていたから、彼女は気に入ってくれなかった。でもエリカの作品は、男の人が惹かれるように、彼女も楽しむことができた」という人もいます。 

Eriko Kaji

――なぜ、あなたの作品は、女性も楽しんで見られるのでしょう?

私の作品には、男性と女性、お互いに対するリスペクトが見えるから。

女性が、これまでのポルノを嫌っていた理由は、それを観たときに女性がリスペクトされているように感じられなかったから。誰かの満足のための(女性が)自己を犠牲にしていたり、男性を喜ばせるために撮られていたり、女性の満足のために作られていなかったからだと思います。

そもそもキャラクター性もちゃんと描かれていませんよね。ただの美しいオブジェクトになっていて、ストーリー性もないし、男性の妄想や理想像をかたちにしたものになっていました。

 

Eriko Kaji

――日本は“セックスレス”の国でもあります。調査によると、既婚者の47.2 %、約半数がセックスレスだそうです。それを聞いて、監督はどう思いますか?

セックスは私たちにとって、とても大切なこと。ただ、セックスレスは私が住んでいる国でも難しい問題だと思います。そもそも一般的に、セックスについての恥ずかしさや恐れとともに育っているから。

性教育や女性の人権が尊重されているような国だとしても、バカバカしい話題とされることもあります。笑われたり、他の人と違うといわれたりすることもあります。 

人に話せない部分はそれぞれ持っているけれど、他の人とどう共有したらいいかわからない。だからこそ、セックスについての考えをシェアすることは、大きな意味があります。だから私は(個人の体験やアイデア、妄想をビジュアル化してシェアする)『XConfession』というシリーズをやっています。

他の人のセックスにおける告白を覗くことができる。個々がつながる力強いコミュニティになります。カップルで私の作品を見たり、お互いに何が好きで何が嫌いかを話し合ったりできます。

――作品では、自然光が入るおしゃれな空間で、二人が対等にコミュニケーションをしながらセックスシーンが描かれます。おしゃれな映画のようで、友人におすすめしたくなるクオリティですよね。

まさにそれが私の目的です。他にも、アート的な要素やダンスや音楽を取り入れたりもしています。ポルノに文化的価値を与えたいのです。

映画のプロフェッショナルを揃えています。カメラ、ライター、写真家など主要ポジションは女性ですね。応募してくる人もいれば、私が声をかけることもあります。映画学校を卒業し、作品を作ったことがある人たちと一緒に働いています。

そのほか、ファッションデザイナーやスタイリスト、音楽PVや広告など、ちゃんと専門分野のプロフェッショナルな経験がある人を採用しています。そういう人たちが、作品のクリエイティビティを生み出していく。映画制作のように作っていくのです。

私たちはポルノメーカーではありません。フィルムメーカーがポルノを作っているんです。

 ――俳優たちの自然体の演技も印象的です。彼らとは、どうコミュニケーションをとっているのでしょうか。

ほとんどの役者は、私の作品を見て向こうから応募してきます。信頼している劇団員のような存在で、タレントマネージャーもいます。

長く知っているからこそ、今まで演じた人同士の相性がわかります。男優女優に限らず、作品にとって適切な役者が演じます。だからこそ、ナチュラルにお互いがセックスに没入する様子を撮ることができるんです。

――作品は、シンプルな英語のみで、会話によるコミュニケーションが多くないから、英語圏ではない人も含めて、グローバルで見られる作品になっているような…。意図しています?

イエスでもあり、ノーでもあります。シンプルな英語で、そこまで会話しないのは、予算的が限られているからでもあります。1日で撮らないといけないので、合理的に進めています。

二つ目の理由は、俳優たちもきちんと役者としてのトレーニングを積んでいない人たちもいます。会話ではなくフィジカルな動きで伝えるようにしています。気持ちがいいことは、言葉がなくてもわかります。感情は、言葉がなくても読み取ることができるから。

本当はもう少しセックス中にもっとコミュニケーションがあってもいいなと思っています。でもやっぱり難しい。俳優同士が同じ言葉を話さない場合もありますから(笑)。

――お互いに信頼できる撮影現場をつくるために、どんな工夫をしていますか?

どこの国の人で、セクシュアリティは何か、一人ひとりチェックしていきます。

撮影前から配役について話したり、どんなものを撮りたいか話したり、配役のためにお互いに不安があるんだったら、必ず話す機会を設けたり、オンラインで会話したりします。

何をしたくないか何が嫌いか、その人の境界線も聞いて、クリアにしています。ヘルステストもリストにして実施していますね。

もちろんセクシュアルワークですから、現場でうまくいかないこともあります。そのときは私自身が代替案を出します。強要はしません。楽しみのためのセクシュアルワークですから、そういうことは絶対にしません。

――例えば、もし男性が本番でうまくいかなかった場合は?

そういう状況下でおもちゃを使ったりして、セックスのシーンを撮ります。ポルノやセックスにおいては男性器が重要だと思いがちですが、私たちの作品にはそれが必要というわけではありません。

Eriko Kaji

――セックスについて、もっとオープンに語れるようになるには、どんな変化が必要でしょう? AV作品や業界について思うことは?

いまメインストリームのAV作品は、“ファストフード”のようなものです。女性だけじゃなくて男性もそう思ってるはず。心からの満足というよりは、不安な気持ちを解消するために見ている。ストレス溜まったから食べちゃうように、発散のはけ口としてポルノを見ている人も多いと思います。

本来のポルノが、そもそも価値を持っていないから、そういう風に扱われてしまうんです。お金払わなくても見られるものは、粗悪な環境で作品が作られています。消費者が良いものにお金を払う行動が生まれれば、作品はもっと良くなると思います。

Eriko kaji

やっぱり、ポルノ業界を底上げしていくためには、消費者も責任感を持たなくてはいけない。その責任感というのは、その作品がどこで誰によって作られたか、きちんと明記されていなくてはならない。ちゃんと同意のもとに作られたポルノか確認することが大事です。

誰が作っているかわからないものが氾濫しています。作っている人も誇りを持っていないから匿名で出回っている。私は自分の作品に誇りを持っています。だから顔も名前も出して、ここにいるんです。

いま私の作品が話題を呼んでいるように、ポルノをめぐる変化は世界中で起こっています。テレビや映画だけでなく、ポルノにおいても女性が声を上げる動きが生まれています。

――日本のジェンダーギャップ指数が110位。男女の不平等は根深いです。

ビジネスだけでなく、いろんな側面で女性を助けていくことは大事だと思います。幼児期の教育から変えていくことも必要です。学校の先生ですら性教育することができないから、そのくらいのことをしないと。 

――そんな日本の女性たちにエールを。

新しい時代が始まって、男性は女性をリスペクトしていくことが大切です。

女性自身も、自分で自信を持たなきゃいけないし、信じないといけない。自分の体やセクシュアリティについて自分で決める権利がある。

いつも女の子が誰かを喜ばせる必要はないのです。

 

Eriko Kaji

エリカ・ラスト
1977年スウェーデン生まれ。映画監督、母親、作家、ブロガー。政治学、フェミニズム、セクシュアリティを学んだ後、スペイン・バルセロナに移住。女性のフィルムメーカーが手がけるポルノ作品が大きな反響を呼び、これまでのポルノ業界に新たな旋風を生み出している。ユーザーが投稿した性のエピソードを監督たちが映像化する「XConfessions」シリーズも企画。 https://xconfessions.com/
https://lustcinema.com/

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