教員の残業「100時間超え」「休憩時間0分」も約半数。「準備不足のまま授業に」悲鳴も【名古屋大学調査】

文部科学省が定める時間外勤務の上限の目安45時間を大幅に超える結果となった

全国の公立小中学校で働く教員の平均残業時間が1カ月で100時間以上に上ることが5月13日、名古屋大学の調査で分かった。

残業時間には、自宅での「持ち帰り仕事」や休憩時間中に行った業務、残業時間を「過少申告」した分など、文部科学省の調査では含まれない「見えない残業時間」も含み、教員の勤務実態に近い数字が出たとされる。

調査結果を発表し、記者会見する名古屋大の内田良教授(中央)ら(5月13日、東京都内)
調査結果を発表し、記者会見する名古屋大の内田良教授(中央)ら(5月13日、東京都内)
ハフポスト日本版

同日、東京都内で記者会見をした名古屋大学の内田良教授(教育社会学)は「教員の長時間労働の影響は、子どもに及ぶ。日本社会の問題だと理解しなくてはならない」と強調した。

国の上限「月45時間」大幅に上回る

内田教授らは2021年11月20〜28日、20〜50代の公立小中学校で働く教員924人にインターネット上でアンケート調査を実施した。管理職は含まず、小中学校でおよそ半々の割合で回答を得た。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せていた時期で、コロナ対策にかかわる業務負担の影響は比較的小さいという。

1カ月あたりの残業時間の平均は105時間だった。小学校で98時間、中学校で114時間に上り、160時間以上に及ぶ教員も1割以上含まれた。

1日の休憩時間の平均は、小学校で9.4分、中学校で14.6分だった。「0分」と回答した教員は小中ともに約5割を占めた。所定の45分以上の休憩を取っている教員は小学校で5.6%、中学校で11.8%にとどまった。

文部科学省は、公立校で勤める教員の勤務時間についてガイドラインを定め、時間外勤務の上限の目安を1カ月あたり45時間、1年間あたり360時間などと設定している。内田教授らの調査では、この基準を大幅に上回ると見込まれる長時間労働が目立つ結果となった。

公立校で勤める教員の給与について定めた法律では、時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない代わりに月給の4%を支給することとしている。残業時間に見合った残業代が支払われない実態は、「定額働かせ放題」などと揶揄されてきた。

勤務時間「過少申告」の要求も

労働時間が不可視化される実態も垣間見られた。

1週間あたりの残業時間が40〜59時間の小学校教員の3人に1人(32.7%)、中学校教員の4人に1人(24.4%)が、「この2年ほどの間に、書類上の勤務時間数を少なく書き換えるように求められたことがある」と答えた。

調査で残業時間の「過少申告」についても調べたことを説明する内田教授
調査で残業時間の「過少申告」についても調べたことを説明する内田教授
ハフポスト日本版

記者会見に臨んだ現役の公立高校教員で名古屋大学大学院生の西村祐二さんは「現場では残業時間を管理する責任者が明確でなく、時間管理を教員本人に任せていることもあるため、過少申告しやすい状況が生まれている」と指摘する。

「いじめ早期発見に不安」「準備不足のまま授業」

教員の長時間労働のしわ寄せは、子どもに向かう。

「いじめを早期発見できているか不安だ」「準備不足のまま授業に臨んでいる」とした教員の割合は、長時間労働であるほど多くなる傾向だった。

1週間あたりの残業時間が40〜59時間の教員のうち、「いじめの早期発見ができているか不安」と答えたのは81.9%、「授業準備不足のまま授業に臨んでいる」とした回答者は70.1%に上った。

内田教授は「教員の専門分野以外は外部人材に任せられるようにするなど、学校現場に人員を増やすための予算を確保していかなくてはならない」と話す。

内田教授や西村さんは、教員の労働環境を改善するための署名を呼びかけている。

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