「同性カップルは別制度でもいい」は差別。原告が二流市民を作らないよう訴える【結婚の平等裁判】

結婚制度を男女のカップルに限ることは「あなたたちは見慣れないから入ってくるな」と言っていることに等しい。高裁に進んだ東京一次訴訟で、原告側が訴えました

「法律上の性別が同じパートナーとの結婚が認められないのは違憲」などとして、複数の性的マイノリティ当事者が国を相手取り起こした東京1次訴訟の控訴審が6月23日、東京高裁(谷口園恵裁判長)で始まった。

この裁判では、これまで言い渡された全国5つの地裁判決のうち4つが「違憲」と判断している。

東京1次訴訟の地裁判決もその一つだ。「同性カップルが家族になるための制度がないのは違憲」とした。

一方で「同性間の結婚を認めていない現在の法律は、憲法に違反していない」「同性カップルが家族になるために、婚姻とは別の制度を設けることも可能」との考えを示した。

愛する人と結婚できることを求めてきた原告らは「婚姻とは別の制度」を望むのか。23日の第1回口頭弁論で、原告側はなぜ「別制度」ではダメなのかを繰り返し語った。

左から)原告側の中川重徳弁護士、佐藤真依子弁護士、小野春さん、小川葉子さん
左から)原告側の中川重徳弁護士、佐藤真依子弁護士、小野春さん、小川葉子さん
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小川さん「似たような制度は差別」

原告の小川葉子さんは「同性カップルのためにいくら似たような制度を作ったとしてもそれは差別」と法廷で訴えた。

小川さんとパートナーの大江千束さんは、27年ともに生きる中で、結婚した異性カップルであれば経験しなくてすむような扱いに直面してきた。

小川さんの母の葬儀で、大江さんに香典の管理を頼むと、親類から「どこの誰かもわからない女を信用して、お金を任せて大丈夫なのか?」と言われたことがあるという。

こういった差別的な扱いや眼差しに傷つき苦しんできた小川さんは「似たような制度を作ってもそれは差別です」「性別に関係なく誰もが婚姻できることにより、区別や差別をなくしていける」と述べた。

小川さんは6月に誕生日を迎え、大江さんとともに60代になった。「残された時間はあまり長くなく、決死の思いでここにきています」「絶望ではなく、希望を持てる判決を」と訴えた。

小野さん「こんな思い、もう終わりにしたい」

もう一人、意見陳述をした原告の小野春さんは、パートナーの西川麻実さんと3人の子を育てる中で、子どもたちがどれほど疎外感や不安を感じてきたかを語った。

小野さんが産んだ次男が入院することになった時に、付き添っていた西川さんは「同性のパートナーではダメ」と言われて手続きができなかった。

長男が、西川さんのことを作文に書いた時、先生が悪気なく「この人は誰ですか」と書き込んだことで、長男はしばらく家族のことを外で話さなくなった。

長男を「兄ちゃん」と呼んでいた娘は、同級生から「お前の兄ちゃんじゃないだろ」と言われ、長男を兄とは呼ばなくなった。

小野さんは、声を詰まらせながらこういった経験を振り返り、「20年間、家族でこんな思いをしてきました。もう終わりにしたい」「私たちにも結婚制度を使わせてください。他の制度はいりません。子どもたちに、周りの家族とは違うとは思ってほしくないからです」と伝えた。

別制度は「あなたたちは入ってくるな」という偏見

東京地裁が「同性間の婚姻を認めていない現在の法律は、憲法には違反しない」と判断した根拠の一つが「結婚は子を産み育てる同性カップルに社会的な承認を与える制度だと伝統的に考えられてきたから」という理由だ。

しかし、原告側の中川重徳弁護士は法廷で「結婚には『真摯な親密関係を保護する』という役割があり、自然生殖をしない/出来ない人に結婚を認めないというのは、性的マイノリティに限らず、多くの人を傷つけるものだ」と指摘。

「結婚は男女間のもの」という考えに固執することは「あなたたちは見慣れないから入ってくるな」と言っていることに等しく、偏見に基づく嫌悪であると強調した。

さらに「別制度でもいい」という発想についても、「長く差別にさらされてきた性的マイノリティに、 あらためて劣った存在だというメッセージを発するのと同然」と述べた。

憲法24条2項は「結婚や家族に関する法律は、個人の尊厳に基づいて作らなければいけない」と定めている。

中川弁護士はその点を引き合いに出し、「憲法がわざわざ二流市民を作り出す法律を作ることを許すはずはない」と訴えた。

尊重される人とされない人がいる状態

この日の審理の後、報道陣の取材に応じた中川弁護士は「生殖が出来ない人の結婚には社会的承認がない、というのはおかしいということを改めて指摘した」と語った。

「憲法は、すべての人が個人として尊重される、あるいは平等だと言っています。それなのに、実際は人として尊重される人とされない人がいます。裁判官には、その事実はどう考えたっておかしいというところを原点に、この裁判を進めてほしいと思います」

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