アートとカルチャー
2019年06月01日 15時07分 JST

安倍政権の「圧力」、望月衣塑子記者や前川喜平氏らが明かす。映画「新聞記者」に合わせて【動画】

「身内を困らせ、萎縮を狙っている」。望月記者はそう明かした

権力が隠蔽する不正に新聞記者が迫る映画「新聞記者」(藤井道人監督)が6月28日、全国一斉に公開される。

韓国の若手女優シム・ウンギョンが新聞記者を、松坂桃李が記者に協力する若手官僚を演じるサスペンスエンターテイメントだ。

作品はフィクションだが、東京新聞の望月衣塑子記者の自伝「新聞記者」が原案となっているほか、加計学園問題など、安倍政権下で実際に起きた出来事を題材にしているとみられる内容が盛り込まれている。

作品に合わせ、望月記者と元文部科学省事務次官の前川喜平氏、新聞労連委員長で朝日新聞記者の南彰氏、元ニューヨークタイムズ東京支局長でジャーナリストのマーティン・ファクラー氏の4人が「権力とメディア」をテーマに対談し、記者に対する安倍政権の「圧力」について話した。

対談の様子は作中でも一部登場するが、ハフポストは主要部分をまとめた動画を制作側から提供を受け、独占的に掲載する。2回目の今回は「権力とメディア」がテーマだ。

対談の主な内容は以下の通り(敬称略)。

間接的な圧力

 権力者側からの圧力みたいなところで、望月さんは色々やってきているわけですけど、どういう場面で感じたり、逆にそれをどう跳ね返していますか。

望月 最近もそういえば武器がらみの話で、(首相)官邸とかNSC(国家安全保障会議)の話を取材で色々聞いて書いていたら、やっぱり私には直接言わないんですね。

かつて官邸を担当していたうちの政治部の記者に対し、「なんだあいつは。なんで財務省とか行って色々書いているんだ」とか。直接言わず、間接的に文句を言ってくると。

その時、同僚の記者は「この記者は、税金や兵器の無駄を追うという意味でやってるんで」と言い返してくれるんですけど。

HuffPost Japan
望月記者

この記者は屈しないかもしれないけど、政府の側が自分と親しい政治部系の記者にワーワー、ワーワー言っておけば、会社として何かを考えるかもしれないと。たぶんそういう期待を持っているのかなと。

私、ものすごくゆるせないなと思って。「なおさらどんどん取材しよう」って、その後もやってますけど。

例えば、ほかのテレビ局でも、官邸にとってすごく不都合な報道をすると、それをやったプロデューサーとかが根性座っていると(官邸側が)わかると、局の編集長とか、もっと上の統括責任者とかに、まさに官邸の秘書官とかがボーンと電話入れて「なんだあれは」っていうのをすごくやっている。

直接的にやらなんですよね。間接的にやって、会社としては「困った困った」というのを作り出して、「プレッシャーになるようなことはやめとけ」っていうことを最終的にはやらせたいんだと思うんですけど。

「身内」を使ってそういうことをやってくることには、一番怒りますよね。

官房長官会見でバーッと言ってシーンとなっても、それはあくまで向こうは権力でこっちは疑問を突きつけるんだと思っているから、そこでワーッと言われることはあまり怒りにも感じないんですけれども。それはそういう立場で仕事をしているので。

身内を使って、身内が困るだろうなっていうことについては、南君でも私でも、その時は「どうしよう」って、萎縮することを狙ってるんだなっていう。そういうやり方がやっぱり怒りを持つ。

官邸、官僚人事を掌握 

 本当に日本的な、連座制みたいな、連帯責任みたいな。そこをすごいからめ取ってる感じはあるんですよね。その辺、前川さんは圧力という部分についてはどう感じられていますか。

前川 役所の中で仕事をしていれば、圧力というよりも元々権力の下で仕事をしていますから。全部権力に従って仕事をするしかないってところになるんですけどね。

でも役人を思うように動かす術っていうのは、今の権力者は非常に長けてますね。「飴と鞭」をうまく使い分けてる。

時事通信社
前川喜平氏

 個人的な行動をつかんでスキャンダル化するっていうことも鞭としては非常にあると思いますけど、役人に対してはあんまりそれは使わないと思う。私の場合も、辞めた後で使われたわけですよね。

やっぱり役人にとって一番効果があるのは人事ですよね。

人事権は今、完全に官邸にあると言っていいので、官邸権力に迎合する、忖度する、そういう人物は出世しますね。今は。

反対する人間は間違いなく左遷される。あるいは反対しないまでも、距離を置こうとするだけで退けられてしまう。本当の意味で距離を置かれてしまう。そういうことが起こりますね。

文部科学省のこの10月に行われた人事もまさにその通りで、官邸と距離を置こうとしていた、次官と一番近いところにいた幹部職員が辞めたんですよね。

その人物を飛び越えて、下のポストにいた人物が事務次官になったわけですけど。

今度事務次官になったこの人物は、官邸の言うことは何でも聞くだけではなくて、むしろこの人物は官邸の力を借りて自分のポストを獲得したと言ってもいいぐらい。そういうことが起こっている。

それは各省で起こっていると思います。

いろんな役所で聞いても、何であんな人が次官になったんだろうと。そういう人が次官になっているケースはたくさんあるわけです。それはもう、官邸の力で次官になっている。

次官というのはそもそも、その役所の中の幹部人事の原案を作る仕事をするわけですから、次官のポストを押さえるということは、下のポストについて支配力を及ぼすことができるんですよね。

今回の文部科学省の人事も、次官が官邸の言いなりになる人物になっただけではなくて、その下のポストもそうなってる。

なんであの人があのポストになるのっていう人ばっかりなってる。そういうことが起こってくると結局、そのまた下の人たちは、やはり組織の中で一定のポストには就きたいと思います。

そうすると、強い権力、官邸の権力に従うしかないということになるわけですよね。役人はポストで仕事をするので、ポストが得られないと、したい仕事ができないんですよ。それはどんな組織でもそうでしょうけどね。

「報道したい、取材したい」っていう気持ちがある記者でも、報道も取材もできないポストに追いやられるということもあるわけで。

役人も結局、仕事がしたいっていう時には仕事ができるポストが必要なんです。だから本当に仕事がしたいと思ったら、そのポストを得るために、やっぱり権力に従うことは必要になってくる。

だけど本当にやりたいことは権力が命ずることとは違うんだということがあるわけで。その時にできることは「面従腹背」なんですよ(笑)。

望月 新たな事務次官は「面従腹背はしないで下さい」って言いましたよね、就任挨拶で(笑)。あれもものすごく意図的でしたね。

前川 「面従腹背するな」っていうのと、「意思決定プロセスを外に漏らすな」って言ったんです。これはもう、国民を裏切るようなことですよね。「我々が何をしているかは国民に知らせるな」って言っていることと同義ですから。

時事通信社
安倍晋三首相

 ニューヨークの本社に圧力?

 マーティンさん、権力者からの圧力みたいなところは、今日本の事例を出したわけですけど、マーティンさんが日本の取材現場を経験されて、日本の現状はどういうふうに映っていますか。

ファクラー プレッシャーがあると感じるのは、簡単にいうとね、アクセスですよね。

飴と鞭として使って、協力する記者には特ダネをあげる、情報を提供する。批判的な報道をする奴に対しては何も教えてやらないと。

そのアクセスを切るかどうか、情報を提供するかどうか、その程度ですよね。

私は日本では特派員という立場で、1人で日本と韓国について書いていたから、あんまり日々の動きの細かい情報は全然必要なかった。

わりと情報が当局から来なくても全然関係なかったから、そういうプレッシャーは全然効かなかったですよね。

間接的なプレッシャーで面白いんですけど、外務省がニューヨークタイムズの本社に行って、「今の東京支局長が批判的な記事を書いていて、これよくないですよ」とボスに言ったんですよね。ニューヨークの領事館の外交官がね。

その人が帰ったら電話がかかってきて、「よくやったぞ」と(笑)。そんなの関係ないですよね。プレッシャーポイントもないし。でもワシントンだったらまた話が違うと思うんですよね。

別に日本とアメリカというよりも、我々は日本の当局の情報に頼ってないから、わりと自由な関係の中の、自由な立場だったから。

ですから情報をくれないとか、取材ができない、インタビュー応じない、その程度のプレッシャーだった。