「準結婚」は差別的な分離政策。結婚平等を望むLGBTQ当事者が法廷で訴える

同性カップルの結婚は「別制度」で実現可能なのか。当事者は「平等に扱わない限り、社会は変わらない」と法廷で語った
入廷する原告ら(2023年10月31日)
入廷する原告ら(2023年10月31日)
HuffPost Japan

法律上同性のふたりが結婚を認められないのは違憲だとして、性的マイノリティ当事者が国を訴えている裁判は、東京1次訴訟の控訴審第2回口頭弁論が10月31日に東京高裁(谷口園恵裁判長)で開かれた。

この裁判では、全国6つの地裁・高裁で30人を超えるLGBTQ+当事者が原告や控訴人となっており、これまでに4つの地裁で違憲判決が示されている。

東京1次訴訟の地裁判決も「同性カップルが家族になるための制度がない」ことを違憲状態とした。

その一方で、東京地裁は「同性カップルが家族になるために、婚姻とは別の制度を設けることも可能」とも判断。

31日の口頭弁論では、控訴人らが「別制度にすれば、偏見や差別は残ったままになる」と訴えた。

「準結婚」の未来は望まない

パートナーのかつさんと沖縄で宿泊施設を経営する控訴人の廣橋正さんは、「別制度も可能」とした東京地裁の判断に差別を感じたと意見陳述で述べた。
廣橋さんは「別制度を設けるというのは、白人と黒人でバスの席やトイレを別々にしたアメリカの人種差別と同じであり、結婚の権利のある人とない人の分離だ」と主張。
同性カップルを対象にした「準結婚」のような制度を設け、家族や友人から「準結婚おめでとう!」と祝福されながらも別扱いされるような未来は望まないと述べた。
もう一つ廣橋さんが問題にしたのが、東京地裁判決が同性カップルの結婚制度について、「国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ」検討されるべきと判断した点だ。
廣橋さんは法廷で「結婚は、数多くの社会保障が受けられる制度。それを利用する権利は誰もが等しく持っているはずの人権なのに、なぜ国の伝統や国民感情の物差しで測る必要があるのでしょうか、自分たちは結婚できる人たちの奴隷なのでしょうか?」と訴えた。

同性愛者を孤独にさせている

控訴人の西川麻実さんは、同性カップルが結婚制度を利用できないことは社会の偏見を強化し、性的マイノリティ当事者や子どもたちを孤独にさせていると意見陳述で述べた。

西川さんはパートナーの小野春さんと3人の子どもを育ててきたが、同性カップルに対する偏見への恐れから、家族のメンバーそれぞれが学校や職場で生活を隠しながら生きねばならなかったという。

西川さんによると、小野さんの実子が学校に持っていく写真を選ぶ時には、西川さんと西川さんの実子が写っていないものを慎重に選ばねばならず、家に友人を連れてくることもなかった。

15年間塾講師として働いてきた西川さんも、自身が同性愛者だと生徒たちに伝えたことは一度もないという。

西川さんと小野さんは、2010年に結婚式を挙げている。式の翌日に小野さんと歩いていた時に、ガーデンウェディングで学校の先生が生徒たちに結婚を祝福されているのを見て、衝撃を受けたと振り返った。

「自分は結婚式の幸せを、教え子に『おめでとう』と言ってもらえることは無いのだと思うと、気付いたらぼろぼろと涙がこぼれていました」

パートナーシップ制度が不十分な理由

同性カップルの結婚を実現するために「別制度の可能性もありうる」と判断した東京地裁。

しかし31日の口頭弁論で、控訴人はその解決策が「平等」とはかけ離れていると強調した。

「法律が平等に扱わない限り、社会は変わらず、LGBTQ+に対するいじめや差別はなくならない」(廣橋さん)

「同性間の婚姻制度がないというのは、国が差別してもいいというお墨付きを与えることになる」(西川さん)

控訴人の加藤慶二弁護士も、結婚制度の代わりに「登録パートナーシップ制度」を導入しても結婚と同等の社会的承認は得られず、差別意識を強化すると意見陳述で述べた。

西川さんは口頭弁論後の記者団からの取材で、パートナーシップでは不十分であることは歴史からもわかっていると語った。

「かつてパートナーシップ制度を導入したヨーロッパの国も、最終的に婚姻の平等を実現しました。パートナーシップ制度では平等にならないということが証明されており、その道筋をたどるのは、歴史に逆らうことだと思います。平等を実現するためには、婚姻制度が必要です」

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