身近になった「家事代行」お金で買えるのは“サービス”だけか?

家事を「サボる」ことに対する抵抗感は、多くの女性たちを苦しめている。本来、家事は生活を円滑に行い健康的に過ごすためのものである。誰がやるべき、という決まりはないのだ。
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多忙な生活を送って「家事に手が回らない」と感じている人は、家事代行サービスを利用することを考えてもいいかもしれない。なぜなら今は多様なサービスがあり、同居や毎日の通いでなければせいぜい月数万円以内、内容によっては1回1万円を切るものもあるからだ。

「伝説の家政婦」の登場が追い風に

近年、家政婦(家政夫)がクローズアップされる機会が増えた。料理に特化したサービスを提供するフリーランスの家政婦・タサン志麻さんは、「伝説の家政婦」とキャッチフレーズがつけられ、2017年に最初の本を出して以来、次々とレシピ本をヒットさせている。NHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』でも、2018年に取り上げられて以降、くり返し登場する人気者だ。

メディアに取り上げられることで、サービス内容や価格帯など具体的に分かるようになったせいか、多忙な現役世代がふえているからか、家事を外注することに対する利用者の抵抗感は薄れつつあるようだ。

実際に、利用者が変化しつつあるのか、それはなぜか探るため、大手の一つ、ダスキンの家事代行サービス「メリーメイド」を提供している、ダスキン東京地域本部を訪ねた。

ドラマ『私の家政夫ナギサさん』を監修

ダスキン東京地域本部で広報を務める橋本恵さんは、「(メリーメイドは)サービス開始から30年間、売上が対前年比で下回ったことがありません」と言う。旧来の住み込みなどの家政婦とは異なる家事代行サービスには、すでに30年も歴史があるのだ。

そして、やはり家事代行サービス市場自体が大きくなっているようだ。昨年同社が家事代行の監修を行ったドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)が放送された際は、ホームページのアクセス数や問い合わせが、放送期間の6~8月にぐっと増えたという。

同社のサービス内容から、家事代行サービスの仕組みをつかんでみたい。

まず、家事の中でも面倒な「掃除」に特化した「お掃除おまかせサービス」が1989年にスタート。利用者の要望に応じて2000年、家事全般をサポートする「家事お手伝いサービス」に発展し、「伝説の家政婦」が話題になり始めた数年前には、家事全般に加え、調理サービスへの要望が増えたことから、家事お手伝いサービスの一環として調理補助もするようになった。

また、2007年には、手順をアドバイスしながら基本的には1回の契約で整理・清掃・分類・収納を行う「おかたづけサービス」も始めている。

どのサービスでも、必ず事前に対面で必要なことを打ち合わせて見積もりを出す。なぜなら家事はライフスタイルに直結するため、家庭によって求められる内容が異なるからだ。サービスの初回は、内容のすり合わせも含めてできるだけ利用者の在宅時に行うが、2回目以降はカギを預かって留守宅で家事をすることもできる。調理補助だけは必ず利用者と一緒に行う。

「お掃除おまかせサービス」は、プロの掃除道具と洗剤を使い、2人以上で水回り、部屋全部、窓の掃除など契約した場所を掃除する。「家事おてつだいサービス」は、滞在時間を決めて基本的に1人で訪問。行うのは、洗濯、裁縫、調理、庭掃除、食器洗い、靴磨き、お風呂掃除、アイロンがけ、掃除機がけ、買いものなど、一通りの作業を利用者宅にある道具を使って行う。ただし、介護や保育など専門技術が必要なもの、送迎などの人に関わることやペットの世話はできない。また大きな家具の移動などもサービス外。あくまで日常のお手伝いなのだ。

しかし、例えば洗濯に関して、洗濯ものを洗濯機に入れて洗って干すところまで、あるいは干してある衣類を取り込んで畳んで収納するところまで、と決める。机の上は触らない、あるいは紙類をまとめてきれいに置く簡単な整理を引き受けるなど、きめ細かく利用者とルールを決めて対応できる。

家の状態や広さにもよるが、家事お手伝いサービスとお掃除おまかせサービスは、1回につき2~3時間が多い。

同社の掃除が、一般の人と違う点はどこか。

前出の橋本さんは、「何が原因の汚れなのか見極める、あるいはプラスチックについているのか、金属なのか、対象面の素材を見極め、どういう道具でどういう洗剤を使えば落ちるかを選ぶことができます。その際、傷つけたりシミがついたりするといったダメージを受けそうな場合は、お断りすることもあります。家はお客様の財産だからです。また、机も上からだけでなく下からも見ますし、手で触ることが多い縁の部分なども見て、お掃除します」と言う。

家事代行サービス「メリーメイド」でマネージャーを務める金井陽美さんは、「お風呂場では、お客様が利用するときと同じ目線の、浴槽に入って膝を抱えた状態で上を見て、鏡や蛇口の裏側までチェックします」と語る。

利用者数の増加の理由は何か。金井さんによると、昔は「ダスキンのロゴが入った車で家の前まで来ないで」「おばあちゃまには絶対バレないように」「主人には内緒で」といった女性からの依頼が多かった。しかし、「この20年で様変わりした感じです」と言う。

昔は見積もりの際、妻だけが立ち会うご家庭が多かったのが、最近は夫婦で、パートナーのうち男性だけというときもある。「30代後半から40代の独身の方のご依頼も増えました。最近は独身男性のお客様が増えている印象があります。せっかくの休日を家事に追われないようにしたい、と考えておられるようです」とのこと。

「本当は自分がやらなければならない」

一方で、家事代行サービスを頼むことに対する罪悪感は、まだまだ残っているようだ。女性の顧客の場合、「本当は自分がやらなければならないんですけどね」と必ず言われる、と金井さん。「ふだんお仕事されているのと同じように、家事も立派なお仕事なんですよ。ただそれに代価をいただくかいかないかだけの違いです」と説明すると、笑顔になる女性が多いという。

家事を「サボる」ことに対する抵抗感は、多くの女性たちを苦しめている。毎日きちんと掃除と洗濯をし、手をかけて料理をする。そんな家事のやりかたを、昭和期に実行した女性が多かったから、令和になった今も、自分の母親がそういう女性だった、あるいは周囲やメディアのイメージを通してそれが「当たり前」、と刷り込まれている人は多い。

今は現役世代の既婚女性の大半が、仕事と主婦業を掛け持ちする時代である。限られた時間で何もかも完璧にやるダブルワークには、そもそも無理がある。家族で家事シェアをしていない場合はなおさらだ。人数が多ければ多いほどやることは増えるし、家族が少ない人でも、労働時間が長ければやはり家事に手が回らなくなる。そうした現状を反映し、最近はさまざまな時短術が広まり、家事の省力化を当たり前にしようとするムーブメントも起こっている。それでもなお、プロのサービスを頼む人ですら罪悪感を抱くのは、衝撃的ですらある。

家事は本来、生活を円滑に行い健康的に過ごすために行われるものである。本当は、誰が行うべき、という決まりはない。月1、2回の家事代行サービスはせいぜい月数万円の負担である。そしてその際、お金で買えるのはサービスだけではない。

家事代行サービスを頼むことで、家族とのコミュニケーションの時間を確保できれば、家事シェアでケンカする、あるいは子どもに小言を言う必要がなくなるかもしれない。お互いのこともよく理解でき、将来の離婚や親子の対立を防ぐことにつながる。1人暮らしで清潔な空間を保つことは、メンタルヘルスにとっても重要だろう。新生活を迎えた人が多い今、経済的に無理でなければ、改めて検討してはいかがだろうか。

(文:阿古真理)