臨月の女性と恋に落ち、わたしは彼女と家族になること、一緒に子育てする道を選んだ

女性だからといって、必ずしも自分が子どもを産む必要はない。“当たり前”と思っている人生にはまだまだ切り拓くことのできる可能性があるのだ。
みちさんをあやす島田さん(写真手前)、櫨畑さん(写真奥)
SATOKO MOCHIZUKI
みちさんをあやす島田さん(写真手前)、櫨畑さん(写真奥)

「子どもを持つならば、女性である自分が産むことになる」

ほとんどの女性はそう思うだろうし、かく言う私もそう思ってきたひとりだ。しかし、もしも自分のパートナーが子どもを産めたとしたら、私は子どもを産みたいと思うだろうかということはときどき考える。 

今回お話をうかがったのは、大阪在住の島田さん。彼女のパートナーは、2児の母である櫨畑(はじはた)敦子さんだ。櫨畑さんは結婚せずに子どもを産むという道を選び、ハフポストでも何度か取材させていただいている。 

女性同士の出会いの場で、ふたりが初めて顔を合わせ、交際を始めたのは、櫨畑さんが2人目の子どもを妊娠していたときだという。櫨畑さんの出産に立ち会い、現在は彼女の友人たちとともに子育てしているという島田さん。

取材時も彼女は慣れたようすで、うれしそうに産まれたばかりのみちさん(当時3ヵ月)をあやしていた。

子どもを持つ人とお付き合いすることも、女性同士でお付き合いすることも、少しずつ聞かれる話にはなってきた。しかし、子どものいる女性とお付き合いする女性の話はあまり聞いたことがない。

島田さんはどんな心境で、櫨畑さんとお付き合いをすることにしたのか。また、今の生活に不安や迷いはないのだろうか。

私は島田さんに素朴な疑問を訊ね、その胸のうちを聞かせてもらった。

出会いは臨月、初めてのデートは産婦人科の妊婦検診 

━━改めて、お二人のなれそめについて聞かせてもらえますか?

初対面は女性同士の出会いの場です。そのとき彼女は目で見て妊娠しているとわかるくらいお腹が大きくて。あとで聞いたら臨月だったみたいで。会場もザワザワしてました(笑)。

━━そうですよね(笑)。第一印象はどんな感じですか?

この場に来られる勇気がすごいなって、びっくりはしましたね。見た感じ明るくて、可愛らしくて。私はあまりそういうタイプではないので、相手は私に興味を持ってくれないだろうなと思っていました。席も離れていたし、話すこともないだろうなと思っていたら、向こうから声をかけてくれたのでびっくりして。

お互いに軽い自己紹介をした後に「次の休みにデートしようよ」と誘われて。次の休みは明後日だと伝えたら「その日は産婦人科の妊婦検診の日だからエコー見に行かない?」と言ってもらったので、一緒に行くことにしました。

━━初めてのデートで産婦人科に行ったということですか!?

そうですね。エコーってなかなか見られないし、楽しそうだなと思って。姉が妊娠したときにエコーを見せてもらったのですが、それっきりだったので「また見られるの、うれしいな」という気持ちでした。元々子どもは好きなので。

エコーを見に行った後に「立ち会いもしない?」と聞かれて「え、いいの?」という感じで快諾して。そのときに正式にお付き合いの申し込みをされて、交際が始まりました。出会ってから1週間くらいのことですね。

━━早い!立ち会いもそれから1ヵ月後くらいですよね?

そうですね。出産の経験も立ち会いの経験もないので、出産経験のある友人に彼女自身の出産時のDVDを見せてもらいながら勉強して。自分が産むとしたら力の入れ方や呼吸の仕方が知りたいと思うんですけど、今回私は産む立場じゃないので邪魔にならずにお手伝いするにはどうしたらいいかを予習して臨みました。

「自分の家族が欲しくて一度は男性と結婚した」

━━急展開に次ぐ急展開ですね。一般的に、お子さんがいる方とお付き合いするのはハードルが高いのではないかと思うのですが、抵抗はなかったですか?

なかったですね。私は昔から子どもが好きだったので、お世話をしたり可愛がらせてもらえたりしてうれしいと素直に思っています。

━━子どもは好きだけど子どもを持ちたいと思ったことはない、ということでしょうか?

過去にはありました。23歳のときから8年くらい男性と結婚していたことがあって、そのときは子どもを産めたらいいなと。

━━ご結婚されていたんですね。ご自身の性的指向に気づいたのは結婚してから、ですか?

いえ、小さい頃から女性が好きだという自分の気持ちに気づいていました。でも、オープンにする勇気もないし、私はとにかく自分で家族がつくりたかったんです。

結婚って、自分の家族を好きなようにつくれるのがすごくいいなと思っていて。そんな思いが強くなったときに知り合った男の人が結婚したいと言ってくれたので「はい、喜んで」という感じです。

ただ、結婚して2年くらいで関係が冷めきってしまって、子どもをつくる話はもちろん、ふたりの会話もほとんどなくなっていました。義理のお母さんの病気のお世話をしていたこともあって、結婚生活を長く続けてしまっていたようなところもあります。

━━離婚されてから女性とお付き合いされていたこともありますよね。彼女との間に子どもが欲しいとは思ったことはなかったのでしょうか?

そのときは一緒にいられることだけで満足していて、子どもを育てられることなんて考えてもいませんでした。だからこそ、今の生活は願ったり叶ったりで、幸せです。

抱っこ紐でみちさんを抱く、島田さん
SATOKO MOCHIZUKI
抱っこ紐でみちさんを抱く、島田さん

「一緒に生活して子育てもしているのに、どうして権利がもらえないんだろう」

━━お二人は今、どんな風に生活しているのでしょうか?

彼女と彼女のお友達が住む長屋に一緒に住んでいます。私が仕事で夜遅く帰ってくるので、朝ごはんを用意したりちょっとしたことを手伝ったりしていますね。

もともと「一緒に子育てしよう」という話だったので、私と彼女と2人で子育てをすると思っていたのですが、産前産後を過ごしてみると、彼女の家には本当にいろんなお友達が訪ねてきて…。なかには子連れの方も。

彼女には「わたしはこれまで、いろんな面で助け合いながら友達と暮らしてきた。ごはんを持ってきてくれたり、一緒に過ごしたり、子どもの成長をともに喜びながら、それぞれのやり方で子育ての一端を担ってくれているんだよ」と言われて、思っていた子育てとはかけ離れていたのでびっくりしました(笑)。

でも、実際に一緒に住んでみたら、すごく居心地が良くて。みんながそれぞれで、子どもたちを大切に育んでいるコミュニティなんだなという空気が伝わってきます。

━━当初、男性と法律婚をした理由のひとつに「家族が欲しい」ということがあったかと思います。「家族」という言葉ではないかもしれませんが、今の生活は島田さんが欲しかったものを満たしてくれていますか。

もう、十分に満たされています。すてきなパートナーにめぐり逢えて、さらに、かわいい子どももいて。ただ現状、日本では同性婚はできない状況なので、養育に関わる者としての責任について、今後どうしていくのがよいかをよく考えます。

今のところできることの一つとして、大阪市の「パートナーシップ制度」を利用しました。たとえば、私か彼女のどちらかが緊急搬送されたときに「同性パートナーシップ宣誓書受領証」を見せることで家族同様にお見舞いすることが許可されたり、家族しか参加できない保育園の参観日のときに証明書を見せることで参加させてもらえたり。そういうことができるかなと思って。

━━でも、パートナーシップ制度には法的拘束力はないですよね。同性愛者の方の中には、法的拘束力の観点から養子縁組を結ぶ方もいらっしゃると聞きます。

養子縁組をしてしまうと、年下の人が年上の人の苗字に変えなければいけないんですよね。私と彼女の場合だと、彼女が私の苗字にしなくちゃいけない。しかも、親権についても特に変わらず、彼女だけが持っていることになるので、私たちにとってはあまり必要がなさそうだなと思ったんです。

━━そうした現行の制度について、島田さんご自身はどんな風に感じていますか?

彼女とお付き合いするまではカミングアウトも考えたことなかったですし、このような制度を利用するなんて全く想像していませんでした。ただ、彼女と一緒に生活をして、子どもの世話をするようになって、「パートナーシップ制度」の申請もしている。これまでは特に意識していませんでしたが、今は、どうして法律婚と同じ権利がもらえないんだろう? と、素朴な疑問として感じるようになりましたね。

━━パートナーシップを結ぶにあたって、ご両親に挨拶などはされたのでしょうか?

一応紹介しに行きました。私の親はすごくステレオタイプな考え方の持ち主なので、以前女の子とお付き合いして同棲していたときも「一緒に住んでいる友達」としか紹介していなかったんです。でも、彼女とはパートナーシップ制度を申請することにもなったので、きちんと紹介しなくちゃと思って、親に初めてカミングアウトして。

ただ、理解できないと言っていましたね。

━━突然、女性同士でパートナーシップ制度を結ぶと言われたうえに、相手の女性には子どももいる、となると、親御さんは驚かれるかもしれませんね。

そうそう(笑)。子どもがいることには戸惑いがあるみたいですね。「もう男の人とは結婚しないの? 1回失敗したくらいでまだチャンスがあるじゃない」みたいなことも言われました。

親がそういう考え方をする人だということはわかっていたので、理解してもらうには時間が必要だと思っています。なので、私は私で幸せに過ごそうと思っています。

「子育ては幸せ。けれど、血のつながりを気にしてしまう自分もいる」

━━素朴な質問なのですが、子どもを持つということに関して、自分の子どもを産みたいという気持ちはないですか?

自分が産みたいと思っていた時期はありました。でも、それは私が女性で、私が産む役割を引き受ける側だと思っていたからで。自分が産まなくても子どもに関われて育てられる機会がある今となっては、自分の子どもを産みたいという気持ちはなくなりました。むしろ産まなくても可愛がらせてもらえて幸せで。

ただ、子どもたちの父親に対しては、複雑な思いがあるのが正直なところです。子どもたちと父親との間には血縁があって、私にはない。やっぱり、複雑ですね。

もし、この先彼女との関係が良好でなくなったり、あるいは環境が変わったりして、どうしても別々の道を進めないといけなくなってしまった時に、血縁のない私は、法的に“関係のない人”になってしまう。正直な気持ちを言うと、そういう不安があります。

でも、毎日がめまぐるしい中でもそういった不安について、彼女は一緒に話し合ったり考えたりしてくれるので、最高のパートナーだと思います。

━━最後に、島田さんにとって、家族をひと言で言うと、何でしょうか。

何でも言い合えるし、許し合える人たちかなって思います。

島田さんのお話を聞いていると、私たちが“当たり前”と思っている人生にはまだまだ切り拓くことのできる可能性があると感じた。女性だからと言って、必ずしも自分が子どもを産む必要はないのだという事実は、私にとって目から鱗。隠し扉を押した先には裏面があり、そこには無数の選択肢があると思うと、より主体的に、そして自由に生きられそうな気がする。

自分が思ってもみなかった選択肢に出会うのは、運もあるのかもしれない。しかし、不意にやってきたチャンスを見逃さぬよう、自分の気持ちには丁寧に向き合っていきたい。島田さんのお話を聞いて、そんなことを思った。

(文:佐々木ののか @sasakinonoka/編集:毛谷村真木 @sou0126

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