PRESENTED BY SHIBUYA QWS

創業110年の老舗企業がオープンイノベーションを起こす。お菓子の廃棄包材がつくる、幸せな未来とは?

共創施設「SHIBUYA QWS」を舞台に、廃棄包材のアップサイクルに取り組む老舗菓子メーカー・カンロ。予測不可能な時代に、日本企業が創造性を発揮するには?

昨今、社会課題の多様化・複雑化に伴い、企業の経営環境もまた激変している。

そうしたなか、オープンイノベーションを通じたアップサイクルに取り組む企業がある。カンロ飴やピュレグミを販売している、老舗菓子メーカー・カンロだ。

「自社だけで解決できなくても、みんなで力を合わせればイノベーションが生まれる」

そう語るのは、共創施設SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)で活動する、カンロ株式会社フューチャーデザイン事業本部・礒辺友里子さん。

予測不可能な時代に、日本企業が創造性を発揮するには? 問いから未来をつくる連載最終回は、大正元年の創業以来、日本のキャンディ文化を牽引し続ける老舗・カンロが描く未来に迫る。

礒辺友里子(いそべ・ゆりこ)さん:カンロ株式会社 フューチャーデザイン事業本部 フューチャーデザイン事業本部長付 担当部長。1989年にカンロへ入社。商品開発に従事し、「ピュレグミ」を開発。その後、ダイバーシティ推進室室長を務め、現職。
礒辺友里子(いそべ・ゆりこ)さん:カンロ株式会社 フューチャーデザイン事業本部 フューチャーデザイン事業本部長付 担当部長。1989年にカンロへ入社。商品開発に従事し、「ピュレグミ」を開発。その後、ダイバーシティ推進室室長を務め、現職。
下屋敷和文

キャンディは人に寄り添って、幸せな気分にさせるもの。

―フューチャーデザイン事業本部とは、何をする部署ですか?

名前のとおり、未来をデザインする部署。カンロのコア事業である飴とグミ以外の新しい事業を考える、一般的にいう新規事業開発室みたいな感じです。ただ、何でもありというわけではなく、カンロのパーパスに基づいて考えています。

―パーパスは昨年、設定されたんですよね?

はい。昨今はコロナ禍やウクライナ危機があって、先行きが不透明な状況が続いていますよね。そうした予測不可能な時代を迎えて、企業の真価が問われるようになってきた。

そこでカンロとしても、社内外に向けて私たちの存在意義を明確に発信しようと。昨年の創業110周年を機に、パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」をつくりました。

カンロのパーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」
カンロのパーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」
カンロ株式会社

―「心がひとつぶ、大きくなる。」って、素敵ですよね。ほっこりする。

飴って「人に寄り添って、幸せな気分にさせるもの」だと思っていて。大阪にも「飴ちゃん文化」がありますけど、飴をもらって怒る人って絶対いないじゃないですか(笑)。

飴をきっかけにコミュニケーションが生まれたり、笑顔になったり――。飴とグミもそうですが、人の心に働きかける魅力があると思っていて。だから、そんな「心がひとつぶ、大きくなる。」瞬間をつくる会社にしていきたい。そう考えています。

パッケージの廃棄包材が、ペンケースに生まれ変わる。

―フューチャーデザイン事業本部で、すでに立ち上げた事業はありますか?

フューチャーデザイン事業本部は昨年にできた新しい部署で、「Well-being」と「サステナビリティ」の2軸で事業開発をしている段階です。まず、Well-beingでは、菓子周辺領域で新なターゲットに対して課題解決の手助けをしたいと考えています。今注目している分野は高齢化社会についてです。

カンロは「おいしさ」だけでなく「素材」と「糖の機能性」を重視して、商品を開発してきました。だから、その資産は活かしつつ、たとえば自然由来の原材料にこだわった商品・サービスを通じて、シニア世代のウェルビーイングに貢献できないか? みたいなことを考えています。

一方、サステナビリティ領域では、すでに事業化を進めています。手始めに取り組んだのが、生産過程でどうしても発生してしまう規格外の飴のアップサイクル。

規格外で販売できない飴の約8割は飼料や肥料として再利用されています。しかし、ただ素材を提供するだけでなく、カンロの意思で何かに再利用したい。そう考えて、協業企業の力を借りながら、規格外のカンロ飴を入れてエタノール化し、マスクスプレーとハンドスプレーを試作しました。さらに、ウェットティッシュもつくり、カンロの直営店「ヒトツブカンロ」で販売しています。

左:規格外の飴をエタノール化してつくった、ウェットティッシュなど。右:カンロ飴とピュレグミの廃棄包材をアップサイクルしてつくったペンケースと名刺入れのサンプル
左:規格外の飴をエタノール化してつくった、ウェットティッシュなど。右:カンロ飴とピュレグミの廃棄包材をアップサイクルしてつくったペンケースと名刺入れのサンプル
下屋敷和文

―現在、取り組まれているプロジェクトはありますか?

SHIBUYA QWSを拠点に、廃棄包材のアップサイクルに取り組んでいます。

飴やグミの色とりどりのパッケージは工場で包装するのですが、機械調整などの試運転をしてから包装します。だから、どうしても捨てざるを得ない包材が排出されてしまう。

この廃棄包材を低減する努力もしているのですが、その排出量は年間約70tにものぼります。環境負荷を減らすためにも、なんとかこれをアップサイクルできないか? ということで、アップサイクルをすることでゴミを資源に変えるプロジェクトを進めているデザインファーム「ペーパーパレード」さんと現在共創しています。

ペーパーパレードさんは、もともとSHIBUYA QWSで、廃棄された屋外広告を循環利用するプロジェクトに取り組んでいて。そのつながりでSHIBUYA QWSに紹介していただきました。

初めて同社と打ち合わせした際、ぐちゃぐちゃの廃棄包材を見せたんです。「実際こんな感じですが、アップサイクルできますか?」って。そしたら「屋外広告とは違いますけど、何かできると思います。ぜひやらせてください」と即答してくださって。

その後も「廃棄包材のアップサイクルはチャレンジとして面白いし、何よりお菓子のパッケージって形を変えてもかわいい」と、前向きに取り組んでくれて。試作品として、カンロ飴とピュレグミの廃棄包材を使ったペンケースと名刺入れをつくり、数人の社員に使ってもらっています。

ピュレグミの廃棄包材をアップサイクルしてつくった名刺入れのサンプル。表面には「Kanro」のロゴが印刷してある
ピュレグミの廃棄包材をアップサイクルしてつくった名刺入れのサンプル。表面には「Kanro」のロゴが印刷してある
下屋敷和文

―かわいいですね。カンロ社内での反応はどうでしたか?

最初は「ごみから何ができるの?」と懐疑的な声も一部あったのですが、実際に試作品を渡して使い勝手を確認してもらうと、とても好評でした。

力を合わせれば、新しいイノベーションが生まれる。

―SHIBUYA QWSには多様な会員がいますよね。ペーパーパレードとの取り組みのほかに、オープンイノベーションは生まれましたか?

まだ具体的な取り組みには至っていませんが、SHIBUYA QWSのコーポレート会員同士の繋がりが持てた食品メーカーや菓子メーカーとコラボレーションできないか、打ち合わせや意見交換をしています。

普段、社内で仕事をしていると同業他社と交流する機会ってほぼないんです。だから、菓子メーカー同士で話ができるのは、SHIBUYA QWSのような共創施設ならではだと思います。

また、企業だけでなく地方自治体の方とも、売れずに残ってしまった果実などを飴やグミで活用できないか? という意見交換もしていますね。SHIBUYA QWSにいると、社内に閉じこもっていると出てこないアイデアがたくさん生まれてきて。「ヒントの玉手箱」みたいって思っています。

今年のゴールデンウィークに渋谷スクランブルスクエアでおこなわれた、カンロのECサイト「KanroPOCKeT(カンロポケット)」のEC限定商品を店頭販売するPOPUPストア。オープン初日には、プレス向けイベントがSHIBUYA QWSで実施された
今年のゴールデンウィークに渋谷スクランブルスクエアでおこなわれた、カンロのECサイト「KanroPOCKeT(カンロポケット)」のEC限定商品を店頭販売するPOPUPストア。オープン初日には、プレス向けイベントがSHIBUYA QWSで実施された
下屋敷和文

―「日本はイノベーションが苦手」と言われることもあります。他社と共創するなかで苦労はありましたか?

カンロは、創業110周年を迎えた昔ながらの老舗。保守的なイメージもあると思います。だけど、意外と柔軟性がある会社なんです。一方で、あまり会社の外に出ようとせず、中で解決しようとするカルチャーも強かった。

しかし、昨今は社会課題や経営課題が多様化・複雑化するなかで、これまでのようにカンロの中だけで課題解決できないケースも増えてきた。そこで、オープンイノベーションの必要性を感じて、SHIBUYA QWSのような外部の共創施設に入会したんです。

もともとカンロにあった柔軟な組織風土のおかげもあって、他社との共創には前向きで。「自社だけで解決できなくても、みんなで力を合わせれば新しいイノベーションが生まれる」そう信じて、社長を中心に新規事業に挑んでいるところです。

下屋敷和文

本連載では「問いから未来をつくる」をテーマに、SHIBUYA QWSで活動する起業家から老舗企業社員まで、多様な人々を取材してきた。

彼ら/彼女らが取り組むプロジェクトはいずれも、日本社会を変える可能性を秘めたものばかりで、まさに「Question with sensibility(問いの感性)」に裏打ちされた創造性が息づいている。

こうしたプロジェクトの一つひとつが重なり合い、大きな変革のうねりを引き起こすことで、より良い未来をつくっていく――。そんな、日本社会の明るい風景が垣間見える取材だった。

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写真:下屋敷和文

取材・文:大橋翠

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