PRESENTED BY 公益財団法人笹川平和財団

世界が注目、日本がリードする“海のSDGs”。笹川平和財団が今「ブルーエコノミー」を推進する理由

暑くて長い夏を経験した私たちが知るべき、2つのプロジェクト

記録的な猛暑や度重なる大雨など、近年の異常気象が気候変動の現実を示すように、地球温暖化は待ったなしの問題。私たち一人ひとりが取り組むべき重要なテーマであることは明らかです。

激甚化する豪雨災害をはじめ、さまざまな環境の変化を経験する私たちが今、知るべき環境へのアクションのうち、世界から注目されている、日本の“海のSDGs”とも言える取り組みに迫ります。

世界に注目される「ブルーエコノミー」

地球温暖化の要因になっているガスにはさまざまなものがありますが、最も影響が大きいと言われているのが二酸化炭素(CO2)です。日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指すことを宣言しており、企業や自治体、そして個人でも“脱炭素社会”への活動が少しずつ広がっています。

そんな中、世界で関心が高まっている環境問題に関するキーワードがあります。

“海のSDGs”と言われる「ブルーエコノミー」です。

ブルーエコノミーとは、海洋生態系の健全性を維持しながら、経済成長、生計の向上、雇用のために海洋資源を持続的に利用すること (※世界銀行参照)と定義されており、海の環境と経済を両立させていく考え方を指します。

2022年4月に、パラオで開催された海洋環境・海洋経済をテーマとした国際会議「アワオーシャン会議」においても議題の一つにブルーエコノミーが挙げられ、岸田首相もビデオメッセージで「ブルーエコノミーの実現に向けた取り組みを推進する」と言及するなど、国際的に関心が高まっているキーワードです。

世界平和構築のための環境保全

世界的には注目されながらも、日本ではまだまだ知る人が少ない言葉ですが、もっとブルーエコノミーを身近にすべく活動を推進しているのが、笹川平和財団です。

国際理解、国際交流及び国際協力の推進を目的として設立され、国連の経済社会理事会(ECOSOC)のNGO特別協議資格も取得している団体です。地球の自然・社会的危機への対応、というミッションの中で、環境保護を非常に重要なテーマとしていて、これまでも海洋環境に関わる多くの活動に取り組んできました。

「ブルーエコノミー」は、1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミットで採択されたアジェンダ21に、すでに概念として盛り込まれていましたが、言葉としては、起業家であり経済学者でもあるグンター・パウリ氏が2010年に発行した同名の著書により広まりました。

笹川平和財団・海洋政策研究所では、この言葉が生まれる以前から、海を守りながら経済的な発展を目指す「ブルーエコノミー」の研究に取り組んでいますが、この度、その活動を紹介する動画を公開しました。

キーワードだけ聞くと、“真面目そう”“難しそう”と感じてしまう人が少なくないでしょう。しかし、実はとてもシンプルで身近なこと。その事実を、より分かりやすく、簡単に紹介することで、ブルーエコノミーを「自分ごと化」してもらうことを目指した動画コンテンツです。

今回、2つの取り組みを知ることで笹川平和財団がブルーエコノミーを推進する理由が見えてきます。

◼︎海洋教育パイオニアスクールプログラム

学校が、新たに“海の学び”に取り組む動きを支援する、「海洋教育パイオニアスクールプログラム」。子どもたちが海にもっと親しみ、理解を深め、自分たちの力で海を守ってゆく──。そんな新しい学びを、日本中の学校に広げたいという思いで立ち上がった施策です。

これまで日本各地の小・中学校と高校、延べ1291校が参加しています。

その一つが、大阪府阪南市が波有手(ぼうで)海岸などで実施するアマモの再生・保全活動。ここでは、地元の小学生と漁協関係者らが連携し、“脱炭素の救世主”とも呼ばれるアマモを保護する取り組みをおこなっています。

かつては海草の一種、という認識しかされていなかったアマモですが、近年の研究により、海水からだけでなく、大気中からも二酸化炭素を吸収して光合成をおこなっていることが明らかになりました。さらに、アマモが密集する場所には隠れ場を求めてさまざまな海の生き物が集まり、新たな生物環境が構築され、漁業に良い影響を与えるだけでなく、景観の改善にもつながるのです。つまり、アマモを再生・保全することは、CO2の削減に加え、漁業資源や観光資源の向上に大きく貢献できるということです。

◼︎ Jブルークレジット®

経済面では、日本独自の仕組みが注目されています。企業活動においてどうしても避けることができないCO2の排出をオフセット、つまり埋め合わせる仕組みである「Jブルークレジット®」です。

CO2の排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資することで、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方で、カーボンクレジット制度の仕組みを海の分野に応用したものと言えます。

Jブルークレジット®の仕組みを生み出したのは、神奈川県横須賀市に本部を置く「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)」。その創設には、笹川平和財団が深く関わっています。

JBEの理事で、笹川平和財団 海洋政策研究所の上席研究員を務める渡邉敦さんは、「『Jブルークレジット®』を国際的に広げていくことで、世界各地の海洋環境問題に貢献できると考えています。特に自然条件や社会環境の親和性が高いアジアに向けて広めていくことが、ブルーエコノミーを世界各地で実現することに近づきます」と話します。

◇◇◇

これら2つの取り組みを通して見えてくるのは、ブルーエコノミーが①子どもたちへの環境教育 ②漁業・観光業などの活性化 ③クレジット購入などによる企業の参画のしやすさ── などに資するということ。一石三鳥、四鳥とも言える広がりが期待できる取り組みなのです。

そして今後、より多くの人にとって身近なテーマにするために、参加できる場と仕組みを増やすことがブルーエコノミー実現の大きな一歩になると考えています。

今年、長い夏を経験した日本。環境問題に対する危機感をさらに強めた人も多かったのではないでしょうか。

とはいえ、自分一人でゼロからアクションを起こすことは簡単なことではありません。その時に、身近に参加できる機会があることは、ブルーエコノミーに限らず、さまざまなテーマにおいてとても重要なことです。

笹川平和財団のブルーエコノミーの活動が示すものは、海の環境を守るということだけでなく、問題意識を持った人が参加できる場や仕組みづくりの必要性なのかもしれません。

▼笹川平和財団のYouTubeチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@spfnews

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