新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
2020年05月15日 10時53分 JST | 更新 2020年05月16日 18時41分 JST

感染恐れて患者が激減。「補償なしでは焼け野原に」 開業医が訴える、もう一つの「医療崩壊」【新型コロナ】

院内感染への不安から、患者の受診控えが加速。開業医の一人は「補償なしでは立ち行かない」と打ち明ける。

HuffPost Japan
新型コロナウイルスの影響で、経営面での「医療崩壊」の実態を訴える桑井太郎医師

新型コロナウイルスに対峙する救急医療の現場は、昼夜問わず患者対応に追われている。一方で、コロナの患者の治療に直接関わらない診療所などでは、人手や物資不足ではないもう一つの「医療崩壊」の兆しが見え始めている。

「院内感染を恐れて、初診の患者さんたちが3月半ばから激減しています。補償がないままでは、破綻する医療機関も出てくるでしょう」

そう訴えるのは、東京都渋谷区の「あおい内科」院長の桑井太郎医師(48)。開業から今年で11年目の診療所だ。

■患者の数と収益は連動

あおい内科では従来、発熱や腹痛といった急性期疾患を含めて初診患者が毎月300〜350人だった。それが新型コロナの感染拡大の影響で、3月中旬以降は100人程度に減ったという。

クリニックでコロナに感染することを不安に感じ、受診をためらっているようです。厚生労働省の『37.5度以上の熱が4日以上続いたら相談を』という受診の目安があったことで、様子を見る間に症状が落ち着くケースも多いとみられます」

「日本の保険制度では、病院が診療単価を自由に上げ下げすることはできません。同じ診療行為であれば、どこで受けても同じ費用になるように決まっているのです。患者数が減ったら、その分収益は下がります

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医療用マスクやガウンといった医療物品は不足し、価格の高騰も問題になっている

■継続の要請 感染すれば「自己責任」

緊急事態宣言を出すにあたって、国が示した「基本的対処方針」。ここでは、「すべての医療関係者の事業継続を要請する」と明記している

「医療機関はそもそも休業要請の対象外なので、休業の協力金を受け取れません。医療サービスを提供するという業務内容からも、休業を選択することは難しいのです。

『目の前の患者さんが感染者かもしれない』という精神的な負担を、常に抱えて業務を続けているのが現状です」

「医師や看護師が感染して病院が一時閉鎖となった場合、開業医は休業中の給与を補償されません。事業継続は、あくまで自己責任なんです

国は、新型コロナウイルスの重症・中等症患者への診療に対し、保険点数を付加し診療報酬を上乗せする特例を取り決めている

これに対し、桑井医師は「マスクやガウン、ゴーグルといった医療物品は高騰していて、これらを全てまかなった上で、患者減による減収を補えるものでは到底ありません」と指摘する。

■「緊急性ない」 検診も中止に

治療行為だけではない。自治体のがん検診や、企業が従業員にする人間ドックも「緊急性がない」として後回しにされている。

日本消化器内視鏡学会も、「少なくとも緊急事態宣言の期間中は緊急性のない消化器内視鏡診療の延期・中止を強く勧めます」との方針を示している。 

「胃カメラなどの検診は、保険診療の点数が高いです。中止となれば、検診を収益の柱の一つにしているクリニックにとって大きな痛手となります」(桑井医師)という。さらに、院内感染のリスクから外科手術を延期している病院も多く、その分の減収も響いているという。 

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■住み分けと補償の両輪を

「病院で感染するのでは」という不安が拭えなければ、体に不調があっても受診を控える流れは変わらない。

桑井医師は「国が設備の整った発熱外来の医療機関を指定し、院内感染が起きて一時閉鎖となったら補償をする。住み分けをすることで、それ以外の診療所に安心して受診できるようになれば、受診控えも減るはずです」とみる。

「医療機関は収益以上に、患者を救うという大義のもとに成り立っている。実際、医師が利益の話をすることはタブー視されてきた。

ただ、医師や看護師ら働く人の雇用を支え、収益が安定する運営をしなければいけないのは他の業界の個人事業主と同じです。

経営が立ち行かなくなれば、地域の診療所が次々に姿を消します。コロナが収束する頃には、焼け野原になっているかもしれないのです」