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2020年10月14日 13時23分 JST | 更新 2020年10月14日 19時53分 JST

「学術会議が科研費4兆円を再配分」は誤り。「4兆あれば科学立国できる」ネットは嘆き

科研費予算は2300億円あまりで、採択を決める選考は学術振興会が独自に実施している。

菅義偉首相が6人の任命を拒否したことで話題になっている日本学術会議について、「科研費4兆円の再配分をやっている圧力団体」などとする誤った情報がネットで拡散された。

実際には科研費の予算は2300億円余りで、採択する研究を決める過程に学術会議が影響を及ぼすこともない。Twitterでは「4兆円あれば科学立国できる」などと嘆く投稿もされている。

日本学術振興会
科研費のパンフレット(日本学術振興会)

■科研費も、圧力も「誤り」

科学研究費助成事業(科研費)は学術研究を支援する目的で助成されるもので、独立行政法人の「日本学術振興会」が所管している。

この科研費と学術会議の関係について言及したのは、ネット番組の「Front Japan桜」。

男性キャスターが学術会議について「裏がある」とし、「学術会議のメンバーが中心となって科研費の再配分をやっているわけですよ。学術会議の看板使って一種の圧力団体と化しているわけ。これで科研費ということになると4兆円とか、科研費がらみなんていうと6兆円とかですね」などとした。

さらに「彼らだけがやるわけじゃないですよ」としつつも、「予算配分、予算按分に大きな力を持っているので、本当に適正であって必要であるのかは当然議論になるわけです」とした。

この部分を切り取った動画がTwitterにアップされると、1100回以上リツイートされ、動画の再生回数は11万回を超えた。

しかし、この情報は誤りだ。

まず科研費の予算は文部科学省の令和2年度予算で公開されていて、2373億5000万円だ。「4兆円」がどこから出たものかは不明だが、近いものとして文科省の「文教及び科学振興」のうち「文教関係費」の総額が4兆346億円となっている。

ただし、この文教費は「国立大学法人運営費交付金等(1兆807億円)」など、科研費と関係のない予算も合わせたものに過ぎない。

次に学術会議が科研費の再配分に介入する「大きな力を持っている」という指摘はどうか。科研費を所管する日本学術振興会の担当者によると、2004年度までは科研費の採択を決める審査委員は学術会議の推薦に基づき決められていた。 

しかし、学術システム研究センターが設立され、2005年に選考体制が整うと方法が変わる。研究者などが登録された「審査委員データベース(令和元年度時点で12万5635人)」から研究センターが候補者案を作成し、そこから学術振興会が審査委員を決めている。

学術振興会の担当者はハフポスト日本版の取材に対し「選考は独自に行っていて、学術会議が関与することはありません」と話した。

また、学術会議の会員が審査委員に選ばれるかについては「理論上はあり得ますが、そもそも審査委員を選ぶときに、学術会議の所属かどうかはチェックしませんし、考慮することもありません」とした。

誤った情報でもたらされた科研費の規模は実際の10数倍にのぼる。Twitterでは「科研費が4兆円あれば科学立国できる」「その世界線に移動したい」「落ちる人がいない平和な世界」など、実際と比べて嘆く声が多く投稿されている。