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2021年04月28日 10時38分 JST

子供用ハーネス取り上げた『スッキリ!』に批判の声。街頭インタビューの「印象論コメント」は必要か

専門家は「重要な問題が好き嫌いや印象論で語られ、『ネタ消費』されてしまっている」と指摘します。

ワイドショーやニュース番組で、頻繁に放送される街頭インタビュー。

政権の支持不支持や、政策への賛否、話題となっているニュースについての意見を尋ねているが、その必要性に疑問を抱く声も上がっている。

4月19日に放送された情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)が子どもの飛び出し防止などを目的に使用する「子供用ハーネス」に関して特集する中で街頭インタビューを紹介したことに、Twitter上では批判の声が上がった。

街頭インタビューはワイドショーやニュース番組でどのような役割を持つのか。

専門家は、子供用ハーネスでの取り上げ方について「『ネタ消費』されてしまった典型的な事例だ」と指摘する。

 

 『スッキリ』での内容は?

日本テレビ公式サイトより
スッキリ

子供用ハーネスは迷子防止紐などとも呼ばれる。子供が身につけるベストやリュックに紐がついており、保護者が紐を持つことで道路への飛び出しや迷子を防ぐものだ。

『スッキリ』では子供用ハーネスについて、「非常に便利という親の声がある一方で、まるでペットのようだという声も上がっています」とし、インスタグラムで話題になった漫画を紹介。

5年前、子どもにハーネスを付けて外出した母親が、若い男性から「手を繋げばよくないですか?」などと問い詰められ、「子供が可哀想じゃないですかぁ!」と大声を出されたという経験を綴ったものだった。

「こどものハーネス、どう思う?」と題されたこの漫画には使用に賛成するコメントが多く寄せられた一方、使うべきではないという声も寄せられたという。 

Getty Creative
ハーネスをつけて保護者と歩く子供(イメージ)

番組では欧米では広く使われていること、日本国内の販売業者によると売り上げは年々増加していることを紹介した上で、街の人の声を紹介。

子連れ女性の「ペットのリードみたい」とする声、20代の女性の「子供も引っ張られてて可哀想」などとする「抵抗がある人」の声を紹介した上で、「実際に育ててみると親の言うことを素直に聞く子ばかりではない」「安全にはかえられない。ないと僕が不安になるくらい」という使用に肯定的な親の意見を取り上げた。

スタジオでは日本テレビ報道局社会部デスクの下川美奈さんが、以前見たときはびっくりした経験もあると明かした上で、「子どもにある程度自由を効かせた上で親御さんも安心感を持って接することができる。すごくいいと思う」とコメント。

MCの加藤浩次さんは「親の使い方というのもありませんか?」と、使うべきかどうかを親が状況を見て判断すべきだとコメント。一方重大事故を防ぐためには必要な面があり、多くの人が「こういうものがあると知っているのが大切では」とも話していた。 

 

「安易に街頭インタビューしないで」の声も

この放送を受け、Twitterでは「子供用ハーネス」が「日本のトレンド」入り。

ハーネスへの賛否の意見も多く書き込まれたが、「安易に街頭インタビューしてネタにするテレビ番組やめてほしい」「賛否なんて要らないです。子供を守るのに親は必死だから」と、当事者以外に印象や賛否を聞くことに対する不満の声も多くシェアされた。

 

ニュースが「ネタ消費」されている

Emilija Manevska via Getty Images
カメラのイメージ

報道番組や情報番組で、街頭インタビューはどういった意味を持つのか。今回こうした不満の声が上がった理由は何か。

メディア文化論が専門の大妻女子大学文学部教授・田中東子さんはこの放送について「社会の中で重要な問題が、好き嫌いや印象論で語られ、『ネタ消費』されてしまった典型的な事例」と指摘。「漫画を切り口にしていますが、この中には子供用ハーネスの賛否以上に取り上げるべき課題が詰まっていると思います」とする。

例えば、漫画で子供を連れた女性が男性から大きな声で叱責されている点に注目し、「子供を連れていたのが男性なら同じことが起きたか?」と考えることで女性が直面しやすい問題について議論することができる。また、「なぜ使う必要があるのか」を調べたり、使っている人に密着したりすることで見えてくる子育ての課題もあるだろう。

「社会問題としてニュースにする方法はいくらでもあるのに本質を掘り下げず、上辺の印象論で対立を煽り感情に訴える『ネタ消費』してしまっている。今のテレビっぽい、と感じます」

こうした街頭インタビューの取り上げ方は、他の情報番組や報道番組などでも多く見られる。

田中さんは背景として、ここ十数年の番組作りにおいて、視聴者離れを防ぐために「庶民感覚を取り入れよう」という方向性があると指摘。ニュースやトピックスを一般の感覚で判断しようという流れの中で、街頭インタビューが多く使われていると分析する。

「情報番組などで専門性のない芸能人などがコメンテーターとして発言する、というのも同じ流れでしょう。1人の専門家に専門外のニュースでもコメントを求めることが多いですよね。街頭インタビューも含め、こうした番組の作りだと複雑な社会問題に対しても印象論的なコメントになりがち。掘り下げた知識や見解、議論は出てきません」

 

「多くの人が賛同することが正しいとは限らない」

さらに、こうした番組づくりのリスクを「多数決のようになってしまう点」「受け手の考えが深まりにくい点」だと解説する。

「庶民感覚を大切にすべきニュースもあるかもしれませんが、多くの人が賛同することが正しいとは限らない。マイノリティの方の人権や主張が無視されることになってしまいかねませんし、賛成やいいねの数は正しい知識とイコールではない。間違った方向に誘導してしまう可能性があります」

「社会問題や政治ニュースは複雑な問題が絡み合っています。ライトに切り取ることを入り口として問題を深く知ってもらう、という流れなら良いと思いますが、多くの場合は違う。印象論や好き嫌いを取り上げてその先にあるものが放送されないと、視聴者もそこで立ち止まってしまいかねません」

 

「様式美」になっていないか

今回『スッキリ!』の放送に多くの不満の声が上がったことについてはソーシャルメディアの広まりが大きく関係しているとする。

「今は誰でもTwitterなどでコメントできる。専門家や当事者でない立場の人のスタジオコメントよりも、より掘り下げた知識やコメントが出てくるのは当然でしょう」

「様式美のように街頭インタビューを使っている番組も多いですが、印象論のようなコメントを流すことが本当に必要なのか、再考すべきだと思います」