「あの人を探しています」。国内最大級のピッチコンテスト優勝者が、開発のきっかけとなった人を探しているワケ。

においで排泄を検知するセンサーを開発する株式会社abaの宇井吉美さんが、起業家の登竜門と言われている「IVS2023 LAUNCHPAD KYOTO」で優勝した。宇井さんが排泄センサーを開発したきっかけは、介護職員の「おむつを開けずに中が見たい」という言葉だった。
優勝した株式会社aba代表取締役の宇井吉美さん(右)
優勝した株式会社aba代表取締役の宇井吉美さん(右)
IVS KYOTO実行委員会

IVSはベンチャーキャピタルのHeadline Japanが運営するイベントで、30回目の開催となる今回は京都を舞台にし、スタートアップの起業家や投資家、企業経営者などが、1万人近く参加した。定番となっているのがスタートアップのピッチコンテスト「IVS LAUNCHPAD」だ。過去の登壇企業が急成長を遂げていることから「起業家の登竜門」とも言われている。今回は過去最大の約400社の応募の中から予選を勝ち抜いた14社がそれぞれのプロダクトの内容や事業に対する熱い思いをプレゼンテーションした。

優勝したのは、においで検知する排泄センサーを開発している株式会社abaの宇井吉美さんで、優勝特典(スタートアップ京都国際賞)として最大1000万円の補助金が授与された。また、観覧者の投票によるオーディエンス賞も受賞した。

信じられない気持ちと、時間と予算を使いプレゼン資料を作って1000万を取れなかったらチームに顔向けできないと思っていたので、安堵の気持ちもあります。」

介護ベッドを舞台においてプレゼンする宇井さん
介護ベッドを舞台においてプレゼンする宇井さん
IVS KYOTO実行委員会

「おむつを開けずに中を見たい」介護の理念が込められたケアテック

abaの「ヘルプパッド2」は、非装着で尿と便を検知できる唯一の排泄センサーだ。開発のきっかけは、宇井さんが学生の頃、特別養護老人ホームでの実習で聞いた、介護職員の「おむつを開けずに中が見たい」という言葉だった。介護現場では、おむつ交換のうち20〜30%が、汚れていない “空振り”であるなど無駄な作業も多くなりがちだ。しかし、排泄後におむつを交換しないと、尿便が漏れてしまい、体やベッドの掃除などで、おむつ交換に10倍以上の時間がかかってしまう。「ヘルプパッド2」で、おむつ交換を適正なタイミングで行うことができれば、介護スタッフの業務負担を減らすことができる。

優勝コメントする宇井さん
優勝コメントする宇井さん
IVS KYOTO実行委員会

宇井さんはプレゼンテーションで、「ヘルプパッド2」には、「おむつを開けずに中が見たい」「介護者の体に機械を装着したくない」などの介護現場の声を落とし込んでいることも主張した。こうした介護現場へのリスペクトも伝わり、大舞台で優勝を手にした宇井さん。優勝コメントでは、製品を開発するきっかけとなった介護職員に呼びかけた。

『おむつを開けずに中が見たい』と言ってくれた介護職さんが今どこにいるかわからないんです。介護をしているかもわからない。15年かかっちゃいましたが、やっと『おむつを開けずに中が見れる』ようになったことを知って欲しいなと思っています」

ハフポスト日本版を運営するバズフィードジャパンと朝日放送グループは資本関係にあり、この記事は共同企画です。

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