Clubhouseの偽物「Clubhorse(クラブホース)」中国で誕生。規約違反でサービス停止に【UPDATE】

「習近平」という名前のアカウントがスピーカーとなっていた。

「中国版Clubhouse」はいつ誕生するのか。

2月8日夜までに、中国大陸のユーザーが音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」に接続できなくなってから、話題になっていたことだ。

中国大陸ではTwitterやYouTube、Googleなどが原則的に使用できない代わりに、その代替となる国産のサービスが登場し人気を博してきた。

Clubhouseもその流れを辿るとみられていて、すでに複数のサービスがリリースされたことが確認されている。なかには「Clubhorse(クラブホース)」という、本家をかなり意識した模倣品も生まれている。

Clubhorseのロゴ
Clubhorseのロゴ
Clubhorseよりスクリーンショット

■horse(馬)

「Clubhorse」は中国のSNS・ウィーチャットのミニプログラム。これはアプリ上で動作するプログラムのことで、日本でいうLINEのミニアプリ機能に近い。通常のアプリと違ってスマホにインストールせずに使用できる。

アイコンは馬の顔で、リリースしたのは「微米創想科技(北京)有限公司」となっている。

本家と違ってこちらは招待制ではなく、筆者が試したところウィーチャットのアカウントと紐づければすぐにログインできた。

中身は本家と酷似していて、スピーカーに指定された人が自由に発言でき、聴衆側は「挙手ボタン」から発言権を求めることもできる。デザインも本家をそのまま持ってきたのではと疑いたくなるくらいにそっくりだ。

すでに数百人が入っている「部屋」もあるが、筆者が確認した範囲では政治的なテーマは見当たらなかった。もっとも、どれだけの「部屋」が開設されているかは把握できない。

このうち「モバイルインターネット次の10年」という部屋では「習近平」という名前のアカウントがスピーカーとなっていた。別の司会者が話を振ったが言葉を発することはなく、ほどなく部屋から退出していった。

Clubhorseのチャット画面。左段中央が「習近平」
Clubhorseのチャット画面。左段中央が「習近平」
Clubhorseよりスクリーンショット

中国で生まれたClubhouseの類似サービスはこれだけではない。「対話吧」というアプリも本家に酷似していて、現地のSNSなどで話題となっている。こちらは招待制のアプリで、筆者はアカウント開設画面までしか辿り着けていないが、その表示も本家と瓜二つだ。

対話吧よりスクリーンショット
対話吧よりスクリーンショット
対話吧よりスクリーンショット

■今後の見通しは「厳しい」

なぜ中国では急速にこうしたサービスが開発されているのか。

中国経済やネット事情などに詳しいジャーナリストの高口康太さんは「もともと音声チャットサービスは中国にも存在し、珍しい機能ではありませんでした。しかし世界的な盛り上がりが中国にも伝わり、注目されるようになりました」と背景を分析する。

ジャーナリストの高口康太さん(2019年撮影)
ジャーナリストの高口康太さん(2019年撮影)
Fumiya Takahashi

またその一方で「Clubhouseは、後から見知らぬ人が議論に入ってきて盛り上がるのが特徴の一つです。これまで中国では友達同士で会話するサービスが多く、面白いアイデアだと受け止められたようです」という。

そして、複数の類似サービスが生まれている理由としては「これだけ話題になったため、ベンチャーマネーが獲得できそうということで挑戦した可能性もありますし、ベンチャー・キャピタル(投資会社)がすでに動いているという話もあります。とりあえずやってみようという精神ではないでしょうか」と話した。

しかし、中国では政治的に敏感な話題などがあがっていないか、プラットフォーム側が検閲をしなければならない。こうした類似サービスも、どこまで勢いが続くかは不透明だ。

高口さんは「成功する確率もゼロではありませんが、基本的には厳しいと思います。本家Clubhouseと同じように今のところ売り上げが立つめどがないうえ、喋る人が多くなり、人気が出るほどコストがかかります。(政治的にNGが出た場合の)リスクも大きいため、検閲コストも相当かかると思われます」とみている。

【UPDATE 2021/02/19/19:50】

Clubhorseは日本時間の午後7時40分頃、ウィーチャットの規約違反のためサービスが一時停止となった。

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