そのメンタルヘルスの不調、更年期が原因かも。緩和する6つのポイント

ほてりや寝汗だけではない。更年期はメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか。
更年期はメンタルヘルスにも影響する(イメージ画像)
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更年期はメンタルヘルスにも影響する(イメージ画像)

もしあなたの気分の変動が、いつものストレスや不安というよりは、酷い悪夢の始まりかのように感じ、加えて不眠やいつもより暑く感じるなどの症状があるのならーー。

それは更年期の始まりかもしれない。

月経が来ない状態が12カ月続くと、人は閉経したとされる。そしてその閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間は「更年期」は呼ばれる。

更年期は通常40歳以降に始まる(それ以前のこともある)が、卵巣機能とホルモンレベルの両方が変化するため、様々な症状が現れることがある。

ニューヨークの産婦人科医アナ・バービエリ氏はハフポストUS版に、「一般的に、この時期は症状が予想できず、驚き混乱することが多いでしょう。ホルモンの変化や症状は、順々に起こるものではないのです」と話す。

更年期の初期にはまだ生理が定期的に来る人もおり、気分的な症状(不安、イライラ、涙)をストレスや睡眠不足などのせいにしがちだ。しかし、人に何か言われても頭が真っ白になったり、何のために特定の場所に来たのか忘れたりするなど、認知機能が低下し精神的な不調が続くと、自分に何が起こっているのか分からず不安やパニックを感じるようになる。


【更年期とメンタルヘルスの関連性】

20代と30代はホルモンに一定の増減がある。更年期を過ぎるとホルモンは減少するものの安定している。

一方更年期は、一般的に「女性ホルモン」と呼ばれるエストロゲンとプロゲステロンのレベルが大きく変動する時期。出生時に女性だった人は分泌量の少ない「男性ホルモン」のテストステロンもゆっくり低下していく。

つまり、「ホルモンはジェットコースターで、その他すべての部分がそれに振り回されている状況です」とバービエリ氏は語る。

こうしたホルモンの変動は、PMS症状の悪化(胸の張りやニキビ)、生理不順(重さや頻度など)、不眠やほてり、寝汗などの症状を誘発する。他にも、うつや不安、イライラ、気分の落ち込みや頭がぼんやりするなど、精神的な症状の原因の一つとも考えられている。

仕組みはこうだ。脳の各部位には様々なホルモン受容体があり、これらの受容体はホルモンからの指示を受け、神経伝達物質と呼ばれる物質を使って体の細胞に伝達する。

エストロゲンのレベルが低下すると、最適に機能するためにエストロゲンが必要な身体的プロセスも低下するのは当然で、メンタルヘルスにおいて直接的(脳)と間接的(身体)な両方の面で影響を与える可能性がある。

間接的な影響としてよくあるのは、睡眠不足だ。これは、エストロゲンが減少➡︎体温を調節する視床下部が敏感になる➡︎体を冷やすためにほてりや寝汗を引き起こす➡︎眠りが浅くなる➡︎ストレスや炎症反応が連鎖的に起こる➡︎メンタルヘルスが乱される、と考えられている。

LGBTQ+コミュニティを専門とするミシェル・フォーサー医師は、トランスジェンダーの人はある意味ホルモンを外来的に投与するため、より「コントロール」していることになり、老化ホルモンの生成やレベルについて「選択肢」がある可能性を示唆した。しかし、更年期障害が、トランスジェンダーや多様な性別の人々にどのような影響を与えるかは、今のところあまり分かっていない。


【更年期におけるメンタルヘルスの症状を緩和する方法】

気分を害している理由は「更年期だから」とは限らない。産婦人科医のジュリエット・ネヴィンス氏は、「この時期には、環境的な要因がメンタルヘルスの崩れや睡眠障害につながることもあることを認識しておくことが重要です」と述べる。

それは、仕事、家族、経済的なストレスであったり、厳重な管理が必要な慢性的な持病があったり、食生活や飲酒習慣などのライフスタイルが健康的とは言えない場合もある。

また、女性や少女の健康改善を目的とする米政府機関「Office on Women’s Health(OWH)」によると、更年期の症状は、うつ病、双極性障害、強迫性障害などの精神疾患の病歴がある場合に悪化する可能性もあるという。

研究によると、こうした要因はホルモンの変化に影響される精神的な症状を増幅させる可能性があるが、自分の状況を総合的に判断することで、苦痛を軽減するために必要な行動や医療介入をより的確に行うことができるという。

こうしたメンタルヘルスの症状を緩和する方法を以下に紹介する。


・症状を記録する

更年期障害の症状を記録し評価することで気づきを得られ、医師とのコミュニケーションを改善し、治療目標の設定・達成に役立ち、最終的に症状の重症度を下げることに繋がると学術誌『Frontiers in Global Women’s Health』に発表されたレビューに記述されている。


・食生活を見直す

婦人科医スザンヌ・フェンスキー氏は、正確な理由やメカニズムはまだ解明されていないものの、「地中海式ダイエットはほてりやうつの症状、認知機能の低下の軽減に関連している」と述べている。

地中海式ダイエットでは、野菜、果物、豆、ナッツ、全粒粉、エキストラバージンオリーブオイルなどを積極的に取り入れ、魚、乳製品、赤ワイン(普段から飲酒しない人は飲酒しないで)を適度に摂取し、赤身の肉や大量の砂糖はなるべく避ける食生活を行う。


・運動習慣を見直す

フェンスキー医師は、「パワーウォークや太極拳などの軽度〜中度の有酸素運動は脳の体積を増やし、実行機能を向上させると考えられています」と話す。(筋トレやヨガを加えると、ほてりや寝汗の軽減に繋がる可能性もある)


・ほてりの誘発を避ける

クリーブランド・クリニックによると、辛い食べ物、カフェイン、アルコール、きつい服装、暑い気候などはホットフラッシュの引き金になるという。ほてりが起きた時は、すぐに一枚脱げるよう重ね着をしておき、常に冷たい水を持ち歩くと良いという。


・睡眠を十分とる

フェンスキー医師は、「毎日同じ時間に眠り、同じ時間に起きるという決まった睡眠スケジュールを持つと、身体と心を眠りに仕向けることができます」と話す。また寝汗をかきやすい人は、薄手のパジャマや扇風機、冷却効果のあるシーツなど、温度調節がしやすいものを用意しておくと良いという。


・薬物療法を検討する

ライフスタイルを見直すなど色々試しても更年期特有の症状(うつ、不安、不眠)に改善の兆しが見られない場合、薬物療法が役立つかもしれない。

選択的セロトニン再取り組み阻害薬やホルモン療法などが、症状を軽減してくれる可能性がある。医師に相談してみよう。


【更年期障害だと確信があっても、一度医師の診察を受けて】

あなたが経験している症状が更年期障害であると確信していたとしても、医師による適切な診断を受けることを忘れないでほしい。

「甲状腺の異常や薬の副作用など、更年期障害に似た症状を引き起こす可能性のある一般的な疾患などがいくつかあるため、念の為除外しておく必要があります」とバービエリ医師は話す。

診察を受け、更年期障害が原因だと診断された場合、医師はあなたの具体的な症状、個人や家族歴などを調べ、症状を緩和するために最も効果的な治療法や生活習慣の改善の組み合わせを提案することができる。

トランスジェンダーの人々にとっては、適切な医療機関を探すのは簡単ではない。World Professional Association for Transgender Healthの医療サービス提供者リストには、日本を含め世界中のメンバーのリストが掲載されている。更年期障害の症状に対して自分に適切な医療機関を見つけるための最初の一歩として役立つだろう。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。