カルロス・ゴーン被告の4度目逮捕に、弘中惇一郎弁護士が怒りの会見。「文明国としてあってはならない暴挙」

逮捕前、ゴーン被告の肉声を動画で撮影しており、公開する方針だ
会見する弘中弁護士
会見する弘中弁護士
REUTERS

日産自動車の資金をオマーンに不正送金したとして会社法違反(特別背任)容疑で4回目の逮捕となった前会長カルロス・ゴーン被告(65)。弁護人の弘中惇一郎弁護士が4月4日、都内の日本外国特派員協会で記者会見し、「一種の口封じで、弁護権侵害だ。文明国としてあってはならない暴挙だ」と訴えた。

ゴーン被告は3日にTwitterの公式アカウントを開設し、11日に会見を開くことを予告していたが、その後再逮捕の情報が流れた。弘中弁護士は「言うべきことは動画として記録してある」として、ゴーン被告のコメントを撮影した動画を公開する予定だと明かした。 

会見場には、開始前から大勢の報道関係者が詰めかけ、国内外での関心の高さをうかがわせた。

逮捕は「屈服させる」「口封じ」「弁護妨害」の3つの意味?

ゴーン前会長の4回目の逮捕容疑は、2012年以降オマーンの販売代理店に総額計3500万ドル(現在のレートで約39億円)を送金し、一部を私的流用して日産側に損害を与えたとされる内容とみられる。

弘中弁護士は会見で、検察にとって再逮捕には「屈服させる」「口封じ」「弁護妨害」の3つの意味があると指摘。証拠隠滅や逃亡の恐れがないとして保釈されたのに逮捕したのは「合理性も必要性もなく、暴挙と言わざるを得ない」と批判した。

3月5日に東京地裁で保釈が許可され、検察の準抗告も棄却された。裁判所で罪証隠滅のおそれも逃亡の恐れもないことが確認されたわけだ。

その後、保釈条件を守りながら公判準備をしてきた。

追加の起訴があるか裁判所が質問した時に、検察は「あるともないとも言えないが、3月末までにはっきりさせる」という話だった。

4月にこちらから電話をしたら、「何とも言えない」と。追起訴があるにしても、よもや再逮捕があるとは、思っていなかった。

「追起訴」は検察の自由だが、身柄を拘束する「再逮捕」は同列ではない。

保釈中の被告人を逮捕するのは異例だと指摘されているが、当たり前だ。裁判所によって逃亡の恐れも証拠隠滅の恐れもないと、保釈条件に適合すると確認されているのにあえてやった(逮捕した)。

ひどく抗議したいと思う。合理性も必要性もない逮捕は暴挙といわざるを得ない。

会見場には、開始前から大勢の報道関係者が詰めかけ、国内外での関心の高さをうかがわせた
会見場には、開始前から大勢の報道関係者が詰めかけ、国内外での関心の高さをうかがわせた
kasane nakamura

裁判の準備書類も押収「弁護権侵害だ」

今回の逮捕で公判準備のための資料や、ゴーン前会長の妻の携帯電話やパスポートも押収されたことを明かし、「弁護権の侵害だ」と抗議した。海外メディアから「今回の逮捕は人質司法だとはっきり言えるか」と問われると、「人質司法だと言えると思います」と答えた。

さらに、ゴーン氏が3日にTwitterに公式アカウントを開設し、11日に会見を開くことを予告したことについて、「保釈条件として、ネットが禁止されているとは理解していない」と述べた。予告後の逮捕について「一種の口封じだ」と批判した。

さらに、いくつか問題がある。

昨日Twitterを通じて、12日(※ゴーン氏自身は11日と投稿)に会見して自分の考えを話したいと知らせた。結果的に一種の口封じとなった。逮捕によって、自由な発言を封じられた。

逮捕に伴う家宅捜索で、携帯電話や書類、ノート、日記を押収された。検察側の建前としては、手元に当該犯罪に関係する書類があるかもしれないから押収したのだろう。だが、3回も逮捕されているので、これらはとっくの昔に持って行かれている。

現在の狭い制限住居の中にあったのは、裁判のための準備資料だ。弁護権の侵害だ。

しかも妻のパスポートや携帯も押収した。妻は容疑者ではない。こんなことが許されるのか。

弁護に必要な、被告人の公判活動に必要な資料も差し押さえられた。これが1つの目的だったんじゃないかと考えざるを得ない。

法律の趣旨に反する、文明国としてはあってはならない暴挙だと思っている。今後はゴーンさんと意思を同じくして、徹底的に戦っていく。

一連の事件についてこのように逮捕することが、海外の目から許されるのかどうか、きちんと考えて報道していただきたい。

弘中弁護士によると、ゴーン被告は逮捕容疑を否認している。

今回の再逮捕が検察側の「最後の切り札」だと考え、検察側が勾留請求をした後に準抗告の手続きを行い、起訴されれば再び保釈請求を行う予定だという。

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