強制労働リスク調査、「ABCマート」「しまむら」に最低評価。各社の見解は?

英国の人権団体が世界のアパレル系企業64社を調査。グローバル企業にとって、「ビジネスと人権」は市場競争力の大きな要素となっています。

アジアなどに展開する生産工場で、従業員らの人権が侵害されないよう、企業はきちんと管理しているか――。

英国の人権団体「Know The Chain」(KTC)が世界のアパレル系企業64社を調査したところ、「ABCマート」(本社・東京都渋谷区)と「しまむら」(本社・さいたま市)は、「何の措置も講じていない」という厳しい評価となった。対策の情報公開が不十分だったことが影響した。【小林豪】

「Know The Chain」の調査対象となった日本企業5社
「Know The Chain」の調査対象となった日本企業5社
時事/Getty/asics

ABCマート「関連情報を一切公表していない」

調査は2020年から21年に行われ、5月に結果が公表された。対象に日本企業5社が含まれた。

このうち、ABCマートは「関連情報を一切公表していない」と認定され、5段階で最低の評価となった。

しまむらに関しても、KTCは「綿花を9カ国から調達し、実際に強制労働の申し立てを受けているにもかかわらず、強制労働リスクに対する措置を一切公表していない」と指摘し、同じく最低評価だった。

KTCでは海外の労働者や投資家が把握できるよう、自社サイトに英語で取り組みを開示するよう求めているが、両社とも対応が不十分と判断された。

良品計画も低評価最低限の措置しか講じていない

無印良品を手がける「良品計画」(本社・東京都豊島区)は、下から2番目の「最低限の措置しか講じていない」と評価された。

同社はKTCに対し、中国・新疆ウイグル自治区にある工場について、「徹底した調査を行った結果、重大な問題は確認されていない」と報告したが、KTCは「『強制労働を特定するための調査は新疆では不可能』とする業界他社や監査機関の指摘と矛盾している」と疑問の目を向けている。

「Know The Chain」の報告書(日本版)の表紙
「Know The Chain」の報告書(日本版)の表紙
Know The Chain/ビジネスと人権リソースセンター

ファーストリテイリングとアシックスは「大幅改善」

5社の中で評価が高かったのが、ユニクロを展開する「ファーストリテイリング」(本社・山口市)と、「アシックス」(本社・神戸市)だった。

両社は、5段階で上から2番目の「大半の領域で措置を講じている」とされ、「2018年の評価以降、大幅に改善している」と認定された。 

ファーストリテイリングについて、KTCは「2020年に賃金や社会保険料の差引額について、工場労働者から相談が寄せられたケース」を取り上げ、「(同社は)工場へ確認を行い、工場が差額を支払った。支払いの完了を相談者にも確認し、工場に対して体制強化を要請した」と紹介した。

アシックスについては「タイと日本の工場で働く移民労働者が利用できる苦情処理メカニズムを導入した」とされ、「2020年には労働者から2件の相談があり、ハラスメントと残業に関するものであったことを開示している」と取り組みを評価した。

日本政府は2020年10月、「ビジネスと人権に関する行動計画 」を策定し、企業に対し「国際的に認められた人権等の尊重」を求めている。しかし、人権保護の制度化が進む欧州などに比べ、日本の対応は遅れている。

人権団体「ビジネスと人権リソースセンター」日本リサーチャー代表で、KTCの報告書作成に関わった佐藤暁子弁護士は、「世界的に注目されている企業ほど外部からプレッシャーを受け、それに応える形で取り組みを進めている。その差が5社の評価の違いになったのでは」と指摘する。

評価が低かった企業については「自社の取り組みを検討・開示することはグローバルスタンダードだ。人権の視点を経営に組み込まないと、アパレル産業では持続可能な競争力を維持できない。社内の体制構築に迅速に取り組んでほしい」と語った。

KTCは各企業の取り組み状況を測るうえで、「サプライヤー行動規範」「説明責任」「トレーサビリティとサプライチェーンの透明性」「結社の自由」「苦情処理メカニズム」「救済措置」など10項目を指標に設定している。

 <調査結果に対する5社のコメント

ハフポストは日本企業5社に対し、調査結果に対する見解を聞いた。

日本企業5社の評価とコメント
日本企業5社の評価とコメント
ハフポスト日本版

【ABCマート】

※回答なし

【しまむら】 

サプライチェーンについては、取引開始前に「しまむらサプライヤーCoC(取引行動規範)」について説明し、遵守していることを確認した上で取引を行っています。プライベートブランドの現地工場には社員を派遣し、状況を確認しています。

【良品計画】 

当社の取り組みが不十分と指摘されている点を真摯に受け止め、今後も、適切に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)をはじめとする国際規範や各国の法令を遵守し、サプライチェーンが当社の行動規範及び国際規範に沿っていることを確認するために、人権デュー・ディリジェンスに関する取り組みを強化してまいります。(回答文の抜粋)

【アシックス】

継続した責任ある調達の推進が重要であると再確認いたしました。引き続き改善を重ねて責任ある調達に努めます。今後は、責任ある調達慣行のさらなる推進や工場で働く方々の救済措置の拡充を行います。サプライヤーや工場で働く方々へ負担のかからない調達行動(発注変更など)や、グリーバンス(苦情窓口の設置)の拡充を含めて工場で働く方々の声をさらに聴くことも課題として認識しております。(回答文の抜粋)

【ファーストリテイリング】 

改善の余地ありとされた、トレーサビリティとリスクアセスメント、雇用領域についてもすでに取り組みを進めています。トレーサビリティについては、2022年に全取引先工場の開示を予定しています。雇用領域についても、移住労働者の雇用リスクのある地域の取引先工場向けにガイドラインを作成しています。今後は、こうした取り組みの推進とあわせて、透明性向上のための情報開示を一層進めていきます。(回答文の抜粋)

【訂正して、お詫びいたします 2021/6/16 午後4時00分】

記事中のアシックスの評価に誤りがありました。
元の記事では、アシックスの評価を「一部の領域で措置を講じている」とし、「5段階で3番目」と記載していました。正しくは、同社の評価は「大半の領域で措置を講じている」で、「5段階で上から2番目」でした。
元資料とした「Know The Chain」の報告書(日本語版)の該当箇所の一部に誤訳があったと連絡があり、記事と画像を訂正させていただきました。読者のみなさま、関係者のみなさまにご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。

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