エルフ荒川さんは「自分なんて」と思う自分も認める。自己肯定感が低いギャル芸人は先輩のある言葉に救われた

「ギャルしか勝たん」「ハッシュターグ!」のフレーズで人気急上昇中のお笑いコンビ「エルフ」の荒川さん。心からギャルを愛し、全力でギャルを生きる理由を聞きました
エルフ荒川さん
エルフ荒川さん
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

「ギャルしか勝たん」「ハッシュターグ!」

キラキラしたメイクとド派手な服装でそんなフレーズを叫ぶギャル芸人・エルフ荒川さん。

相方・はるさんとのコンビで人気急上昇中のお笑い芸人だ。バラエティ番組での元気いっぱいの姿やSNSでの発信も話題を呼んでいる。

ミニスカートにルーズソックス、アームウォーマーといったY2K(2000年代)ファッションがトレンドとなる中、その文化を作り上げたギャルたちとともに、自分に正直に生きる「ギャルマインド」も注目を集めている。全力で生きるギャルの1人である荒川さんだが、自信が持てない自分と向き合ってきた一面もある。

荒川さんによる等身大の言葉を集めた「日めくり まいにち、GAL!」が3月1日に発売されるのに合わせて、愛するギャルについてとお笑いへの思いを聞いた。

いつも全力。それがギャル

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

━━荒川さんとギャルとの出会いについて教えてください。いつからギャルになったのでしょう?

「生まれたときからギャル」と言わせていただいています。周りの友達も先輩・後輩もみんなギャルやったから、他をあんまり知らないというのもありますね。昔から派手で可愛くてキラキラしたものが大好きでした。

━━荒川さんにとってギャルってなんですか?

自分が一番好きな姿かなと思ってます。自分の好きな姿になりたいっていう気持ちがギャルというか…。今は「平成ギャル」が注目されていますけど、当時のメイクやファッションがずっと好きなんです。

マインドで言うと、ギャルって全力なんです。友達のギャルやテレビに出ているギャルを私が好きな理由も、全力だから。悲しい時も全力ですし、楽しい時も全力。友達を思い出そうとすると、全力で走ってる姿とか、全力で笑っている姿しか出てこないんです。仕事や子育てに全力な子、オタ活に全力な子、毎日全力で生きている子たちです。

━━SNSで発信しているギャルの「あるあるシリーズ」が人気ですね。

もともとはギャルの友達の真似をしてあげていただけなんです。コロナ禍でみんなに会われへんくなったからやり始めました。さすがに(ネタが)300、400を超えてきて、もうないわ、どうしようみたいな感じです。

「ギャル」を表現できるようになるまでの苦悩

JUN TSUBOIKE / HUFFPOST JAPAN

━━「高校では自分が嫌いだった」と日めくりに書いていて、ちょっと意外に感じました。

中学校までは何でも頑張ろうっていう感じだったけど、高校で全部どうでもいいやみたいになって…。

失恋もして、自分のことが本当に嫌いで。かといって努力もせえへんし、みたいな感じで。元々自分がそんなに好きじゃないんで、「みんなの方が可愛い」とかいろいろ思っていました。

━━そんな高校時代を過ごす中で、どうして卒業後はNSC(吉本興業が運営する芸人の養成所)に入ろうと思ったのですか?

大阪に住んでいたのでお笑いは身近でした。私が入れる世界ではないと思っていたんですけど、学校(養成所)があるんやって高校生の時に知って。

周りには「無理に決まってるやろ」と言う人もいました。信じていない友達もいたと思います。「とりあえずやってみたら」と応援してくれたのがお母さんでした。

NSCの同期は、年齢も違うし、めっちゃ賢い子もおるし、色々です。でもみんなお笑いが好きっていうところは同じで、その環境がすごい楽しかったです。

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

━━「ギャル」としての自然体の自分を芸人として出せるようになるには、苦労があったそうですね。

最初は漫才しか知らなかったので、自分の中の芸人のイメージもあって「シャツ」を着て舞台に出たこともありましたね。ギャルとかあかんのかなと思っていました。

でも、蛙亭のイワクラさんとか「そのままの荒川がおもろいやん」って言ってくれる先輩がいて「自分でいいんや」と少しずつ気づいていった感じでした。

あるライブで、私がこんな見た目して、しっかり突っ込んでいる方がなんか変かなって思って、ちょっと自分らしいことを言ってみようと思ったらウケたんです。「これでいこう」って思えました。

━━今では、ファッションやメイクも自分が好きなものを大事にしていますね。

自分が全然かわいいと思っていない服で過ごしていると、すっごい暗い気持ちになるんですよ。逆に好きな服を着ていたらその日1日が楽しくなる。周りに何を言われても気にしないです。好きなものを身につけていられたら、強くなれたり自分を好きになれたりっていうのはあるかもしれないです。

ただ、「これじゃなきゃ嫌」と思い過ぎてしまうので、もうちょっと楽になりたいなとは思います。「もう着る服ないやん」みたいになるんですよ(笑)

自己肯定感について「日本でいちばん考えてるギャル」

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

━━日めくりには「自称あたしは自己肯定感について日本でいちばん考えてるギャル」とありました。自己肯定感についてどんなことを考えてきたんですか?

自分がすっごい自己肯定感が低いんですよ。それなのに「イエーイ」とか言っていたら、怖いじゃないですか?(笑)そのギャップにすごい悩んだ時期があったんですよ。

「イエーイ」っていう自分も嘘じゃないんです。その自分も好きやし。でもそういうことを言う人って自己肯定感が高い人っていうイメージがあって。「高いフリをした方がいいのかな」と考えたこともありました。

自己肯定感が低い人の理由をいろいろ調べてみたこともありました。でも褒められて育った子もいれば、否定されて育った子もいる。それは自分では変えられんやんって思って。

自己肯定感が高い方がいいかもしれないんですけど、私は低くてもいいやって。何かに挑戦しようとしても周りから「そんなん無理や」って言われる人の気持ちが私にはわかる。それはいいことやんって。

「自分なんて」って思うこともある自分を認める。私はそれでいいやって思いました。

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

━━SNSで、いろんな人の相談に答えているんですよね?大変なことでは?

恋愛や勉強のこと、仕事や友達関係のことも多いですね。

何よりもみなさん凄い人たちだよというのは伝えたいと思っています。私は毎日同じ場所で同じ人と働く職業じゃないので、毎日同じ場所に行くっていうことは凄いことだし、学校や会社がつらいと本当につらいと思うんですよ。

私には全部わかりきれないけど、できるだけ明るく(アドバイスを)言うとか、それができなくても一緒に笑うみたいなことはできるんかなと思っています。どこまで答えられるか、自分も悩み中なんです。本当は全部一人一人答えたいんですけど…

私自身は、友達にずっと相談する側でした。恋愛の相談とかは一生喋っているんですけど、誰にも言えないような悩みもあります。

私が「お笑い最高」って思うのは、全部笑いに変えてくれるじゃないですか。それが最高と思ってお笑いをやっているので、いまは動画というツールでも伝えられるので、(発信方法が)広がっていった感じです。

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

━━コンビでは2022年に女性芸人ナンバーワンを決める「THE W」の決勝に進出。ピン芸人としても「R-1グランプリ」の準決勝に進出、3月3日に敗者復活ステージを控えていますね。今後の芸人としての目標を教えてください。

2人でやる漫才も、ピンネタもそれぞれ違う楽しさがあると思うので、両方勉強中です。ネタ作りは笑けるぐらい大変ですが。賞レースも、テレビも全部がんばりたいです。

(取材・文:澤木香織@KaoriSawaki/写真・動画:坪池順@juntsuboike

▼作品情報

エルフ・荒川の日めくり まいにち、GAL!』(ヨシモトブックス)、2023年3月1日発売、定価1200円+税、31日分16枚綴

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

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