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2020年04月02日 07時54分 JST | 更新 2020年04月02日 07時54分 JST

新型コロナウイルス 勤務先とのトラブル6つのケースに専門家が答える【相談窓口情報あり】

新型コロナの影響で「内定を取り消されてしまったら」「何の対策もしてくれない」「辞めてほしいと言われた」など、様々なトラブルの対処法を解説します。

shtonado via Getty Images
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新型コロナウイルスの感染が拡大し、イベントや外出の“自粛”が要請されるなか、一時的な休業を余儀なくされるなど、勤務先とのトラブルに直面する方が増えています。私が代表を務めるNPO法人POSSEの労働相談窓口にも、2月以降多くの相談が寄せられ、徐々に深刻な相談が増えてきています。

 

ここでは、寄せられた相談事例を踏まえ、様々なトラブルへの対処法をQ &A形式で解説していきます。

 

Q1  新型コロナの影響で仕事が減り、一時的に休業を命じられたら、給与は支払ってもらえる?

会社が自主的な判断によって労働者を休業させたということであれば、会社の「責めに帰すべき事由」(民法536条2項)によって就業できなくなったといえることから、民法の規定に基づき、給与全額の支払いを求めることができます。

状況によっては「責めに帰すべき事由」がないケースもあると思いますが、その場合でも、会社から休業手当(平均賃金の60%以上)を受け取ることができます(労働基準法26条)。会社が休業手当の支払義務を免れるのはかなり限定的なケースだけです。

 

労働者としては、まずは働きたいという意思を会社に伝え、就労させてもらえない場合には、会社に対して休業期間の給与全額を保障するよう求めるべきでしょう。それが難しい場合でも、生活を守るために、少しでも多くの給与又は休業手当を支払うよう会社と話し合うべきです。

 

もちろん、今回の危機で経営者側も大変な事情を抱えています。しかし、労働者の側も急に賃金が支払われなくなれば、生活していくことができません。そのため、経営者側には一定の賃金に対する補償の義務があります。「経済的なリスク」に対して、労働者だけが一方的に引き受けることはおかしいと、法律は考えているのです。

 

厚生労働省も、新型コロナに関連して労働者を休業させる場合、労使間でよく話し合い、労働者の不利益を回避するよう呼びかけています。賃金を含む労働条件については、労使が対等な立場で話し合って決めるべきことですから、会社から言われたことをそのまま受け入れる必要はありません。

 

なお、シフト制で働くアルバイトの方も、同様に給与や休業手当の支払いを求めることができます。

 

Q2  発熱などの症状があり、「もしかしたら新型コロナ?」と思っても、会社が休ませてくれなかったら?

会社は、労働者に対して、「その生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう」必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています(労働契約法5条)。

このため、会社による出勤命令はこの安全配慮義務に基づく一定の制約を受けると考えられ、無制限に認められるものではありません。発熱などの症状があり、感染症に罹っている可能性がある労働者を出勤させれば、周りの労働者の生命や健康を危険に晒すことになってしまいます。

 

そのため、労働者が休みたいと伝えているにもかかわらず、会社が出勤を強要する場合は安全配慮義務違反に当たると考えられます。会社が休暇を認めない場合には、このような法律を根拠に会社と話し合うべきです。少なくとも、年次有給休暇の取得を会社が妨げることは違法です。

 

自主的に休む場合には給与や休業手当を支払ってもらえないのが原則ですが、会社の就業規則に有給の病気休暇制度があれば、利用できる可能性があります。当然ながら、年次有給休暇が付与されている場合には取得することができます。

 

なお、会社から自宅待機を命じられた場合には、会社の「責めに帰すべき事由」(民法536条2項)によって就業できなくなったといえることから、給与全額の支払いを求めることができます。

 

Q3  新型コロナの感染が不安なのに、会社が在宅勤務などの対応をしてくれない時は?

会社に在宅勤務や時差通勤の制度を導入するよう義務づける法律はありません。しかし、会社は、労働者に対して安全配慮義務(労働契約法5条)を負っているため、可能な限り在宅勤務等を認め、感染拡大を防止しなければなりません。

どこまでの対応が可能かは職種等によって異なりますが、在宅勤務が可能な仕事であるにもかかわらず、会社が何ら対策を取らずに感染を拡大させてしまった場合には、安全配慮義務に違反したものとして責任を問われる可能性があります。

 

また、この4月から施行される「パートタイム・有期雇用労働法」では、正社員とパート・契約社員等との間の不合理な待遇格差が禁止されます。

正社員には在宅勤務や時差通勤を認めているのに非正規には認めないといった労働相談が多く寄せられていますが、このような取扱いはこの法律に抵触する可能性があります。感染防止対策はあらゆる労働者にとって必要なものであり、非正規にだけ認めないことに合理的な理由はないと考えられるからです。

非正規の方は、この法律を有効に活用して、会社に対して制度の公正な運用を求めていくとよいでしょう。

 

同じように、正社員には子どもの世話をするための特別休暇が認められているのに非正規には認められていないというケースも、この法律を根拠に待遇格差の解消を求めることができます。

 

Q4  新型コロナウイルスの影響で経営不振になり、「辞めてほしい」と言われたら?

「辞めてほしい」と言われても、すぐに受け入れる必要はありません。まずは、会社が解雇(一方的な労働契約の解約)をするつもりなのか、退職を促しているだけなのかを確認してください。

 

新型コロナの影響を受けているからといって、会社は労働者を自由に解雇できるわけではありません。経営上の理由による解雇は「整理解雇」と呼ばれますが、それが正当な解雇だといえるか否かは、

(1)人員削減の必要性

(2)解雇回避努力義務の履行

(3)人選の合理性

(4)手続きの妥当性

といった要件に照らして厳格に判断されます。新型コロナの影響で売上が下がったというだけでは解雇は認められませんので、諦めずに専門家や支援団体に相談することをお勧めします。

 

解雇ではなく退職を促されている場合(いわゆる退職勧奨)、労働者はそれに応じる義務はありません。解雇が認められにくいことを知っている経営者は、「解雇だと再就職で不利になる」などと理由をつけて退職に合意させようとするので注意が必要です。労働者が合意しない限り退職は成立しませんので、「辞める気はない」、「働き続けたい」という意思をはっきり伝えることが重要です。

 

退職に合意した場合、合意に基づいて労働契約を終了させたことになるため、法的に争うのは難しくなります。納得がいかないのであれば、会社から言われるままに退職届を出さないように注意してください。

 

会社の経営状況が明らかに悪い場合などで、退職勧奨を受け入れる判断をする場合でも、金銭的な補償を求める、離職理由は「会社都合」とするなど、退職の条件についてよく話し合うべきです。離職理由を「自己都合」とされてしまうと、雇用保険の手当を受ける際に不利になってしまいます。

 

なお、有期雇用の方が契約期間の終了時に更新を拒絶された場合(いわゆる「雇止め」)も、労働者が契約の更新を期待することについて合理的な理由があると認められる場合などには、「雇止め」が無効と判断されることがあります。ぜひ、諦めずに専門家や支援団体に相談して欲しいと思います。


Q5  新型コロナウイルスの影響から、非正規雇用で「明日から来なくていい」「契約を解除する」と言われたら?

有期雇用の場合、「やむを得ない事由」がなければ、契約期間中に解雇することはできません。

「やむを得ない事由」といえるか否かについては、正社員に対する通常の解雇よりも厳しく判断されます。

もともと契約期間が決まっているわけですから、その途中で契約を解約せざるを得ない程の特段の事情がない限り解雇は認められないということです。

 

「やむを得ない事由」があると認められない場合には、期間満了までの給与全額を会社に請求することができます。


Q6  新型コロナウイルスによる経済不安で、入社予定だった会社から内定を取り消されてしまったら?

多くの場合、会社が採用内定を通知した時点で労働契約が成立しているものと考えられます。

 

このため、内定取り消しは解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして無効となります。

内定取り消しが無効である場合には労働契約は存続し、その会社で働くことができますから、その撤回を求めて会社と話し合いましょう。

話し合った結果、諦めて他の就職先を探す場合でも、入社する予定であった会社に金銭的な補償を求めることができます。まずは専門家や支援団体に相談してください。

 

内定取り消しにまで至らなくても、「経営の先行きが見えないから入社日を延期する」などと自宅待機を命じられることがあります。このような場合は、実際に働いていなくても、入社日以降の働けなかった期間について給与全額を請求することができるものと考えられます。

 

Q7  困ったときはどこに相談したらいい?

労働組合、弁護士、行政機関、NPOなど、様々な団体や機関が相談窓口を開設しています(末尾参照)。労働組合による団体交渉、弁護士への依頼、行政機関によるあっせんなど、様々な解決方法がありますので、相談窓口で受けたアドバイスを参考にしながら、諦めず行動していくとよいと思います。

 

なお、このようなときに労働者を守る立場として最も重要な役割を期待されるのが労働組合ですが、職場に組合がなかったり、非正規が入れなかったりして、加入していない人が多いと思います。

個人で入れる労働組合(「ユニオン」と呼ばれます)は各地にありますので、お住まいの地域に入れるユニオンがないか探されてみるとよいでしょう。産業や職種ごとの労働組合もあります。

 

「今は大丈夫だけど今後が不安」という方も、あらかじめ労働組合に入っておけば、何かあったときに安心です。

 

無料労働相談窓口

NPO法人POSSE 
03-6699-9359 soudan@npoposse.jp

*筆者が代表を務めるNPO法人。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。

 

総合サポートユニオン

info@sougou-u.jp

*個別の労働事件に対応している労働組合。労働組合法上の権利を用いることで紛争解決に当たっています。

 

仙台けやきユニオン
022-796-3894 sendai@sougou-u.jp

*仙台圏の労働問題に取り組んでいる個人加盟労働組合です。

 

全国一般東京東部労働組合
03-3604-5983 info@toburoso.or

*東京東部で活動する地域合同労組です。

 

首都圏青年ユニオン
03-5395-5359 union@seinen-u.org

*誰でも一人でも入れる若者のための労働組合です。

 

日本労働弁護団
*労働者と労働組合の権利を擁護することを目的に、全国の弁護士によって組織された団体です。4月上旬に「新型コロナウイルス労働問題全国一斉ホットライン」が予定されています。

03-3251-5363 03-3251-5364

 

 (編集・榊原すずみ