「変革人材」なんて、曖昧な流行り言葉はやめませんか。組織開発の専門家・勅使川原真衣さんの「目から鱗」のアドバイスとは?

組織開発の専門家・勅使川原真衣さんが「未来を作る×ピントとミカタ」連続ワークショップに登壇。イベントの様子をお伝えします。

「私よりあの人の方が『能力が優れているから』上手くいくんだと思ったりしませんか?それは『違う』と声を大にして言いたい」

ハフポスト日本版は5月26日、10周年企画「未来を作る」のイベント第2弾として、株式会社日建設計・イノベーションデザインセンターとコラボし、「未来を作る×ピントとミカタ」連続ワークショップ第1回を実施した。

「自分とつながる」をテーマに登壇したのは、組織開発の専門家・勅使川原真衣さん。

「『あの人優秀だよね』って言葉が嫌いなんです。それって能力の話ではなく、その人の性質と環境が合っているかどうか。間違っても『成功しよう』『優秀であろう』と、自分単体で目指すものではないと思っています」

では、能力が「幻想」なら、どうやって生き抜けばいいのか。ワークショップでは、参加者も手を動かしながら考えた。

組織開発の専門家・勅使川原真衣さん
組織開発の専門家・勅使川原真衣さん
Junichi Shibuya

曖昧で終わりがない「能力」

元々「人材開発コンサルタント」として働いていた勅使川原さん。「あの人は『チャーム』がある」「この人は『センス』がない」「変革人材が欲しい」など、曖昧でトレンドによって求められるものが変わっていく「能力」で人を選抜することに違和感があったと言う。

「コロコロ求められるものが変わる『能力』には終わりがありません。その人はその人のままでいいから、組織として『環境』を変えていくべきだと思うんです」

参加者から「自分が5人くらいのチームのリーダーで、『明らかにこの人はここじゃない』という人がいた場合、どうすればいいんですか?」と質問された勅使川原さんは、「ほっといて雪解けが起きることはほとんどありません」と答えた。

「やっぱり、『誰と何をどうやるか』を、配置換えも含めて考えたほうがいいと思います。もし人数が少ない会社で配置換えが難しい場合は、『解釈の癖』をワークショップでお互いに話し合っておくといいのではないでしょうか」

ハフポスト日本版編集長の泉谷由梨子(左)と勅使川原真衣さん(右)
ハフポスト日本版編集長の泉谷由梨子(左)と勅使川原真衣さん(右)
Junichi Shibuya

「自分とつながる」は「自分だけの内面をほじくること」じゃない

イベントでは、変えられる性質と変えがたい性質があることを前提に、「変えがたい性質」と言われている「内向性、外向性」と「動機」と呼ばれる特性について知るワークショップを行った。

勅使川原さんも会話に加わりながら、参加者同士で結果をシェアし合うと、参加者からは「同じテストでも、自分と全然違う捉え方をしている」と驚きの声が上がった。

「例えば内向性タイプの人からすると、外向性の人は軽率・無責任に見えることもあります。嫌だなと思った時に、『もしかしたら、悪気があるわけではなく性質が違うのかもしれない』と俯瞰した上で環境と合わせて考えてみるといいと思います」

さらに勅使川原さんは「自分とつながるということは、ただ『自分の内面をほじくること』ではありません。自分を深掘りするだけでは、『自分は未熟なんじゃないか』と思って終わってしまう。環境にも目を向けてみましょう」と話し、続けて「ありたい自分と環境」を探るワークショップを行った。

組織開発の専門家・勅使川原真衣さん
組織開発の専門家・勅使川原真衣さん
Junichi Shibuya

「自分とつながる」とは「揺らぎ」を受け入れること

参加者は勅使川原さんと一緒に、「どんな人といる時が嬉しい、しんどいか」「どんな言葉が飛び交う場所が好きか」などありたい自分を探った上で、「今置かれている環境」を分析した。

「『自分はこういう人』というのは固定的なものではなく、周りとの相互作用で変わるものです。人は『揺らぐ』前提で、ある環境下において自分のどの面が引き出されるのかを楽しんで欲しいですし、人に対してもその視点を持って欲しいです」

ワークショップの様子
ワークショップの様子
Junichi Shibuya

参加者からは、「自分に合う転職先を見つける方法は?」「自分の性質に合う環境なら、そのままい続けた方がいい?」などの質問が投げかけられた。

勅使川原さんは、「自分に合う転職先を見つけるには、自分を知るだけでなく、転職先がどんな環境かリサーチする必要があります」と説明。

「自分がやりたいことは、自分にしか分かりません。自分の揺らぎを受け入れた上で、なりたい自分を目指して環境を選び取っていくことで、自分の人生の舵取りができるのではないでしょうか」

イベントの参加者と会話する勅使川原真衣さん
イベントの参加者と会話する勅使川原真衣さん
Junichi Shibuya

イベント後、参加者からは「自分×環境のアプローチに目からウロコでした」「自分の中のモヤモヤが晴れて、希望が持てた」など前向きな感想が寄せられました。

次回の「未来を作る×ピントとミカタ」ワークショップは…

「知る」から「行動する」までには大きなギャップがあります。社会課題に関心があっても、半数以上の人が「誘われたらやりたい」と思っている「誘われ待ち」というデータも。

そんな「何か行動したくても、なかなか1歩が踏み出せない」人へ。自分と、会社と、社会と「つながる」機会をつくって「誘う」ことで、その一歩を後押ししたい。

そんな思いが共鳴して、数多くの社会課題と実践を発信してきたハフポストと、都市課題を共に解く「関係づくり」をしていきたい日建設計イノベーションデザインセンターがコラボして「未来を作る×ピントとミカタ」ワークショップシリーズを始めました。

「未来を作る×ピントとミカタ」ワークショップ第2回は、ゲストに富士通株式会社 コミュニケーションデザイナーでラクガキコーチのタムラカイさんが登壇。ラクガキをしながら、自分のパーパスを探ります。

この日のイベントにも参加したタムラさんは、「自分がやってみたいことを、皆さんは普段『言葉』で考えていると思いますが、ワークショップではラクガキをしながら考えます。絵を描くことのメリットは、そこにあるものを俯瞰的に見ることで、いつもとちょっと違う視点で自分を見つめられること。絵が苦手という人でも安心して取り組めるワークショップです」と紹介。

次回のワークショップは7月21日(金)。お申し込みはこちら

次回の「未来を作る×ピントとミカタ」ワークショップ、ゲストは富士通株式会社 コミュニケーションデザイナーでラクガキコーチのタムラカイさん
次回の「未来を作る×ピントとミカタ」ワークショップ、ゲストは富士通株式会社 コミュニケーションデザイナーでラクガキコーチのタムラカイさん
日建設計

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