「仕事 できない」を検索し発達障害に気づいた私はタスク管理で人生を救われた

なぜ自分はうまく仕事がこなせないのだろう。「仕事 できない」で検索すると「発達障害」という言葉に行き当たった━━。『要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』(共著)著者の小鳥遊さんが「タスク管理」にたどり着くまでを振り返ります。
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私は、発達障害の1つADHD(注意欠如・多動症)の診断を十数年前に受けました。

「抜け漏れ・忘れ」「マルチタスク苦手」「先送り癖」「自責傾向」「段取り下手」といった、一言でいえば「仕事をサクサクこなせないタイプ」だと言えます。

しかし、そんな私がある手法と出会ったことで、毎日落ち着いて仕事がこなせるようになりました。その手法とは「タスク管理」です。

それは一体どのようなものなのか━━。でもその前に、まずは私が「タスク管理」にたどり着くまでの経緯について、書こうと思います。

「仕事 できない」で検索すると…

私は大学を卒業して、手に職を付けようと司法書士試験の受験勉強を数年間しました。勉強を続けながら実務経験を積もうと、司法書士事務所で事務員のアルバイトを始めました。ところが、仕事がうまくいかずクビになってしまいます。その次にアルバイトをした不動産会社でも同様でした。

友人は社会人生活を謳歌しているのに、なぜ自分はダメなんだろうと思い、「仕事 できない」「仕事 忘れる」といったウェブ検索をしてみました。すると「発達障害」という言葉に行き当たりました。「発達障害ってなんだろう?」と調べてみると、まさに自分にあてはまるような特性のオンパレード。検査を受けたところ、ADHDの診断が下りました。

2度の休職を経て発達障害と向き合う

その後、司法書士の道はあきらめて就職活動をし、障害者雇用で勤め始めます。「こんな自分を雇ってくれるのだから頑張らないと」と張り切って勤めましたが、ミスをしがちな自分を受け入れることができず、休職を余儀なくされます。その後、一般雇用へ転職しますが、ここでも同じ経緯でまた休職してしまいます。

2度目の休職で、やっと自分の障害と向き合うことができました。仕事の抜け漏れがあるなら、忘れても大丈夫なように記録をする。臨機応変な対応ができないなら、あらかじめ段取りを書き出す。先送りして締切を破りがちなら、途中段階での小さな締切も含めて把握する。こういった工夫をエクセルに落とし込んでいきました。

タスク管理に人生を救われる

こうしてできあがったエクセルの自作ツールを使うにつれ、以前の自分とは格段に仕事ができるようになったのを実感しました。このような手法は他の人もやっているのではないかと調べてみると、どうやらこれが「タスク管理」というものだと分かりました。

私の手法は、タスク管理の手法として世界で最も有名なものの一つ、「GTD(Getting Things Done)」に似ていました。発達障害の特性をカバーするための手法が、実はエリートビジネスマンも取り入れている仕事術と共通している。このときの驚きは今でも忘れられません。

発達障害の特性で仕事がうまくいかない人でも、タスク管理を利用すれば優秀なあの人と同じ土俵に立てる。仕事の要領は意識的に作ることができる。そう思うと、自分と同じような特性で苦しんでいる人に広めたいと思うようになりました。

タスク管理は必ず武器になる

タスク管理を始める以前、障害者を対象とした合同面接会に参加したときのこと。事務職で、一般雇用と同程度の待遇の求人への応募を考えていました。しかし、募集されている求人の多くは、自分の求めるものとはかけ離れていました。その違いに失望し、帰りの電車の中で悔しくて泣いてしまったのを今でも覚えています。

発達障害の特性を持つ方の中には、私と同じように悔しい思いをしている人もいるはずです。

会社には行ける、けれども仕事は辛い。そういう層は、サポートされるべき存在として可視化されにくい。明らかに支援の手が必要であれば福祉の支援を受けることができますし、支援なしで大丈夫な方はそのままでよいのです。しかし、その中間で辛い思いをしている人は、自分でどうにかしなければいけません。

タスク管理はそんな状況を打破する武器になります。タスク管理をする手間は少しばかりかかりますが、仕事がうまくいかなくて辛い思いをするのと比べたら大したことありません。

精神論ではなく、実践的なもの

私なりの定義になりますが、「タスク管理」とは「仕事を実行しやすいようにあらかじめやるべき仕事(=タスク)を整理しておく技術」です。

着替えやすいように服を下着・上着・ズボンと種類別にタンスにしまうように、仕事も一定のルールにしたがって区分けして整理する、というイメージです。

大切なのは、「頑張る」とか「気を付ける」といった精神論的なものではなく、「やり方」を変えるという具体的・実践的なものだということ。不器用な自分はそのままに、やり方次第で仕事の要領を「作って」しまおうという考え方にもとづいています。

1つでも当てはまれば、役に立ちます

・仕事をつい先送りしてしまう

・抜け漏れや物忘れがある

・ささいなミスも重大に受け取ったり、他人のミスを自分のせいだと感じる

・1つの仕事に集中できず、結果どの仕事も完結できない

・デスクの上やパソコンのデスクトップが整理できない

発達障害の有無に関わらず、これらの1つでも共感されたなら、参考になるのではないかと思います。

これらは、タスク管理を始める以前の私そのものです。過去の私に「あるある」と共感したなら、タスク管理で仕事の苦手意識をカバーできる可能性が非常に高いと考えています。

タスク管理は、私の仕事に関する悩みの大部分を解消してくれました。この記事をお読みの方の中には、もしかしたら私と同じような悩みを今まさに抱えている方がいるかもしれません。

これから始まる一連の記事は、そんな「同志」のみなさんに送るエールです。次回は具体的な仕事の悩みに対してタスク管理がどう役立つのかをお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

(文:小鳥遊 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)