「陰部に顔を押し当てられた」ピクシブ社、SOGIハラ認め全額賠償の意向。「深く傷つけてしまったことをお詫び」

ピクシブ社は「原告の請求内容に対し、全面的に責任を認め、認諾した」と表明。一方、元上司は事実関係について一部争う内容の答弁書を出し、原告側に請求棄却を求めた。
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ピクシブ株式会社公式サイト

イラストコミュニケーションサービス『pixiv』を運営するピクシブ株式会社に勤めるトランスジェンダー女性の社員が、職場で継続的にハラスメントを受けたなどとして、同社と元上司の男性に計約555万円の損害賠償などを求めた訴訟の1回口頭弁論が9月8日、東京地裁(山田悠一郎裁判官)であった。

ピクシブ社は争わず、原告側の請求を全面的に認める「認諾」の手続きを取り、請求額の満額を支払う意向を示した。一方で元上司は事実関係について一部争う内容の答弁書を出し、原告側に請求棄却を求めた。

原告代理人によると、同社との係争は終了する見込み。元上司に対しては、休職期間中の逸失利益や追加の治療費などの賠償請求を追加し、引き続き争う方針だという。

 

◆どんな裁判なのか

訴状によると、原告の女性は2018年4月にピクシブに入社。入社直後から、元上司に性交渉の回数などを聞かれたほか、陰部に顔を押し当てられたり、「なんで女装してんねん。アホかい。おまえ男やろがい」といった言葉をかけられたりするなどのハラスメントを受けた、としている。

原告は、社内のセクハラ窓口の担当弁護士に相談。会社側からは、元上司の男性について、原告と同じ部署にしないことや社内の飲み会に参加させないといった措置を約束されたが、反故にされたという。心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの診断を受け、「職場環境配慮義務を違反している」として、5月に提訴した。

性的指向や性自認に関するハラスメントは「SOGIハラスメント」と呼ばれる。2020年6月の改正パワハラ防止法の施行により、SOGIに関する企業の対応が法律上の義務となった

原告の女性は提訴時の会見で、「ハラスメントに悩むLGBTQ当事者も多い」と指摘。裁判への思いについて、「ハラスメントという言葉で、嫌がらせの重みが和らいでしまっていると感じることがあります。その人の性を馬鹿にしたり、下着に手を入れたりという行為はやってはいけないことだとの認識が広がってほしい」と語っていた

 

◆「声を上げてくれた人たちのおかげ」

ピクシブ社は9月8日に公式ページで、「弊社は原告の請求内容に対し、全面的に責任を認め、認諾いたしました」と発表。「今後同様の事案の発生を招かないよう、徹底したハラスメント予防を行い、健全な組織づくりに努めてまいります」と表明した。

この日の弁論後、原告代理人の仲岡しゅん弁護士は、「ピクシブ社はハラスメント予防が不十分だったほか、原告が受けた行為が人格を深く傷つける許されない行いだったことを認め、謝罪しています」と説明。「遅きに失したとはいえ、LGBTをはじめとする多様な人の人権や、セクシュアルハラスメントに対する取り組みについて改善が見られ、前向きに受け止めています」と語った。

訴訟が報道されると、インターネット上ではピクシブ社に対する批判が集まった。仲岡弁護士は、訴訟に発展するまでピクシブ社からは誠実な対応が見られなかったと指摘した上で、「pixivのユーザーの方々をはじめ、ピクシブ社に適切な対応を行なうよう多くの声を上げてくださった皆様のおかげでもあり、深く感謝しています」とした。

原告の女性も「SNSでは、私の思いを代弁してくれるような投稿が多く、とても感謝しています」とした上で、「声を上げなければ現状はなかなか変わらないと思うものの、ハードルも高いと感じています。この訴訟が、今苦しい思いをしている方の力になれればと思っています」と話した。

また原告側は同日、声明文を発表した。全文は以下のとおり。

<声明全文>

本年5月27日に、ピクシブ社従業員である原告が、職場上司及び雇用主であるピクシブ社を被告として、セクシュアルハラスメントに対する損害賠償請求訴訟を提起した件につきまして、ご報告差し上げます。

本日、被告ピクシブ社側からは、原告の請求を認諾する旨の答弁がなされると共に、会社としての責任を認め、謝罪する旨が表明されました。

また原告は、訴訟外でもピクシブ社と対話を重ね、セクシュアルハラスメントに関する社内での対応が不適切であったことについて、会社代表者から謝罪を受けると共に、再発防止策についても真摯な取り組みをしていく旨、今後の方針が示されました。

他方で、セクシュアルハラスメント加害者である当該上司本人との関係における訴訟は継続し、今後の展開については、現時点では未知数な部分もあります。もっとも、少なくともピクシブ社からは、当該上司に対して、会社としてできる限りの対応を行なうものと聞き及んでおります。

遅きに失したとはいえ、ピクシブ社では本件訴訟を通じて、セクシュアルハラスメント対策、そしてLGBTをはじめとする多様な人々との共生に向けた取り組みについて、大きな改善が見られたものと、私どもは前向きに受け止めております。

このような進展が得られたのも、本件について適切な報道をしてくださった報道陣の皆様、またピクシブ社内で原告を支えてくださった同僚の仲間たち、そして何より、ピクシブ社に適切な対応を行なうよう多くの声を上げてくださったpixivユーザーの皆様方、お一人お一人のおかげであると、私どもは深く感謝しております。

原告は現在、これまで受けた精神的苦痛を癒しながら、同僚たちと共にピクシブ社で勤務しており、これまでいただいたpixivユーザーの皆様の支援の声は、原告にも確かに届いております。

この度は、報道陣の皆様、そしてpixivユーザーの皆様に、深くお礼を申し上げます。ありがとうございました。

<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>

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