10月11日はカミングアウトデー。望む人が安心・安全にカミングアウトができる社会になるため、何が必要?

カミングアウトは必須ではなく、本人が決めることだ。ただ、差別や偏見が根強い社会においては、自分の性のあり方について伝えたくても伝えることを躊躇してしまうことも少なくない。
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10月11日は、カミングアウトデー。性的指向や性自認をカミングアウトしたLGBTQの人たちを祝福する日だ。

日本では、LGBTQへの認知や理解は広がっているが、自民党区議による「同性愛者が広がったら足立区は滅んでしまう」発言にみられるように、未だに偏見や差別が根強く残っている。

カミングアウトデーのきょう、日本でのLGBTQ、カミングアウトをめぐる現状を考えたい。

▼記事で書かれていること

  • カミングアウトデーが生まれたわけ
  • 日本のカミングアウトの現状 LGBは7.3%、Tは15.8%
  • 安心・安全にカミングアウトできる社会になるためには

カミングアウトデーが生まれたわけ

カミングアウトデーのきっかけとなったのは、1987年10月11日にアメリカのワシントンD.C.で行われた「レズビアンとゲイの権利のためのワシントンマーチ」だ。

1987年10月11日、ワシントンD.C.で行われた行進。
1987年10月11日、ワシントンD.C.で行われた行進。
Bettmann via Getty Images

1980年代は、今よりもHIV/エイズ(※)や同性愛嫌悪が強い時代。

参加者たちは当時のアメリカ大統領であるロナルド・レーガン氏に対し、 HIV/エイズの研究・治療への予算増加と、同性愛者への差別撤廃を求めて行進したという。

当時のニューヨークタイムズ紙によると、20万人以上もの人がワシントンD.C.に集まった。同紙は、マーティン・ルーサー・キング牧師の「I have a dream」演説で知られる1963年のワシントン大行進を彷彿とさせた、と伝えている。

(※)HIV/エイズについては未だに「死に至る病」との誤解が根強いが、抗ウイルス治療法は大きく進歩した。適切に治療をすれば感染前と変わらない生活を送れる上、ほかの人に感染することもない。詳しくはこちらの記事から。

(Gerald) LEE SNIDER via Getty Images
当時は、エイズで亡くなった人たちを追悼するパッチワークが飾られた。
当時は、エイズで亡くなった人たちを追悼するパッチワークが飾られた。
jean-Louis Atlan via Getty Images

カミングアウトデーは、この歴史的な行進から1年後、アメリカの心理学者ロバート・アイヒベルク氏とLGBT活動家のジーン・オリーリ氏によって制定された。

アイヒベルク氏は、「ほとんどの人が周りにレズビアンやゲイはいないと思っていますが、実際にはいます。カミングアウトをすることで、私たちの存在を知らせ、同性愛者への恐怖と偏見から彼らを解放する必要があるのです」との言葉を残している

日本のカミングアウトの現状 LGBは7.3%、Tは15.8%

カミングアウトは必須ではない。いつ、誰に、どのように伝えるか、もしくは伝えないかは、本人が決めることだ。

ただ、差別や偏見が根強い社会においては、自分の性のあり方について、伝えたくても伝えることを躊躇してしまうことも少なくない。カミングアウトは当事者にとって大きな決断でもあり、リスクも伴う。

厚生労働省の委託事業「職場におけるダイバーシティ推進事業」による調査では、職場で自身が性的マイノリティであることを伝えている割合は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの人では7.3%だった。トランスジェンダーは15.8%で、「トイレや更衣室など、施設利用上の配慮を求めたかったから」など、労務管理上の配慮のためにカミングアウトをしたとの理由も挙げられている。

「職場におけるダイバーシティ推進事業」の報告書より
「職場におけるダイバーシティ推進事業」の報告書より

カミングアウトをしない理由としては、それによって不当な扱いを受けたり、人間関係に支障をきたすのではないかと懸念する回答が多かった。

・仕事をする上で、性的マイノリティであることは関係がないから

・職場の人と接しづらくなると思ったから

・人事評価や配置転換、異動等で不利な扱いを受ける可能性があるから

・性的マイノリティについて差別的な言動をする人がいる、またはいるかもしれないから

安心・安全にカミングアウトできる社会になるためには

カミングアウトをしたいと思った人が、安心・安全にできるようになるためには、何が必要なのか。

「LGBT法連合会」事務局長の神谷悠一さんは、「カミングアウトをした時のリスクへの担保のある環境」が必要だ、と指摘する。

「『あの人がいれば何かが起こってもなんとかしてくれる』『この会社は差別を禁止しているからいざという時は守ってくれるはず』人であれ、制度であれ、信頼のおける担保がある状況であれば、カミングアウトをしようと思った時にできるようになります」

 一方で、当事者のそばに信頼のおける人がいたり、その状況が担保されているとは限らない。

そのため、神谷さんはLGBTQへの差別禁止法などの制定を求めている。

「偏見や差別があることによって、学校や職場の誰にならカミングアウトできるのか、都度都度当事者一人ひとりが考えざるを得ない。その状況は早く改善されなければなりません」

日本でも、性的指向や性自認による差別を禁止する法整備の議論は進んでいる。

東京都は、国際オリンピック委員会(IOC)の憲章をふまえ、性的マイノリティへの差別禁止やヘイトスピーチの規制を盛り込んだ人権尊重条例を制定した。

また、三重県は6月、性的マイノリティへの差別を禁止する条例の制定を表明。他人のセクシュアリティを暴露する「アウティング」の禁止を盛り込む方針で、制定すれば、アウティングを禁止する条例は都道府県で初となる。

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