成功した男性と結婚するのは「第3の経済的選択肢」? 女性の主張がSNSで物議を醸している

彼女が語った「価値の高い男性と結婚し、専業主婦になる方法」が、SNSで物議を醸している。「専業主婦になるのは出世ではない」との批判も。
家でパイを焼く主婦(イメージ)
John Richardson via Getty Images
家でパイを焼く主婦(イメージ)

女性なら、仕事じゃなくて、夫をゲットしようーー。

主婦でYouTuberのアリー・ドラモンド氏が、驚くべきキャリアチョイスを提唱し、話題となった。

ことの発端は、ドラモンド氏の友人が5月、TikTok「価値の高い男性と結婚し、専業主婦になる方法」と題して投稿した動画。そこで友人は、ドラモンド氏の職業について質問した。

大きなダイヤモンドのついた結婚指輪を見せた後、ドラモンド氏はその問いに対し「夫を愛すこと」と答え、「より良い人間になり、女性らしく振る舞い、従順になった」ことでその“仕事”をゲットしたという。

そして彼女は、友人や多くの視聴者に、主婦は「実際の仕事」であることを訴えた。

「公共機関や民間企業では、こういう仕事はないの。男性に雇われる必要があるけど、それでもいい。だって、考えてみれば、販売業では上司に棚を掃除するように言われて従うでしょ?それなら自分の家の棚を掃除した方が良くない?」

また、「雇用主」(夫)を見つけるアドバイスとして、自分が結婚したいような「価値の高い男性」のもとで勤務することを提案した。「弁護士と結婚したい?それならパラリーガルの仕事に就けばいい。歯科医がいいなら、歯科衛生士になるといい」と述べた。

「医師と結婚する秘書をいびる女性がいるけど、最後に笑うのは誰?夫と赤ちゃんと別荘で一緒に暮らす妻よ」とカメラに向かって語った。

「『専業主婦』になるのは出世ではない」と批判の声も

当然のことながら、人々の意見を二分したこのビデオは、他のソーシャルメディアでもすぐに話題となった。ドラモンド氏の堂々とした態度を称賛する声がある一方、この動画を不快に感じ、うんざりしたと言う意見もあった。

SNSでは、「料理・掃除・家事をしなくてはいけない専業主婦であることは、決して女性にとって出世ではない」「男性の『お手伝い』になることはアップグレードなんかじゃない」など批判のが寄せられた。

ドラモント氏がわざと炎上を狙ったのではないかと疑う声もあったが、彼女はハフポストのインタビューでそれを否定した。

「私が女性たちに伝えようとしているメッセージは、軍役に服することや教育を受ける以外に、成功した男性と結婚するという、第三の経済的選択肢があるということ」とハフポストにemailで返答した。「結婚すれば、彼の財産はあなたの財産、彼の成功はあなたの成功になるんです」

ドラモンド氏は、「仕事することしか知らない」と言って、主婦業を職業として検討した事さえない女性もいると感じている。大卒で販売業で勤務したこともあるドラモンド氏も、軍で今の夫と出会うまでは、そうしたグループの1人だったという。

「ある販売店で勤務していて、棚を掃除しながら思ったの。『こんな単調な仕事、家でもできるじゃない。夫の収入は十分あるし』。だから、それを行動に移したんです。だって、それが私の幸せだから」と彼女は話した。

「夫に朝食を作ることは、大学の論文がどれだけ評価された時よりもやりがいを感じるんです」

ドラモンド氏は、伝統的な性別役割分担に身を委ねることは、外で働く女性が帰宅後に直面する、無給の家事から解放してくれると考えている。

「夫が長時間働き、あなたより稼いでいるなら、おそらくあなたが家事をすることになるでしょう?それなら何を迷う必要がある?資本主義のアメリカでは、上司は明日にでもあなたをクビにできる。でも家族は裏切らない。だから賢い選択をして」

一部の視聴者は、家事は大変な仕事であることは違いないと共感したが、無給の仕事に変わりはない、と主張した。

そしてソーシャルメディアでは、伝統的な性別役割分担に基づく結婚生活への古くからある疑問が投げられた。

もし夫が新しい女性を見つけたら結婚はどうなるのか?

フェミニズムについての著書を持つミッキー・ケンダル氏は、「統計によると、こういったケースは最低限の慰謝料で離婚して、結婚前に所有していたものは共有財産とならず、女性はゼロから再スタートしなくてはならない」とTwitterで述べた。

ドラモンド氏は2月に結婚し、11月に出産を控えているが、離婚したらどうなるかを懸念する批評家を嘲笑う。

「私は教養もあり野心家です。もし夫が明日去っても、どうにかできます。そんなことは怖くありません」と述べた。

彼女は動画で自分の主張を強く述べたが、この生き方が万人向けではないことを認識しているという。

「もし、女性が働くことで良い妻や母になるのであれば、働くといいでしょう。でも働くことで逆効果となるのであれば、仕事を諦め、主婦業がより充実感を与えてくれるか検討してみるべきだと思います」と話した。

女性は仕事を離れ、伝統的な専業主婦になる傾向にある?

TikTokやTwitterでは、冗談か本気か、伝統的妻主義について言及する人が増えてきているようだが、キャリアを放棄する女性の数に大きな変化はない、とノースカロライナ大学の社会学准教授のアリエル・クッパーバーグ氏は述べる。

アメリカの不安定な経済状況の中、伝統的妻のライフスタイルに惹かれる女性が増えているかについて質問すると、アメリカの国勢調査では、その逆を示唆していると答えた。

実際、データがある直近の2020年と2021年では、女性の専業主婦率は過去最低だったという。

「2021年、18歳未満の子供を持つ母親のうち、家で家族の世話をしているのは16.6%、2020年は16.4%。それに比べて1995年は18.8%、1985年は27.8%です」

子どものいない女性では、専業主婦率はもっと低いといい、2021年にはわずか3.7%で、こちらも過去最低だという。

クッパーバーグ氏は、共働きか専業主婦(主夫)になるかは、それぞれの家族にあった選択が可能であるべきだと述べた。

育児費用が高騰している今、収入の低いパートナーが家にいることは理にかなうケースもあるかもしれない。しかしドラモンド氏の視点は明らかに特権的なもので、一人の収入で家族を養っていくのはますます困難になっている。

クッパーバーグ氏はドラモンド氏の動画に対し、そのジェンダーに基づいた偏見を批判した。彼女の最新の研究によると、専業主夫は専業主婦よりもはるかに稀だという。

「女性がキャリアを築き、男性が家で家庭と子どもの世話をするのはどうでしょう?女性の高学歴化が進んでいるので、男性が専業主夫になる方が理にかなう場合もあるでしょう」

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。