アメリカ・ミズーリ州の控訴裁判所は6月7日、車中セックスでHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染した女性に520万ドル(約7億円)を支払うよう命じたジャクソン郡巡回裁判所の決定を支持した。
支払いを命じられたのはアメリカで2番目に大きな自動車保険会社「ガイコ」だ。女性がセックスをした相手の男性は、同社の自動車保険に加入していた。
女性はこの男性の車でセックスをした後にHPVに感染したと主張。被った損害に対し、保険金の支払いを求めていた。
訴訟の背景は?
裁判文書によると、女性M.O.氏は2017年、当時付き合っていた男性M.B.氏の車でセックスをし、翌年HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が判明した。
HPVは子宮頸がんの原因とされるウイルスで、性交渉時に感染する。
M.O.氏は、M.B.氏は自身のHPVの感染を知っていたのに事前に伝えなかっただけではなく、感染防止策も取らなかったと主張。
2021年にガイコに対し、M.B.氏に対して法的措置をとると伝えた。そして「車中での感染なので保険会社は損傷や損失をカバーする必要がある」として、100万ドル(約1億3300万円)での示談を持ちかけた。
AP通信によると、ガイコは感染の原因となった性行為は一般的な車の利用方法ではないと反論し、示談を拒否した。
その後、この問題は仲裁裁定での解決に持ち込まれた。裁定で仲裁人は、車中での性行為が感染の直接の原因だと認め、ガイコに対して520万ドルの支払いを命じた。
ガイコは連邦裁判所で争う姿勢
ガイコはこの仲裁裁定を認めたジャクソン郡巡回裁判所の決定を不服として控訴。M.O.氏とM.B.氏が仲裁裁定を始めたことを知らなかったと主張し、自身の利益を守る権利が侵害されたと訴えた。
しかしCNNによると、ミズーリ州控訴裁判所は「ガイコが訴訟に参加した時には、仲裁人によって損害賠償は決定しており、ガイコにはそれを覆す権利がない」と結論づけて、520万ドルの支払いを支持した。
また、裁判所は「ガイコは保険契約者を弁護することで、自社の利益を守る機会があった」とも述べている。
今回の決定で、520万ドルの支払いが決定したわけではない。
ガイコはミズーリ州の連邦裁判所でもこの問題を争っており、HPVの感染は自動車保険でカバーされるものではないと主張している。
ガイコはCBSに、「この問題が保険でカバーされるかどうかは、ミズーリ州の連邦裁判所で決定されることになるだろう」と述べている。