両腕のない野球ファンが足で始球式「手がなくても、腕がなくても、問題ない」

生まれつき両腕のないトム・ウィリスさんにとって、メジャーリーグの球場が目標を叶える場所になっている
ニューヨーク・ヤンキース対トロント・ブルージェイズの試合で、始球式に臨むトム・ウィリスさん(2023年9月19日)
ニューヨーク・ヤンキース対トロント・ブルージェイズの試合で、始球式に臨むトム・ウィリスさん(2023年9月19日)
Sarah Stier via Getty Images

野球殿堂入りした名ピッチャーも、トム・ウィリスさんのような投球は難しいかもしれない。

アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴで暮らす、元テレビプロデューサーでモチベーションスピーカーのウィリスさんは、2008年から各地のメジャーリーグ球場で始球式を続けている。

ウィリスさんは生まれつき両腕がなく、書く時や車の運転は足を使っている。それはピッチングも同様で、始球式では右足で投球する。

投球はスピードよりコントロール重視。これまでの始球式のうち、12回はホームベース上を通過するストライクを投げている。

「スピードガンでは最高31マイル(約50キロ)を記録したことがありますが、速さではなく、ホームベースに投げることを目指しています」と9月19日にニューヨークのヤンキースタジアムで行われた、ヤンキース対トロント・ブルージェイズ戦の始球式前にハフポストUS版に語った。

Sarah Stier via Getty Images

2008年から28の球場で始球式をしてきたウィリスさんにとって、19日のヤンキースタジアムは29番目のスタジアムになった。

これまで多くの球場で投げてきたものの、ヤンキースタジアムは特別な場所だったという。

「ここは野球ファンにとっては聖地で、豊かな歴史があります」「バウンドしたので最高の投球とはなりませんでしが、最高の経験の一つになりました」

ウィリスさんの目標は、30あるすべてのメジャーリーグ球場で始球式をすることだ。

29番目のヤンキースタジアムで投げ終えた今、残るはカリフォルニア・アナハイムのエンゼルスタジアムだけになった。

子どもの頃から野球ファンだったというウィリスさんだが、ただこのスポーツが好きで始球式をしているわけではない。

これはウィリスさんの立ち上げた「ピッチ・フォー・アウェアネス(知ってもらうための投球)」キャンペーンの一環で、始球式を通して、障がい者の障がいではなく能力に光をあて、すべての人が日常生活を送れる社会にするために何ができるのかを考えるきっかけ作りに取り組んでいる

そのウィリスさんのモットーは「手がなくても、腕がなくても、問題ない」だという。

ヤンキースタジアムでのウィリスさんの始球式は多くのメディアに報じられ注目を集めた。メジャーリーグは間も無く2023年シーズンを終えるが、来シーズンにもエンゼルスタジアムでの投球が実現して、30球場制覇の夢が叶うことを願う。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。

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