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2020年01月29日 10時29分 JST

現実味を帯びてきた「たんぱく質危機」にどう対処するのか?

今のままでは不足するとされる、たんぱく質を補うために食料システムの変革が求められている。

サステナブル・ブランド ジャパン

2050年には世界人口が100億人に達すると言われている。今のままでは不足するとされる、たんぱく質を補うために食料システムの変革が求められている。NPO「フォーラム・フォー・ザ・フューチャー」は食品企業132社の取り組みを分析し、世界の食料システムをより持続可能なものへとシフトさせるために5つのことを提案する。食品業界が切迫する環境課題に対応し、時代に取り残されないようにするには、植物由来の製品需要のような消費者任せのイノベーションでは不十分と同団体は指摘している。(翻訳=梅原洋陽)

報告書『食の未来(The Future of Food)』は、有名な小売店やブランド、食肉、酪農業、飼料製造企業など世界の食品産業をけん引する大企業132社の取り組みを分析したものだ。報告書は5つの項目に取り組むよう呼び掛けている。その内容は、家畜への飼料の与え方からバランスがとれた多様で健康的な食事にいたるまで、卸売業のシステムを根本から変える可能性を秘めている。

報告書は、同NGOが100億人に必要なたんぱく質を健康で、手頃で、地球に優しい方法で提供するシステムを確立する「プロテイン・チャレンジ2040」プロジェクトを促進するために発行したもの。同チャレンジは、先進的な非営利組織のほかにダノン、ハーシー、インポッシブル・フーズ、マークス&スペンサー、ネスレ、クォーンなどの食品メーカーが結集した国際的な連携。それぞれの加盟企業はたんぱく質を重要な課題として企業戦略に位置付けている。

農業と土地利用変化による温室効果ガス排出量は地球全体の排出量の約24%を占める。報告書は、企業がたんぱく質を確保するための持続可能な食糧システムを築けるかどうかを問う。牛や鶏などの動物を持続可能な飼料で育てれば、生態系は保たれる。その結果、人口が増加しても、われわれは人にも地球にも優しい健康な食事をとることができるのだ。

報告書によってこうしたことが分かっている。

・米国や欧州の企業は持続可能なたんぱく質を供給するためのさまざまな方法に取り組み始めている。例えば、2社のうち1社は消費者が植物由来の製品を手に入れやすいよう取り組んでいる。特に、食品や原料を取り扱う企業が主導的な役割を果たしている。そうした企業の79%はメニューや製品のラインナップに植物性たんぱく質製品を導入しており、それに続くのは食品サービス・レストランが61%、小売りが52%、食肉生産・加工業者だ。

・こうした流れの背景には食肉の売上高が増加していることがある。ほぼ毎週、新たな製品が発売されているものの、主力製品を再検討したり、持続可能なたんぱく質を主力のビジネスモデルに組み込むような大きな動きはない。

・多くの取り組みは単発で、独立したものだ。たんぱく質の消費・生産には、一企業の単独行動ではない、より広範囲のシステム全体に及ぶアプローチが必要だ。

・家畜に与える飼料が健康や最終製品の質、コストに与える影響は大きいにも関わらず、飼料のサステナビリティに力を入れて取り組む企業はわずか3分の1のみ。

フォーラム・フォー・ザ・フューチャーで持続可能な栄養部門を担当するレスリー・ミッチェル氏は、「人や地球にとって前向きで持続可能な未来のために、食料システムの早急な変革が求められている。人々の関心も高まってきている。多くの企業がさらに意欲的、包括的な方法で、持続可能な栄養を追求すべきだ。植物や肉、乳製品の製造・消費を通して持続可能性を追求し、持続可能なたんぱく質をビジネス戦略の根幹に置くことが必要だ」と話す。

報告書は、食品業界に変革をもたらすことを求めており、5つのことを提案している。

1.「持続可能な栄養摂取」を中心に置いた健康的な食事を提供することを推進し、企業の気候変動対策目標にも結び付け、さらに主要たんぱく質を摂取できる統合たんぱく質戦略をつくる。

2.市場に明確なメッセージを打ち出し、持続可能な飼料への切り替えを公表し、期限を設けてコミットする。

3.事業に組み込む。健康でバランスのとれた食事を提供するために、製品に含まれる素材をどう変える必要があるか理解し、さらに経営者が主導して、それを実現するためのビジネスモデルをビジネス機能全体で実行するために投資する。

4.コレボレーション。食文化を転換し、バリューチェーン全体に変革をもたらすといったことから、持続可能な動物飼料を広めるために必要な環境づくりをするなど、競争前段階の課題を特定し、協働する。

5.食品業界全体が変わることを宣言し、政策立案者や機関を巻き込む。気候変動への対処に残された時間が残り10年しかない今、企業は政策立案者や投資家、資金提供者、NGOを巻き込むことができる重要な立場にいる。持続可能性と栄養の両方を実現するソリューションを示し、市場の動機をシフトさせる取り組みを加速する。

「企業は求められる変化を推進することができる。だからこそ、変化を加速するためにこの5つの項目を設定した。持続可能で、栄養価が高く、手ごろなたんぱく質が手軽に取り入れることが当然となる世界で必要とされる企業はどんな企業かーー。未来への歩みが今始まっている」とミッチェル氏は語る。

「プロテイン・チャレンジ」のサステナブル小売業部門副代表を務める食品小売り大手アホールド・デレーズ(オランダ)のメーガン・ヘルステッド氏は「私たちは『プロテイン・チャレンジ2040』を植物由来の製品を推進していく素晴らしい連携と捉えている。報告書で明らかになったことは弊社のブランドの取り組みを裏付けるものだ。製品品揃えを大きく変え、炭素排出量を削減するためにサプライヤーとパートナーシップを組み、顧客がより健康的で持続可能な選択ができるようにする。業界を横断するこうした連携は、より健康的で持続可能な食事を世界規模で推進するために重要だ」と語った。

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