子育て・教育にかかる費用、調べる方法を専門家に聞いてみた。行政の支援制度を調べるにはマイナポータルが便利

政府が「異次元の少子化対策」をうたい、子育て支援に注目が集まっています。出産から教育にかかるお金まで、知っておきたい基礎知識について専門家、横川楓さんに聞きました

「異次元の少子化対策」ーー。政府が子育て支援の充実に力を入れると宣言するなか、いろんな自治体も続々と独自支援策を打ち出している。子育て支援は妊娠、出産、育児だけでなく、安心して産もうと思えるのに十分な賃金を得られているなどまで対象となる課題は幅広い。

そもそもどんなことにお金がかかるのか。どんな支援が用意されているのか。働く私たちが知っておきたい基礎知識を、お金の専門家で「日本金融教育推進協会」代表理事の横川楓さんに聞きました。

横川楓さん

【目次】

  1. 「異次元の少子化対策」とは?

  2. 子育て費用、どれくらいかかる?

  3. どう備えればいい?

政府は「異次元の少子化対策」、自治体も独自策続々

岸田文雄首相が年明けに打ち出してから話題になっている「異次元の少子化対策」。支援策を大幅に拡充する政府の動きを踏まえ、現金給付などを中心とした独自の子育て支援策を打ち出す自治体も続々と出てきている。

政府による拡充の一つが、出産一時金の引き上げだ。出産にかかる経済的な負担を軽減するために、40万円が支給されている。これが2023年4月に50万円に増額される。

ただ、産む地域や病院によって出産にかかる費用は幅があるため、増額されたからといって必ずしもすべてをまかなえるということでもなさそうだ。都内に住む女性が、自宅から徒歩30分圏内で無痛分娩という希望の産院で出産したところ、総額91万円かかったという例もある。横川さんは「東京都と地方ではサービスが同じでも、金額が異なる場合もある。費用面を考えて、里帰り出産を検討する人もいる」と指摘する。

自治体も新たにいろんな支援策を打ち出してきている。0〜18歳のすべての子供に月5000円の給付、第2子の保育料の無償化という都の取り組みが注目を集めたが、そのほかの自治体も子育て支援の強化に動いている。

朝日新聞によると、2023年度予算案に祝い金やクーポンなどの給付を盛り込むところが相次ぎ、「自治体のアピール合戦の様相」さえも出てきているという。記事では、入学祝い金として小1に5万円、中1に10万円(東京都新宿区)、子育て世帯に子供1人あたり10キロ相当のお米券(長崎県)など自治体による様々な独自の取り組みを紹介している。毎日新聞によると、東京都中野区では両親が離婚調停中の子供に10万円を支給するという。

「日本の子ども・子育て支援は国際的に低水準」との指摘もあり、少子化対策の整備を求める声は強まっている。政府の「こども政策の推進に係る有識者会議」に出された資料によると、OECD(経済協力開発機構)のまとめでは子ども・子育て支援に対する公的支出がGDP(国内総生産)に占める割合は、OECD平均が2.34%なのに対し、日本は1.79%にとどまると指摘している。

子育て費用、どれくらいかかる?

子供を1人産んで育てるには、経済的な負担が小さくない。文部科学省の調査によると、幼稚園から高校まですべて公立に通ったとして計約570万円、すべて私立となると計約1800万円にまで跳ね上がる。

幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間の学習費総額/文部科学省
幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間の学習費総額/文部科学省
ハフポスト日本版

横川さんは「自分にかかったお金を試算すること」を勧めます。「子育て中の人に限らず、塾や習い事など自分にかかったお金を計算してみることで、1人の人生にどれぐらいかかるかわかり、現実味が感じられます」と話す。

さらに、出産、子育てでは出費が増える一方で、収入は減るということも課題となる。会社員であれば、会社を休んでいる間の支援として、加入している健康保険組合から出産手当金、雇用保険から育児休業給付金がもらえる。育休給付金は、育休を取り始めてから6ヶ月間は手取りベースで休業前の約8割の賃金が支給される。

横川さんは「支援があるとは言え、全額ではありません。入ってくるお金が減るということをあらかじめ認識しておく必要があります」と注意を呼びかける。

自営業やフリーランスなど働いていても健康保険組合や雇用保険に入っていない場合は、出産手当金や育休給付金がもらえないことも問題視している。横川さんは「お母さん1人が働けないと、家庭に入ってくるお金がガクッと減ってしまう。自助努力では限界がある部分です。少子化対策のためにも、こういうところの保証を国として厚くすることが必要です」と指摘する。

実際、働き方は多様化が進んできており、フリーランスとして働く人も急速に増えてきている。横川さんは「フリーランス、自営業、個人事業主として働く人も増えている時代なのに、会社員の人と受けられる経済的支援が違えば、そのせいでお金が不安で子供を産めないと思う人もいるはずです」。

どう備えればいい?

「まず、資金計画をつくることが大切です」と横川さんは強調する。家など大きな買い物をするときと同じ要領だという。資金計画ができれば、預貯金を中心に備えていく。子供の教育費を準備する手段として「学資保険」もあるが、契約途中で解約すると元本割れが生じる可能性があるなど損失につながることもあるため注意が必要だという。

計画的に貯めたいけど自信がないという人は、定期貯金や定期預金という選択肢もある。急な物入りで現金が必要になったときでもこれであれば元本割れが起きることはない。

長期的に積み立てていきたい場合は、2024年以降に制度が拡充されるNISA(少額投資非課税制度)を使った資産運用も選択肢の一つとなる。

その上で、行政などが提供している支援制度にどんなものがあるか、その中でどの制度が活用できるかを知ることが大事だという。 その際に便利なのが、政府が運営し、マイナンバーカードで行政手続きができるウェブサイト「マイナポータル」だ。

マイナポータルのウェブサイト
マイナポータルのウェブサイト
ハフポスト日本版

「手続の検索・電子申請」を開くと、住んでいる自治体などが提供している制度について、「妊娠・出産」「子育て」「引越し・住まい」「高齢者・介護」「ご不幸」「選挙」「健康・医療」のカテゴリー別に検索することができる。

横川さんは「お金があると子育てにおいて選択肢が増えることはありますが、お金がすべてだとは思いません。頼れる支援、使える支援がたくさんあるので、それらの制度を知って活用するリテラシーを身につけることが大事だ」。

(この記事は、2023年1月23日に開催されたTwitter Spaces「 #お金を話そう」の内容を一部加筆・編集しました)

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【次回予告】「基礎から学べるNISA」について解説してもらいます

2月27日(月)午後8時から、Twitter Spaces「 #お金を話そう」で「基礎から学べるNISA」をテーマに横川さんに解説してもらいます。投資って何?というところからNISAの仕組みまでできるだけ簡単に話してもらいます。

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