犬や猫の熱中症、サインを見抜くポイントとは?「深部体温をチェックして」と専門家

「犬や猫の平熱は約38℃。危険域までの猶予は2℃程度で、少しの体温上昇が重症化を招きます」ペットの熱中症予防と応急措置、専門家に聞きました
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危険な暑さが続いています。

私たちを癒してくれるペットたち、実は人間よりも熱中症になりやすい面があるんです。

なぜ?防ぐにはどうしたら?熱中症を疑ったときの対策は?

動物たちの発するサインを見逃さず、重症化を防ぐことが大切、と専門家は言います。

 横浜市の井上動物病院・井上快院長(獣医学博士)に、犬や猫、人気のエキゾチックアニマル(小鳥やウサギ、ハリネズミなど)の熱中症について、話を聞きました。

「ハァハァ」。よだれを垂らしたら要注意

──犬や猫は、人間より熱中症にかかる危険性が高いのですか?

人間の平熱は36.5℃前後、一方で犬や猫は約38℃。どちらも40℃を超えると生命の危険にさらされるのに、犬や猫は危険域までの猶予が2℃程度しかない。少しの体温上昇で重症化するんです。

もともと野生だった動物は強い、と思われる方もいます。弱った姿を見せることは、弱肉強食の自然界で死を招きます。だから我慢強い。「昨日まで元気だったのに」と飼い主さんの目には映るけれど、調べてみると、症状は1週間以上前からあった、ということは少なくありません。ペットたちがSOSを出していたら、すぐに適切な手当が必要です。ちょっと様子をみよう、では手遅れになってしまいます。

──熱中症のサインは?

口を開けてハァハァと息をするパンティングをしたり、よだれを垂らしたりします。犬や猫の汗腺は足の裏と鼻先のわずかで、発汗による体温調節機能がほとんどありません。パンティングやよだれは、上昇した体温を、蒸発による気化でなんとか下げようとする行為です。

他には、落ち着きがなくなる、目や口の粘膜が赤くなる。症状が進むと、粘膜の色は紫っぽく変わり、筋肉の震え、吐き気や下痢、呼吸困難に陥ります。重症化した場合、循環不全で脳や組織が酸欠となり、さまざまな器官の障害を引き起こす危険があります。こうした合併症が怖いのは、体温の低下後も症状が進行してしまうこと。

合併症を併発した場合の死亡率は36〜50%、という報告もあります。

井上動物病院の井上快院長(右)
井上動物病院の井上快院長(右)
Naoko Kawamura

──「熱中症かも」と思ったら、どうしたらいいですか?

涼しいところで休ませる、自力で飲める場合は水を飲ませる、体を冷やす、などです。

体を冷やすには、22〜28℃の流水をかける、首、内股、脇など大きい血管を冷やす、冷たいタオルで体を巻いて風を当てるといいでしょう。水をかける際、冷たすぎると、血管の収縮と血圧の上昇を招き、深部体温を下げられません。22〜28℃が最も効率よく体温を下げる、と言われています。軽度の場合、体温が39.5℃を下回れば安心していいでしょう。

大事なのは深部体温

──ペットの熱中症を防ぐため、何に気をつければ良いですか?

大事なのは体内温度(深部体温)です。ペット用の体温計でお尻から直腸温度を測ります。

直腸で検温する際、万が一動物が動いてしまった場合でも安全なように、購入される場合は先端が柔らかいタイプをお勧めしています。硬いタイプでも検温はできますが、暴れてしまった際に直腸を傷つけてしまうおそれがあります。使い捨てのプローブカバーを使用して頂くと衛生的です。

ペット用の体温計と使い捨てのプローブカバー
ペット用の体温計と使い捨てのプローブカバー
井上動物病院提供

 夕方散歩に出る時は、地面が熱くないか触ってチェックしてください。

体温調節には、温度、湿度、気流(風)が関係します。雨あがりの蒸し暑い日は、特に注意が必要です。水分補給も忘れずに。当然のことですが、お出かけの時に、ペットは車の中でお留守番、なんてことは絶対にいけません。わずかな時間でも命に関わります。

──熱中症は増えているのでしょうか?

実は新型コロナが流行した2020年から、私の病院に来る熱中症の動物の数は減りました。熱中症の予防啓発の成果もあるかもしれませんが、飼い主さんが家で過ごす時間が増えた影響が大きいと私は考えています。異変にすぐ気づけますし、人間が快適に過ごせる場所では、犬や猫も概ね、快適に過ごせますから。

犬や猫に適した室温は22〜25℃、湿度50〜60%です。

 熱中症の約半数は室内で起きている

──室内で気をつけることは?

動物たちの過ごす場所に温湿計を置いて、快適かどうか見てあげてください。クーラーの冷気は下に溜まります。扇風機やサーキュレーターで部屋の温度や湿度を均一にすることは、気流も生むので有効です。

私の病院に来る熱中症の動物たちの内、約半数は室内で熱中症にかかっています。ケージで飼う場合は直射日光が当たらないよう注意しましょう。できれば動物たちが自由に動き回れるように。ひっくり返しても大丈夫なよう、水飲み場は数箇所に設置してください。

──熱中症になりやすい犬や猫の特徴はありますか?

毛皮で覆われている犬や猫は、全般的に暑さに弱いのですが、特にパグやブルドッグ、ペルシャ、ヒマラヤンなどの短頭種(頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い)は軌道が狭く、呼吸による体温調節が苦手です。

日本犬や、シベリアンハスキーなど北方生まれの犬種は、被毛が密で、暑さにとても弱いですね。

小さかったり足が短かったりすると地熱の影響を強く受けます。一方で大型犬は熱を蓄積しやすく、自分で体温を下げにくい。活動的で体温調節が未熟な幼い子たちや、脱水傾向にある高齢の犬猫も注意してみてあげてください。肥満や基礎疾患があれば尚更です。

日本気象協会は日本動物愛護協会と協力し、2019年から「イヌ・ネコの熱中症予防予防対策マニュアル」を動物病院などで無料配布している
日本気象協会は日本動物愛護協会と協力し、2019年から「イヌ・ネコの熱中症予防予防対策マニュアル」を動物病院などで無料配布している
日本気象協会「熱中症ゼロへ」

──犬や猫以外のペットも熱中症になりますか?

もちろんなります。小鳥の熱中症は見過ごされがちです。直射日光の当たる窓際に鳥籠を置いていませんか? 口を開ける浅くて早い呼吸をしていたり、羽をしきりに広げたりしていたら、熱中症のサイン。暑くて体温を下げようとしています。元々体温が40℃以上と高い鳥たちは、少しの体温上昇で熱中症が重症化してしまいます。

インコ、ウサギ、ハムスター、ハリネズミ・・・。熱中症になりやすい動物たち

──先生のところには、他にどんな動物たちが来るのでしょう?

ウサギ、ハムスター、ハリネズミなど、いわゆるエキゾチックアニマルが増えています。飼いやすく可愛いので人気ですが、熱中症という観点では気をつけてほしいところもあります。

ペットのウサギのほとんどは、北方に生息するアナウサギを品種改良したものです。暑さにとても弱く、気温30℃以上は危険。脱水が進むと呼吸が止まってしまいます。

ハムスターの適温は18〜21℃、湿度40〜60%で十分な換気が必要です。熱中症になると、元気消失、脱水、頭を左右に振るなどの症状が見られます。1日に15〜20ミリリットルと水をよく飲むので、補給を忘れないように。

ハリネズミは温度差や多湿も苦手で、湿度を40%以下にしてあげてください。30℃以上が続くと食欲不振になり、徐々に眠るように衰弱していきます。呼吸が速くなり、よだれを垂らし、重症例では痙攣を起こすこともあります。

──ペットにとっての適温を保つためにできることは何でしょうか?

日よけを作って室温を上げない、扇風機やサーキュレーターの活用、ペット用冷却マットを敷くなどの工夫をしてください。予防を第一に、ペットたちと安全で快適な夏を過ごしてくださいね。

井上動物病院で飼っている雑種猫「ねぎ」は輸血にも大活躍。「ねぎのおかげで命をつないだ猫ちゃんがたくさんいます」と井上院長
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