【悪質ホスト問題】「推し活」化したホストクラブ「『ホス狂い』へのレールが敷かれ誰もが被害にあう可能性がある」

推し活のつもりでホストクラブにハマった女性たち。彼女たちは「『ホス狂い』になった」のではなく「『ホス狂い』にさせられた」のではないか。「悪質ホスト問題」に国会で切り込んだ塩村文夏(あやか)参院議員に聞いた。

軽い「推し活」のつもりで行ったホストクラブにハマり、高額な売掛(ツケ)が払えず、路上での売春や風俗に追い込まれる10代や20代の女性たち。

支払い能力を超えた売掛を女性客に負わせ、返済の手段として性的に搾取する悪質ホストクラブ商法が拡大している。

その仕組みには目を向けず、彼女たちを「ホス狂い」「メンヘラ」といった言葉で片付けてしまっていいのだろうか。

国会でこの「悪質ホストクラブ問題」に切り込んだ、立憲民主党の塩村文夏(あやか)議員に聞いた。

塩村文夏(あやか)参院議員
塩村文夏(あやか)参院議員
Naoko Kawamura/Huffpost Japan

東京・歌舞伎町のホストクラブは、コロナ明けから急速に増え、現在は300店舗ほどある。

ホストクラブの売掛制度(※)で高額な売掛(ツケ)が払えず路上での売春や風俗店で働かざるを得なくなった女性による事件やトラブルをきっかけに、悪質商法の実態が明るみになっている。

塩村議員が11月9日にこの問題について国会で質疑したほか、27日には警察庁長官自らが東京・歌舞伎町のホストクラブを視察。30日には立憲民主党が「悪質ホストクラブ被害対策推進法案」を衆議院に提出した。

ここまで被害が拡大するまで、なぜこの問題は放置されたのか。

※売掛制度…客の飲食代金を店側が立て替えて、後から「売掛金」として請求するシステムのこと

部屋に置かれた結婚情報誌

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Yuichi Yamazaki via Getty Images

塩村文夏(あやか)議員はこう指摘する。

「理由はいくつかありますが、1つはホストがいわゆる『色恋営業』をして女性客に対して『彼氏』と『彼女』のように振る舞うことです。

『愛してる』と女性客に何度も連絡して、共依存の関係を築いていく。おそらくホストが女性たちの家族構成や家族関係を聞くのだと思います。どのような家庭でも、深く話を聞けば『実は…』と何かしら出てきます。そうした心の隙間に入り込んで、色恋をしかけていくんです」(塩村議員)

女性自身が被害者だと気づいていないケースも少なくないという。

「報道が出て初めて目が覚めて支援団体に相談しに行ったという女性もいますが、この問題について相談に来られるのは、多くが女性本人ではなく親御さんです。

ある母親は、娘は完全に(恋愛だと)信じ込んでいて、部屋に結婚情報誌が置かれていたとおっしゃられていました。怖い話ですが、そういう状況なんです」(塩村議員)

ホストが恋愛感情を利用するため、女性から被害の声が上がりづらい。さらに、被害にあったと気づいて警察に訴えても、金銭が絡む男女間の痴情のもつれとされてしまうのだという。

一般的な売掛システムは、客のツケ(売掛)を店が立て替えるが、悪質ホストクラブ商法はホストが女性客のツケを立て替えている。たとえ「ホストクラブに費やした金額は2年間で約1千万円、売掛金が150万円を超える20代の女性」といったケースでも、店の責任を問いづらい状況を生み出しているという。

「売掛システムは信用取引の一種なので、その客の支払い能力や信用情報が大前提にあります。

しかし、到底支払えないであろう高額な売掛金を背負わせ、支払えない女性に売春や風俗店で働くことをホストがすすめる。つまり、売掛の制度そのものが悪なわけではなく、返済の手段として性的に搾取される仕組みが問題なのです」(塩村議員)

「推し活」化するホストクラブ

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Feifei Cui-Paoluzzo via Getty Images

繁華街でよく目にするホストの顔写真がデザインされたド派手なアド(宣伝)トラック。自分の担当ホスト=「推し」ホストの顔を載せるために頑張る女性もいるという。

アイドルを「推す」ようにホストを「推す」女性たち。「推し活」化はホストクラブに対する女性たちの心のハードルを下げた。

さらに、店に行かずともSNSやマッチングアプリなどで簡単にホストと出会えてしまうことも、この問題の広がりに拍車をかけているという。

「例えば、最初はお店ではなくカフェで会ったり、SNSで『いいね』を押した女性全員にメッセージで営業をかけたりするホストもいます。女性のほうは気軽に『いいね』したにもかかわらず、ホストからメッセージが来て、興味を持って来店するという流れです。

未成年のうちからSNSなどでホストを目にし、成人したら店に行こうと決めている女性や、ホストからの誘いのメッセージのまま18歳の誕生日をホストクラブで祝う女性もいます」(塩村議員)

被害女性はまだまだいる

「推し活」化やSNSなどによって、気持ちの上でも実際の距離的にも、10代20代女性にとって身近なものとなったホストクラブ。

「『ホス狂い』などと言われますが、何も特殊な人がそうなるわけではなく、一度足を踏み入れたらそうなるレールが敷かれていて、『ホス狂い』にさせられるんです。

被害女性の親御さんのなかには『自分の育て方が悪かったのではないか』『家庭での教育が悪かったのではないか』と悩んで助けを求められない方もいるのですが、そんなことはありません。

友達に誘われて行ったケースなどは、誘った側の友達が紹介料として自分のツケを減額してもらえるうえ、木の枝のように客が増えていくことから、紹介する客は『幹』、紹介で来た客は『枝』と呼ばれています。

育て方の問題などではなく、誰だってホストクラブに行って被害にあう可能性があるんです」(塩村議員)

塩村議員は「悪いのは被害女性でも保護者でもありません。今、自分が被害にあっている、あるいは身近にそのような人がいたら助けを求めてください」と強く訴えかける。

消費者庁は11月30日、悪質ホストクラブ問題について消費者契約法に基づき飲食契約を取り消すことができる可能性があるとする周知文を公表。トラブルの相談については、全国各地にある消費者生活センターに連絡するよう呼びかけた。

<相談内容に応じた窓口はこちら>

・どこに相談してよいか分からない、居住先を失った場合の一時保護、その他困難な問題を抱え、福祉的支援が必要な場合の相談

・売掛金にかかわる契約の取消しなどの手続や各種法的トラブルについての相談

・ホストに売春を強要されているなど犯罪被害についての相談

・性犯罪、性暴力の被害についての相談

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