家の電気を再エネにしたい人がイチからわかる。切り替え方法や電力会社の選び方は?

再エネ電気に切り替えるには 「太陽光パネルの設置や工事が必要」「マンションだと難しい」「電気代が高くなる」「停電しやすい」って本当…?実はすべて思い込みかもしれません。
風力発電所のイメージ
風力発電所のイメージ
Kiyoshi Hijiki via Getty Images

気候危機への対策が急がれるなか、個人でできるアクションの一つとして、家の電気を「再生可能エネルギー(再エネ)」に変えることがあります。

自宅に太陽光パネルがなくても大丈夫。再エネ電気を売っている電力会社に契約を切り替えることで、家の電気を再エネにすることができます。

一方で、「どんな手続きが必要なの?」「デメリットはないの?」「どんな会社を選べばいいの?」などの疑問を持っている人も多いかもしれません。

そんな疑問を、再エネへの転換を促すプロジェクト「パワーシフト・キャンペーン」の事務局をつとめる環境NGO「FoE Japan」の吉田明子さんに聞きました。

この記事に書いてあること

・再エネへの切り替えの手続きは?
・再エネにしたら何が変わる?
(電気代について / 停電リスクについて / 電力会社が撤退・倒産した場合について)
・数ある電気会社、どう選べばいい?
・【おまけ】こんなユニークな電力会社もあります

再エネ電気とは 太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどによって作られた電気のこと。石油や石炭など化石燃料を燃やす火力発電とは違い、発電時に二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しない。G7では、カナダの再エネ比率が69%、ドイツやイギリスがそれぞれ40%を超えるなか、日本は20.9%とアメリカに続く2番目の低さで、欧州から大きな遅れを取っている。

各電源のCO2排出量
各電源のCO2排出量
Yuki Takada / Huffpost Japan

再エネへの切り替えに必要な手続きは?

2016年の「電力小売全面自由化」によって、消費者が電気の購入先を自由に選べるようになりました。それにともない、再エネ電気に注目する電力会社も次々に新規参入。再エネ電気は、消費者にとって身近な選択肢になってきています。

吉田さんによると「集合住宅は再エネには切り替えられない」と思っている人も少なくないようですが、アパートやマンションなど集合住宅に住んでいても、ほとんどの場合切り替えは可能です。ただし、一部の大規模なマンションなどで、管理組合等を通じて建物全体で一つの電力会社と契約している場合などは、戸別の変更が難しいこともあるそうです。

では、切り替えるときにはどんな手続きが必要なのでしょうか。吉田さんは「工事や立ち会いは必要なく、すべての手続きを電話かオンラインで10分ほどで済ませることができます」と話します。現在使っている電力会社に契約解除の連絡をしなくてよいので、携帯電話やインターネットのプロバイダーの変更よりも簡単です。

以下で、手続きの流れを簡単にまとめました。

【手順】

① 再エネ電気の購入先となる電力会社とプランを選ぶ
② 電力会社のウェブサイトから料金のシミュレーションをする(もしくは料金表を確認)
③ 問題がなければ、そのまま手続きを進める

【手続きに必要な情報】

・電気使用量のお知らせ(検針票)に記載の「お客さま番号(契約番号)」と「供給地点番号」
・引き落としの銀行口座やクレジットカード情報

再エネにしたら何が変わる?よくある3つの疑問

skaman306 via Getty Images

切り替えの手続きは簡単にできることが分かりましたが、切り替えたあとの「デメリット」はないのでしょうか。3つの疑問について吉田さんに聞きました。

1. 電気代について

Q 再エネにすると電気代が高くなるのでは?

「実は、再エネ電力会社に切り替えた方が電気代がお得になるケースもあります。一人暮らしや節電しているなどで電力消費量が非常に少ない家庭は、大手電力との契約のほうが安い場合もありますが、大抵は同程度か少し安くなります」(吉田さん)

2. 停電のリスクについて

Q 風力や太陽光などで発電する再エネ。天候や時間帯によって、電力の供給が不安定になることはないの?

「その心配は一切ありません。より正しく言うならば、停電などのリスクは電力契約切り替え前後でまったく変わることはありません。なぜなら、電気の購入先を変えても、家に届く電気の流れは全く変わらないからです。

はてな?と思った方もいると思うので少し詳しく説明します。

電気は太陽光や火力、原子力などさまざまな発電所で作られますが、それらは電気を運ぶ送配電網ですべて混ざり合い、それぞれの家に届けられます。

送配電は、電力小売全面自由化以降も地域の大手電力が一括して担っているので、家に届く電気は変わらないのです。

では、再エネにすると何が変わるのか。変わるのは電気代の支払先です。電力会社(小売電気事業者)は、発電所と各家庭を契約でつなぎ、お金をやり取りする窓口になっているのです。

これまで地域の大手電力に支払われてきた電気代の多くが、火力発電所や原子力発電所の開発や維持に使われてきたことは否めません。逆に、再エネを重視する電力会社に電気代を支払えば、再エネ発電所の建設や維持、そこで働く社員や、関連する地域を応援することにつながるのです」(吉田さん)

再エネ電気に切り替えると、電気は変わらず、お金の流れが変わる
再エネ電気に切り替えると、電気は変わらず、お金の流れが変わる
Yuki Takada / Huffpost Japan

3. 電力会社が撤退や倒産した場合について

Q 万が一電力会社が倒産・撤退したら電気の供給はどうなるの?

「契約している電力会社が倒産した場合でも、ただちに家の電気が停まることはありません。新しい電力会社に契約を切り替えるまでの間は、送配電会社(地域の大手電力)が、セーフティネットとして電気の供給をすることになっているからです」(吉田さん)

数ある電力会社、どう選べばいい?

農地に設置した太陽光パネルで発電する「ソーラーシェアリング」。農家は、作物による収入に加えて、売電収入も得られる。農地の収益性が高まれば、農家減少に歯止めがかかるほか、耕作放棄地の再生も目指せると期待が高まっている。
農地に設置した太陽光パネルで発電する「ソーラーシェアリング」。農家は、作物による収入に加えて、売電収入も得られる。農地の収益性が高まれば、農家減少に歯止めがかかるほか、耕作放棄地の再生も目指せると期待が高まっている。
時事通信社[市民エネルギーちば提供]

次は、再エネを買う電力会社の選び方です。数ある電力会社のなかから、どんな基準で選べばいいのでしょうか。

吉田さんは「ビジョンに共感し、応援したいと思えるか」で選んでほしいと話します。再エネの割合はもちろん大事ですが、今はまだ割合が小さくてもその内容にこだわって今後増やそうとしている電力会社もあります。参考にしたいのが、各社のウェブサイト。「電気の地産地消で地域活性に役立てる」「電気がどこで誰によって作られたかわかる」など、各社の思いやサービスの特徴はそれぞれです。

また、再エネを掲げていても電気の調達先が不透明だったり、発電所が環境破壊や住民トラブルなどの問題を抱えていたりと、注意が必要な事業者がいることも確かです。消費者がそうした事業者を見分けることは簡単ではありませんが、ウェブサイトなどで「電源構成(どんな発電方法でどのくらいの電力を調達しているかを示す内訳)や発電所の情報を公開しているか」は、透明性をはかる一つの指標になるそうです。

「パワーシフト・キャンペーン」のウェブサイトでは、「『持続可能ではない発電所の電気』を使用していないこと」など一定の基準を満たした電力会社を紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。

パワーシフトキャンペーンによる再エネを重視する電力会社の全国マップ
パワーシフトキャンペーンによる再エネを重視する電力会社の全国マップ
パワーシフトキャンペーン

【おまけ】こんなユニークな電力会社もあります

電力会社を選ぶポイントは「共感できるか」。ほんの一部に過ぎませんが、独自のビジョンをかかげ、ユニークな取り組みをしている電力会社を紹介します。

■ 電気の作り手の顔が見える みんな電力

「顔の見える電力」を掲げて、発電所の情報を公開しています。電気料金の一部を応援したい発電所に支払う仕組みがあり、特定の発電所を継続して応援すると「ふるさと納税」のように発電者から地元の名産などのプレゼントが届く特典も。実際に発電所を訪れることができるツアーも実施しています。

供給エリア:東北電力管内、東京電力管内、中部電力管内、関西電力管内、中国電力管内、四国電力管内、九州電力管内(離島を除く)

■ お坊さんたちが始めた電力会社 テラエナジー

自死問題や環境問題などに取り組んできた僧侶たちが起業した電力会社です。電気料金の2.5%を利用者自らが選んだ団体(2021年9月時点で41団体)に寄付できるのが特徴。再エネ電気の販売を通して、地域の社会課題に取り組む市民団体の継続的な活動を支えることを目指しています。

供給エリア:東北電力管内、東京電力管内、中部電力管内、関西電力管内、中国電力管内、四国電力管内、九州電力管内(離島を除く)

※電力は、みんな電力から調達しています。

■ 「脱原発」「エネルギー自給」「CO2削減」を目指す 生活クラブエナジー

生協の生活クラブは、組合員にむけて再エネ電気を販売しています。「原発のない社会、CO2を減らせる社会をつくる」「地域への貢献と自然環境に留意した発電事業をすすめる」などエネルギー7原則を定め、それに則って電気を供給しています。

供給エリア:北海道電力管内、東北電力管内、東京電力管内、中部電力管内、関西電力管内

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