途上国への訪問を続ける森星さんが、子どもたちから受け取った「本質的な生き方」【国際ガールズ・デー】

子どもたちから「自分を取り巻く環境や土地の豊かさを、次の世代につないでいくというシンプルな選択」を学んだという森星さん。自身のルーツを見つめ直し、モデルとは別の「舞台」で新たな挑戦に踏み出している。
フィリピンを訪問した森星さん(2018年)
フィリピンを訪問した森星さん(2018年)
プラン・インターナショナル

ネパールの小学校で、子どもたちが白い画用紙に描いた「将来の夢」。そこには、思いがけない風景が広がっていた━。

スポットライトの下でランウェイを颯爽と歩き、誰もが知る世界的ブランドのイメージモデルに抜擢される。そんなトップモデルとしての顔だけではない。

森星さんは、途上国の子どもを支援する国際NGOのアンバサダーとして、現地の子どもたちと交流を続けている。

初めての途上国訪問からまもなく10年。

子どもたちとの出会いは、日本で生まれ育った自らのルーツを見つめ直し、日本文化を世界に発信するプロジェクト始動の大きなきっかけになったと森さんは言う。

10月11日の「国際ガールズ・デー(※)」を前に、NGOでの活動が森さんの考え方に与えた影響や、社会課題の解決のために一歩踏み出したいと悩む人に向けたメッセージを語ってもらった。

(※)女の子の権利やエンパワーメントの促進を広く国際社会に呼びかける日として、国連が定めている記念日。

♢ ♢

森さんが初めて途上国支援に関わったのは2014年。NGOやファッションブランドの社会貢献活動を紹介するファッション誌の企画で、国際NGO「プラン・インターナショナル」(以下・プラン)が支援するベトナムの山岳地帯を訪れた。

「虐待を受けたらどうするか」「拉致からの身の守り方」といった、現地の女の子を対象としたプランの支援プログラムを視察した。

ベトナムを皮切りに、新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年まで、森さんはカンボジア、ネパール、フィリピンを訪問。コロナ禍以降も、フィリピンの子どもや住民への栄養改善プログラムを支援するなど関わりを続けている。

10年近くNGOの活動に参加する中で、課題解決のアプローチの仕方に共感したと森さんは語る。

「支援には色々な形がありますが、プランのスタッフの方々はその地域の環境や子どもたちが本来持っている能力のポジティブな面に光を当て、それをさらに伸ばせるよう伴走するという考えのもとで活動しています。

カンボジアの職業訓練学校では、縫製や調理を学ぶコースを見学させてもらいました。そこでは子どもたちが何を好きなのか、何を伸ばしたいのかを本人に考えさせ、卒業後もフォローアップする仕組みができていました。 

いわゆる『途上国』や『先進国』と呼ばれる国を問わず、貧困や教育格差などの問題を多くの国が抱えています。どんな国にも良い面と悪い面がある中で、ネガティブな状況を変えていくために今あるプラスの部分に目を向ける方法もあると教えてもらいました」

「自然の中に自分がいる」

深く印象に残っているのが、ネパールの小学校を訪れた時のことだという。「将来の夢」という題で、子どもたちは白い紙に思い思いの絵を描いた。

そこには、意外なものが表現されていた。

「自分だったら『こんな職業に就きたい』みたいな、個人的な願い事を描くだろうなと想像していました。でもみんなの絵を見ると、山があって、川が流れていて、その間にポツポツと民家があって...。子どもたちが描いたものは、今目の前に広がる美しい風景と変わらなかったんです。

果物や野菜を育てられる土壌があり、生き物の命が誕生する空間がある。子どもたちにとっては、里山里海の風景こそが将来の夢でした。

『自然の中に自分がいる』という感覚で、未来を考えているんだと知ったんです。SDGsが掲げる目標は今ではよく知られていますが、子どもたちは当時から、持続可能なコミュニティーを夢に描いていた。とても本質的な生き方に触れられた気がしました」

2015年には、カンボジアの職業訓練学校で生徒たちが調理を学ぶ現場を見学した
2015年には、カンボジアの職業訓練学校で生徒たちが調理を学ぶ現場を見学した
プラン・インターナショナル

コロナ禍でルーツに立ち返った

6年にわたって続いた子どもたちとの対面交流は、新型コロナウイルスの感染拡大で中断せざるを得なくなった。

物理的に海外に出られなくなったことで、森さんの内面にも変化があった。アメリカ人の母と日本人の父の間に生まれ、日本で育ったという森さん自身のルーツを見つめ直す時間が生まれたという。

「プランの活動で訪れた国の子どもたちから学んだことは、自分たちを取り巻く環境や土地の豊かさを、次の世代につないでいくというシンプルな選択でした。

自分の育ってきた日本を見つめ直すと、ここには美しい水や森、海があり、それを私も享受してきました。持続可能な社会のためにどう恩返ししたら良いのだろうと考えた時、先人たちが積み上げてきた日本の文化を守りながら発展させる活動がしたいという思いが湧きました」

そこで生まれたのが、「tefutefu」のプロジェクトだ。tefutefuは、日本の伝統工芸などの文化を再構築し、職人や企業、行政といった様々な立場の人たちと協力しながら、新たな作品を生み出し世界に発信することを目指す。

「各地にいる工芸品の作り手の人たちと出会い、自然を生かす形で何世代にもわたって継承されてきた素晴らしい伝統文化を知りました。

里山里海を守り引き継いでいくという、持続性を意識したライフスタイルの選択肢を紹介する。モデルの活動に加えて、そうした発信もライフワークの一つにしていきたいです」

指標は「自分がときめくか」

気候変動やそれに伴う災害、資源の枯渇、経済格差━。

目の前に立ちはだかる社会課題の解決のために、何か行動したいけれどなかなか一歩が踏み出せなかったり、どの課題に優先的に取り組んだらいいのか悩んだりする人もいるかもしれない。

森さんは、迷った時は「ときめく気持ちに目を向けてみては」と提案する。

「私が途上国支援の活動に関わるようになったのはファッション誌の企画の取材からですが、そもそもの訪問のきっかけは、ベトナムの民族衣装の写真を見て、あまりの美しさにときめいたことでした。

その土地に根付くお祭りや信仰、暮らしから生まれたアートとデザインが表現されていて、ひと目で『これを生で見たい!』と虜になったんです。

実際に現地へ行くと、誰かの情報を通してではなく自分自身でそこに生きる人たちの表情や文化、考え方に触れ、自分の中の当たり前を見直す体験ができました。

私もまだ勉強中でプロセスの最中ですが、最初の一歩を重く捉えすぎず、まずは自分の惹かれるものに向かっていくと良いのではないでしょうか。

生まれ育ったふるさとや今の自分を形づくった土地などのルーツを振り返ってみると、自分の役目だと思える何かが潜んでいることがあるかもしれません」

サステナブルな暮らしやライフスタイルの選択肢を発信している森星さん。一方で、「消費」する行為とは切り離せないファッションと地球環境の問題に、葛藤した時期もあったと打ち明ける。

近日公開予定のインタビュー後編では、持続可能な暮らしの形を積極的に提案する理由とそれに対するモデルとしての「責任」、森さんにとっての「ウェルビーイング」とは何かを聞いた。

【取材・執筆=國﨑万智(@machiruda0702)/ハフポスト日本版】

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