地球からミツバチが消えたら、コーヒーも飲めなくなるかもしれない。「生物多様性」のためにビジネスは何ができる?【ハフライブ】

2022年、ビジネスのキーワードになるであろう生物多様性。2週連続で配信する「ハフライブ」で学び、考えます。
パームオイルの原料となるアブラヤシを栽培するために伐採された泥炭林。パームオイルは、ポテトチップスやマーガリンなどの加工食品、洗剤や化粧品など身近な製品に使われるほか、再生可能エネルギーの一つ「バイオマス燃料」としても使用されている=2013年11月、インドネシア・スマトラ島
パームオイルの原料となるアブラヤシを栽培するために伐採された泥炭林。パームオイルは、ポテトチップスやマーガリンなどの加工食品、洗剤や化粧品など身近な製品に使われるほか、再生可能エネルギーの一つ「バイオマス燃料」としても使用されている=2013年11月、インドネシア・スマトラ島
Ulet Ifansasti via Getty Images

菅義偉前首相の2050年カーボンニュートラル宣言、バイデン政権のパリ協定復帰、気候変動対策を話し合うCOP26に向けた各国の温室効果ガス削減目標の引き上げーー。

振り返れば、2021年は「気候危機」対策が大きく動いた1年でした。

一方で、環境問題の「危機」は、気候変動だけではありません。SDGsは「陸の豊かさ」や「海の豊かさ」を守ることも目標に掲げていますが、実はここにも大きな危機が迫っています。

たとえば、世界資源研究所(WRI)によると、世界の森林面積は2020年、25万8000平方キロメートルも減少。これは、イギリスの国土を上回る面積です。アマゾンの森林消失面積は2021年、過去15年間で最高レベルを記録しました。

森林が消失すれば、生態系が破壊され、多くの野生生物が絶滅の危機に追いやられます。川でつながる海にも栄養分を供給できなくなり、影響は海の生態系にも及びます。

また、森林はCO2の吸収源でもありますが、森林減少にともなう年間のCO2排出量は全体の10%にも及び、気候変動の大きな要因になっています。皮肉にも、再生可能エネルギーである「バイオマス発電」の燃料を入手するために森林が破壊されているなど、気候変動対策の「矛盾」も世界各地で指摘されています。

そこで今求められているのが、気候変動対策と「両輪」で、陸や海、その豊かさを支える「生物多様性」の保全に取り組んでいくことです。生物多様性の喪失は近年、ビジネスや金融の世界でも「経営上の重大なリスク」として危機感が高まっています。

2022年4月には中国・昆明で生物多様性条約の会議が開かれ、2030年までの生物多様性保全の国際目標が決められる予定です。

2021年の最後にお届けする「ハフライブ」。2022年以降、ビジネスでもキーワードにもなるであろう「生物多様性」について学び、考えます。 

番組には、2人のゲストが出演します。1人目のゲストは、若者が生物多様性保全のために政策提言や啓発活動をする団体「一般社団法人Change Our Next Decade(COND)」代表理事の矢動丸琴子さん。もう1人のゲストは、生物多様性など環境問題をテーマに、30年以上にわたって国内外で取材を続けてきた共同通信社編集委員兼論説委員の井田徹治さんです。

<番組概要>
番組は2週に分けてお送りします。

1週目 気候変動と並ぶ危機「生物多様性」
配信日時:12月13日(月)夜9時~
配信URL: YouTube https://youtu.be/McAHj_InYQg
配信URL: Twitter https://twitter.com/i/broadcasts/1lDxLLbedVQxm

2週目 2022年、ビジネスのキーワードは「生物多様性」
配信日時:12月20日(月)夜9時~
配信URL: YouTube https://youtu.be/ujX0d-MqUSU
配信URL: Twitter https://twitter.com/i/broadcasts/1nAKEYlqmelKL

番組のイントロダクションとして、本記事の後半では、

・生物多様性の喪失は、私たちの暮らしと関係あるの?
・生物多様性をめぐるビジネスや金融の最前線
・GDPに代わる新しい経済指標
 

について短く解説します。

リハビリセンターで保護され、野生に放される直前のオラウータン。インドネシアのスマトラ島では、パームオイルの原料となるアブラヤシの大規模農園開発のために、オラウータンなど野生動物が生息地を追われている=2014年11月、インドネシア・スマトラ島
リハビリセンターで保護され、野生に放される直前のオラウータン。インドネシアのスマトラ島では、パームオイルの原料となるアブラヤシの大規模農園開発のために、オラウータンなど野生動物が生息地を追われている=2014年11月、インドネシア・スマトラ島
Ulet Ifansasti via Getty Images

もし地球からミツバチが消えたら…

突然ですが、もし地球からミツバチが消えたら、私たちの毎日はどう変わるでしょうか。

もしかしたら「たかがミツバチ」と思う人もいるかもしれません。

しかし実は、世界の主要農作物の実に75%の種類が、ミツバチを中心とした“花粉媒介者”の影響を受けていると言われています。花粉媒介者がいなければ、私たちの食卓の彩りは一気に失われるでしょう。毎朝のコーヒーも、おやつの一粒のチョコレートも、色とりどりの野菜サラダも食べることができなくなるのです。

ミツバチが物語るように、地球上ではすべての生き物がそれぞれ互いに影響し合いながら、複雑な生態系を構成しています。少しでもバランスが崩れれば、生態系全体に与える影響は計り知れないのです。言うまでもなく、私たち人間が被る影響も甚大です。

しかし、そんな生態系が今、悲鳴を上げています。動植物のうち約25%がすでに絶滅危惧種。1970年から2016年の間に、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類の個体数は、地球全体で平均68%減少しました背景にあるのは、土地の開発や汚染、乱獲や密猟、外来種の持ち込み、気候変動などです。

待ったなしの状況の中、生物多様性の保全に向けて、私たちに何ができるのでしょうか。

「種の絶滅」が加速している
「種の絶滅」が加速している
Yuki Takada / Huffpost Japan

生物多様性保全をめぐって、ビジネスや金融が本格的に動き出した

生物多様性保全の推進をめぐって、今大きな鍵を握っているのがビジネスや金融です。

毎年1月、世界の首脳や大企業のトップらが参加する「ダボス会議」。その開催にあわせて公表される「グローバルリスク報告書」に2020年、「発生可能性が高いリスク上位5」と「影響が大きいリスク上位5」の両方に初めて「生物多様性損失」がランクインしました

経済界では、生物多様性の喪失を「重大な経営リスク」と捉えて、取り組みを強化する風潮が急速に高まっているのです。

特に危機感を強めているのが、長期資金を運用する機関投資家です。

世界最大の資産運用会社「ブラックロック」は3月、投資先の企業に対して森林破壊を行わない方針や生物多様性に関する戦略を公表するよう要求。6月には欧州の金融機関が主導して、企業の自然への依存度や影響を把握し、開示するための「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」が発足し、2022年の本格始動を見込んでいます。

GDPに代わる新しい経済指標は 

生物多様性危機の背景から、これまでの経済システムを見直そうという意見も存在感を増しています。

イギリス政府が2021年2月に発表した報告書「生物多様性の経済学/ダスグプタ・レビュー」(日本語版の要約はこちらは、持続不可能な経済や生活により、地球上の自然の資産「自然資本」は1992から2014年にかけて40%減少したと試算し、「持続可能な経済成長にはGDPと異なる尺度が必要」と提唱しました。

ダスグプタ・レビューを和訳した一人である同志社大の和田喜彦教授は「これまでの主流派の経済学は、自然の供給能力の限界に目を向けることはタブー視され、限界はイノベーションで解決できると信じてきました。しかし、世界で最も権威ある経済学者の一人であるダスグプタ教授がそのタブーを破ったことに、経済界に大きな衝撃が走りました。これからの経済を考える上で非常に大きな転換点になったのではないでしょうか」と語ります。

グローバル・フットプリント・ネットワークとWWF(世界自然保護基金)による試算では、現在の消費生活を支えるには地球が1.6個分必要とされています。これからの経済や企業活動には、どんな転換が必要なのか。番組で議論します。

【ハフライブ】生物多様性×SDGs
【ハフライブ】生物多様性×SDGs
Yuki Takada / Huffpost Japan

ゲスト2人の“視点”は

矢動丸琴子さん 一般社団法人Change Our Next Decade(COND)代表理事

矢動丸さんは、環境健康学や環境教育学の分野で研究をする博士課程の学生でもあります。実は生物多様性を専門にしているわけではなく、自身についても「もともと自然や生き物がすごく好きなタイプの人間ではない」と説明します。

そんな矢動丸さんが、それでも生物多様性保全に力を入れる理由ーー。

それは、生物多様性が気候変動と同様に危機的な状態にあるにも関わらず、社会的な注目を浴びていないことへの危機感だといいます。実際に、「日本国内の環境問題で危機的に思う項目」を聞いた調査で、生物多様性はわずか1.9%にとどまりました。

日本社会において生物多様性への関心を高め、政治や経済の「主要なテーマ」にしていくにはどうしたらいいのか。矢動丸さんと考えます。

2021年10月、中国・昆明で開催された生物多様性の会議「COP15」の様子。会議は、新型コロナの感染状況を踏まえて2部制になっていて、2022年4月から5月にかけては対面での会議が開催される予定。
2021年10月、中国・昆明で開催された生物多様性の会議「COP15」の様子。会議は、新型コロナの感染状況を踏まえて2部制になっていて、2022年4月から5月にかけては対面での会議が開催される予定。
Xinhua News Agency via Getty Images

井田徹治さん 共同通信社編集委員兼論説委員 環境・開発・エネルギー問題担当

井田さんは記者として、国内外で生物多様性の喪失が起こっている現場や、NGO、企業、国際機関の取り組みなどを30年以上にもわたって取材してきました。

生物多様性を守ることは極めて重要な一方で、実際には様々なジレンマもあります。

たとえば、発展途上国などでは、貧困や飢餓のなかにいる人々が、やむなく絶滅危惧種の動物を食糧にしてしまったり、農地拡大のために森林伐採をしてしまったりするケースもあります。

環境破壊と貧困は実は隣り合わせのテーマ。どちらかではなく両方を解決していくためにはどうしたら良いのでしょうか。

また、生物多様性保全への取り組みに関して、日本企業の現在地は?井田さんに聞きます。

(執筆:吉田遥 / 中田真弥)

<番組概要>
番組は2週に分けてお送りします。

1週目 気候変動と並ぶ危機「生物多様性」
配信日時:12月13日(月)夜9時~
配信URL: YouTube https://youtu.be/McAHj_InYQg
配信URL: Twitter https://twitter.com/i/broadcasts/1lDxLLbedVQxm

2週目 2022年、ビジネスのキーワードは「生物多様性」
配信日時:12月20日(月)夜9時~
配信URL: YouTube https://youtu.be/ujX0d-MqUSU
配信URL: Twitter https://twitter.com/i/broadcasts/1nAKEYlqmelKL

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