想像と違う...。女子生徒が学校規模でSTEM企業を訪問。立ちはだかる“あの科目”とは?

都内の中学・高校で導入された、女子生徒のSTEM進路選択を支援する体験・交流プログラム。生徒が「理系」や「英語」という言葉に感じたこととは。

ジェンダーギャップの是正において、多くの課題を残している日本。

教育分野においては、理系、特にSTEM(科学、技術、工学、数学)を選択する女子の比率が低いことが課題となっている。

女子生徒のSTEM進路選択を支援する公益財団法人「山田進太郎D&I財団」は2024年6月、体験・交流プログラム「Girls Meet STEM」をスタート。企業や大学と連携した、オフィスや研究室へのツアーを通じて、将来の進路やキャリアの選択肢を広げる機会を提供している。

富士見丘中学校・高校(東京都)は昨年、同プロジェクトを初めて学校単位で導入。「Girls Meet STEM for School」の一環として実施された本プロジェクトでは、体験ツアーに加え、事前学習やプレゼンテーション形式での発表会を含むカリキュラムを設計し、生徒に学習の機会を提供した。

2月下旬に開催された「Girls Meet STEM for School」成果報告会では、同財団や同校の代表者が登壇し、カリキュラムの成果について説明。さらに、実際にカリキュラムを体験した生徒が登壇し、そこで得た学びや感想を共有した。

理系成績が良いのに、理系を選ぶ女子は少ない?

山田進太郎D&I財団 最高執行責任者の石倉秀明さん
山田進太郎D&I財団 最高執行責任者の石倉秀明さん
ハフポスト日本版

2021年7月に設立された山田進太郎D&I財団は、誰もが自身の能力を最大限に発揮できる社会の実現に向けて、2035年までに大学入学者におけるSTEM学部の女性比率を28%(2021年時点でのOECDの世界平均)まで引き上げることを目標に掲げている。

同財団最高執行責任者の石倉秀明さんは、日本の女子生徒の理科・数学の学力がOECDの38加盟国で1位を記録しているのに対し、STEM分野で活躍する日本人女性がOECDで最下位(約18%)にあると指摘。

背景にはロールモデルの不在や適性に関するジェンダーのアンコンシャスバイアスがある。それを踏まえ、「自身の特技を活かせる分野に進んでいない女性が多い。この実態は個人のキャリアはもちろん、社会にも大きな影響を与えています」と、本領域におけるジェンダー格差の深刻さを強調した。

一方で、同分野における女性比率は緩やかではあるものの増加傾向にある。2021年時点で17.9%だったのに対し、2025年では22.4%まで増加しているという。

同財団では現在、Girls Meet STEMと、設立当初から実施している奨学金助成事業の2つのアプローチで、STEM分野への進学をさらに後押ししている。

奨学金事業は文理選択前の高校1年生を対象(毎年約500人に10万円を給付)としており、2025年には約5000人を超える応募があった。

財団が実施した調査によると、給付を受けた生徒が大学の学部選択においてSTEM分野を選ぶ割合は、給付を受けていない生徒よりも26.6ポイント高い結果になったという。石倉さんは「10万円は決して学費を十分に賄える金額ではありませんが、応援してくれる環境があると知ることで、実際にSTEM分野を選択する背中を押せているようです」と分析する。

コロナ禍以前のノウハウを生かした、新たな職場体験の形

Girls Meet STEM
Girls Meet STEM
山田進太郎D&I財団

続いて、同校教員の田中裕樹さんが登壇。同校におけるGirls Meet STEM for Schoolの実績について詳細に紹介した。

従来のGirls Meet STEM for Schoolでは、STEM分野で活躍する女性などが学校で出張授業をする内容が一般的だった。一方で同校は企業訪問を主軸としたカリキュラムに踏み切った。

田中さんはその背景について「理系に特化した学校を目指しているわけではありませんが、女子生徒が当たり前にSTEMという選択肢を持つ時代を見越し、その入り口の1つとして実施を決めました」と説明。

また、コロナ禍を機に地域での職業体験の実施が難しくなったこともあり、生徒にとって良い学びの体験になると仮定したという。

プロジェクトへの参画企業は、オイシックス・ラ・大地、メルカリ、日本アイ・ビー・エム、サイバーエージェントの4社。プロジェクトの第一歩である事前学習は5月に実施された。学校側から、すでに参画の目処がついていた日本アイ・ビー・エムに、財団を通じて学習内容などを相談したという。

田中さんは当時について、「英語を基本として構築された内容で学習用資料の読解の難易度が高いことや、学習にあたって保護者の承認が必要なことなど、丁寧に進めていきつつ、そこから課題を抽出するというプロセスでした」と振り返る。その上で、「従来培ってきた職業体験のノウハウと掛け合わせて、手探りでやってきたというのが正直なところです」と明かした。

課題の抽出を通し、内容をワークシート学習に落とし込むといったプロセスを経て、9月には生徒が実際に企業を訪問した。

田中さんは「企業の皆さまが生徒の関心を惹くような内容を丁寧に準備してくださいました」と振り返った。

続けて「生徒からの『利潤を追求するための組織である企業が、社会貢献と事業を両立することはできるのですか?』という素朴な疑問などにも丁寧にご回答いただき、またマーケティングシステムや経済の仕組みなどに関して、生徒にとって新鮮な学びの機会をいただきました」と説明した。

企業訪問を終えた10月には、参加生徒が全員参加するグループプレゼンテーション形式での成果発表会を開催。予選会で選ばれたグループが学年全体での発表会に登壇し、成果を発表した。審査員には本間勇人さん(本間教育研究所 代表)と財団の代表者を迎え、今後、生徒自身が継続的な学びに活かせるフィードバックなども送られたという。

やっぱり必要だった、あの科目

ハフポスト日本版

最後に、2025年度のカリキュラムを履修した生徒4人が登壇。それぞれの体験や印象的なエピソードについて語った。

企業訪問前のSTEM分野の企業に関するイメージについて聞かれると、生徒たちは「難しくて専門的」や「黙々とパソコン作業」といった“とっつきづらい”イメージを多く持っていたといい、訪問前は「不安と期待が入り混じった気持ち」だったと明かした。

しかし、実際に訪問してみると「一口に理系と言っても、マーケティングや商品開発、生産者の方とのやりとりなど、いろいろな仕事があり、柔らかい雰囲気で楽しかった」「個人よりもチームでの作業が多く、社員の皆さんのフラットな雰囲気も相まって『自分でも挑戦できるかも』と思えた」など、想像とは異なる発見が数多くあったようだ。

特に4人の感想の中で共通していたキーワードが「英語」だ。企業で働く社員やインターンの女性との交流を通じて「この仕事においては『そもそも英語ができないと必要な書類が読めない』ということが多々ある」と教わったという生徒は、「やっぱり英語は何をするにも大切なんだなと感じました」とコメント。別の企業を訪問した生徒からも「理系科目だけではなく、文系・理系などは関係なくいろいろなスキル、特に英語が必要なんだなと知ることができました」という声が寄せられた。

また、実際にSTEM分野で働く女性たちから、学生時代の経験や進路選択のアドバイス、就活や転職に関する情報などを聞いたことで「理系キャリアのイメージがつきやすくなった」という声も4人全員に共通していた。さらに、訪問先で出会った女性の中には、学生時代まで文系のキャリアを考えていた人もいたといい、「自分も一度、理系のキャリアを視野に入れてみよう」と考えるきっかけを得た生徒もいた。

富士見丘中学校・高校では今後も、山田進太郎D&I財団を通じて企業とコミュニケーションを重ね、さらにカリキュラム内容を調整・拡充していくという。

UPDATE(2026年3月8日午後0時36分)

記事を一部修正しました。

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