SDGs「まず知る」段階はもう終わり。「社会を良くしたいと思っている人」に足りないものとは?

大手企業の新規事業から起業家やベンチャーまで、ソーシャルグッドなビジネスに伴走してきた大畑慎治さんが語る、SDGsを本当に社会実装するために必要なこと。

「“まずは知ることから始めよう”という『SDGs 1.0』は、もう十分。今足りないのはSDGsの社会実装です」

数々のソーシャルグッドな新規事業や起業家に伴走してきた大畑慎治さんは、こう語る。

Makaira Art&Design代表/早稲田大学ビジネススクール ソーシャルイノベーション講師の大畑慎治さん
Makaira Art&Design代表/早稲田大学ビジネススクール ソーシャルイノベーション講師の大畑慎治さん
Shu Maeda/ハフポスト日本版

SDGsが採択されてから7年。2030年のゴールまで、もうすぐ折り返し地点だ。

IGESとGCNJの調査によると、企業や団体のSDGsの認知度は、従業員で77.1%、中間管理職で82.1%と、裾野まで広がった。一方、SDGsに実際に取り組んでいる企業は39.7%、取り組んでいない企業が半数というデータもある。

「社会実装は、新規事業の立ち上げに似ていると思います。“一発一中”はない。SDGsを本当に社会実装していくためには、数々の失敗や試行錯誤をする期間が必要です

どうすればSDGsの社会実装は加速していくのか。大畑さんが提唱する次の段階、「SDGs 2.0」に迫った。

SDGsを“リアルな生活”に実装するためには…

SDGsを社会実装するステークホルダーは、政府、企業、生活者の3つだと大畑さんはいう。

「政府の仕事は“環境を整備”すること。人々の日常生活を作っているのはビジネスです。企業の商品やサービスが変わらないと、“リアルな生活”は変わらない。そして生活者の行動が変わると、企業も変わる。鶏が先か卵が先かですが、どちらも必要です」

大畑慎治さん
大畑慎治さん
Shu Maeda/ハフポスト日本版

2015年にSDGsが採択されてから、多くの企業がSDGsにつながる目標を掲げ、行動してきた。大手企業が既存のビジネスの中で、例えば環境負荷を減らしたり、商品を見直したりすることはインパクトが大きい。

だた、SDGsの社会実装を加速していくためには足りないピースがあると大畑さんは指摘する。

「一つは、ソーシャルグッドな事業を担う人の“新しい変化”です。また、大手企業のビジネスとは二律背反することでも、社会全体としては必要な場合もあります。そこを担うソーシャルベンチャーや社会起業家も足りていません」

「社会を良くしたい」という人に足りないもの

企業やNPOも含めて、社会を良くしたい、というマインドを持つ人は増えている。その人たちがちゃんと活躍できれば、世の中はもっと良くなるという。

「でも、社会を良くしたいと思っている人で、シンプルにマーケティングができていない人は意外と多いです」

特に、起業家にとって商流と認知の獲得は大きな壁。そこをサポートする必要があると大畑さんは考えている。

ソーシャルグッドなことは、ビジネスにしていくことでサステナブルになるんです。ビジネスにするということは、買ってくれる人がいて、商品やサービスを提供し続けられる状態をつくるということですから」

大畑慎治さん
大畑慎治さん
Shu Maeda/ハフポスト日本版

SDGsの社会実装を加速するためには、ソーシャルグッドなマインドをもつ仲間を繋ぎ、活躍するためのスキルを提供し、思いをビジネスの形にするためのサポートが必要だ。

大畑さんが10月に開設するスクール「THE SOCIAL GOOD ACADEMIA」には、そんな思いが込められている。

ソーシャルグッドを社会実装する、をコンセプトにしたプログラム「THE SOCIAL GOOD ACADEMIA」
ソーシャルグッドを社会実装する、をコンセプトにしたプログラム「THE SOCIAL GOOD ACADEMIA」
提供写真

SDGsを学ぶスクールはたくさんあるけれど…

今、SDGsやソーシャルグッドビジネスに関するセミナーやスクールは山ほどある。

だが、「THE SOCIAL GOOD ACADEMIA」は「社会実装」がコンセプト。「自分でテーマやアイデアを持っている人が、実際に企画を作り、PDCAを回していくスクール」だという。

「世の中に説明するときにロジックはもちろん大事ですが、直感でまずは動いたほうが“自分ごと”として力強く動けます。そして直感は間違っていることもあるので、動いてみて、現場をみる。間違えながらPDCAを回していくと、実感が湧いてさらに前に進めます」

大畑さん率いる運営のMakaira Art&Design(以下、MAD)は、参加者のアイディアを社会実装するために“伴走”する。さらに講師陣は、ソーシャルグッドなビジネスを実践してきた総勢15人以上の先輩たちだ。

ソーシャルグッドなビジネスを実践してきた講師陣
ソーシャルグッドなビジネスを実践してきた講師陣
提供写真

思いをビジネスにするために、必要なことはたくさんある。まず社会課題を知ること、ビジネスモデルの作り方、マーケティング…。いくら中身が良くても結局パッケージで買われたりもする。クリエイティブやデザインの力も重要だ。

また、あるべき社会を実現するためにビジネスを考えていくと、現状の法律の範囲内ではできないことも出てくるという。「既存の枠に収まるのではなく、時に法律を変えながら物事をどう進めて行けるのかなど、現場で実際にビジネスをしている講師陣ならではのノウハウをお伝えします」と大畑さんは話す。

「企業の研究開発って、競合他社も同じような課題を解決するためにやっているのに、そのノウハウの多くは外に出ませんよね。しかし気候危機をはじめ、社会課題の多くは“待ったなし”。ノウハウを共有しないなんて言ってられない状況です」

一部だけが儲かるやり方ではなく、ノウハウを共有しながら課題を解決しないと間に合わない。そんな思いのもと集まった講師陣と共に開校するスクールと、受講する一人一人の力が、SDGsの社会実装を加速させるはずだ。

ソーシャルグッドの社会実装を目的にした「THE SOCIAL GOOD ACADEMIA」は、売上の一部をソーシャルアントレプレナーの社会実装支援に充てる。詳細はこちら

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