鉄腕DASHの「100年の杜を作る」企画。その横で壊される杜もある。日本テレビに聞いた

番組では「100年先まで受け継がれる杜を作る」とPR。しかしすぐ横では100年の杜が壊されようとしています
新国立競技場の建設予定地に隣接していた都営霞ヶ丘アパート(東京都新宿区:2016年1月15日撮影)
新国立競技場の建設予定地に隣接していた都営霞ヶ丘アパート(東京都新宿区:2016年1月15日撮影)
時事通信社
コンクリートだった場所を杜(もり)にするためのお手伝いをします――。
日本テレビ『ザ!鉄腕!DASH!!』は10月15日の放送で、TOKIOの国分太一さんら同番組のメンバーが、新宿区・都立明治公園の整備事業に参加すると発表した。
都立明治公園は新国立競技場の目の前に作られる公園で、10月31日に一部が開園する。

番組では、この公園整備について「およそ50年間コンクリートだったこの場所に、現在都立明治公園を急ピッチで建設中」と紹介。

「東京のど真ん中に、100年先まで受け継がれる自然豊かな杜を作る!」とPRした。

しかし、番組が「50年間コンクリートだった」と伝えたこの公園は、元々都営霞ヶ丘アパートがあった場所だ。
霞ヶ丘アパートは2020東京オリンピックに伴う再開発で取り壊され、平均年齢65歳以上だった住民は退去を迫られた。
さらに、鉄腕DASHは「100年先まで受け継がれる自然豊かな杜を作る」と宣伝しているが、隣で進む神宮外苑の再開発では、樹齢100年以上の樹木が多数伐採・移植される。
その場所の一つが、新秩父宮ラグビー場の建設で失われる「建国記念文庫の森」。ユネスコの世界遺産に関する諮問委員会である世界イコモスは9月、ヘリテージアラートを出して「100 年にわたり育まれてきた森は、完膚無きまでに破壊される」と警鐘を鳴らした。
日本イコモス国内委員会によると、建国記念文庫の森にある樹齢100年以上の樹木68本のうち、再開発後に持続的に生育可能となるのはわずか3本だ。

なぜ「50年間コンクリート」と表現したのか。日テレに聞いた

日本テレビは、都立明治公園整備と新秩父宮ラグビー場建設の両方に、深い関わりがある。
都立明治公園は「Park-PFI(都市公園の施設設置や整備を行う事業者を、民間から公募により選ぶ制度)」を利用して作られる。
この整備事業をするコンソーシアム「Tokyo Legacy Parks(東京レガシーパークス)」は、東京建物や三井物産、読売広告社のほか、日本テレビ100%出資の子会社である日テレアックスオンなど6社で構成される。
また、同じくPFI方式を利用した新秩父宮ラグビー場整備・運営事業には、協力企業として日本テレビが名を連ねている。
ハフポスト日本版は、都立明治公園と神宮外苑の再開発について、日本テレビに下記の点を尋ねた。
▽都立明治公園のプロジェクトに、鉄腕DASHのメンバーら旧ジャニーズ事務所のタレントが携わることになった経緯
▽人々が生活する霞ヶ丘アパートの跡地を「50年間コンクリートだった場所」と表現した理由
▽都立明治公園に「100年先まで受け継がれる自然豊かな杜を作る」としているが、その一方で、100年かけて作られてきた建国記念文庫の森がラグビー場の建設で壊されることをどう考えているか
この質問に対し、日本テレビ広報からは下記の回答が寄せられた。
【日本テレビの回答】
今回の番組企画は、2016年にスタートしたコーナー「新宿DASH」の一環として、東京都とPark-PFI事業社との間で、昨年からすでに取り組みを開始しておりました。
番組は都立公園の整備を行う事業者の皆様のお手伝いをしながら、都会での新たな生態系作りを学ぶことを目的としております。
今後、公園の整備作業について放送する際は、地域の歴史や環境の変化も含めて 番組内で描いてゆく予定です。
また、Park-PFI活用事業には、日本テレビHDの100%子会社の 株式会社日テレ アックスオンが参加しています。
株式会社日テレ アックスオンは、事業対象地を世界に誇れる価値ある公園にするため、これまでの番組制作の経験やノウハウを駆使して、新たな賑わいの創出やエリア全体の価値を向上する役割を担いたいと考えております。
工事用の囲いで覆われている建国記念文庫の森
工事用の囲いで覆われている建国記念文庫の森
HuffPost Japan

旧ジャニーズ事務所のタレント起用について

番組によると、鉄腕DASHのプロジェクトには、国分太一さんの他にSexy Zoneの松島聡さん、Travis Japanの松田元太さんら旧ジャニーズ事務所所属のタレントが参加する。
創業者のジャニー喜多川氏の性加害問題を受け、現在複数の企業テレビ局が、旧ジャニーズ事務所に所属していたタレントの起用を停止している。
旧ジャニーズ事務所所属のタレントを子どもが利用する場所である公園の整備企画に起用した理由について、日本テレビは「すでに起用が決まっている旧ジャニーズ事務所所属タレントの出演について変更はありません」と回答した。
一方、東京都の小池百合子知事は9月に、コンプライアンスの問題が解決されるまでは都として旧ジャニーズ事務所との新たな契約を結ばない方針を示している
都立明治公園の事業主体である東京都は、旧ジャニーズ事務所のタレントが参加することをどう考えているのか。
担当者に取材したところ「都が旧ジャニーズ事務所と直接契約しているわけではなく、Park-PFI事業者であるTokyo Legacy Parksが取材に協力しているというもの」と説明した。
その一方で、東京都には旧ジャニーズ事務所所属のタレント起用への苦情も寄せられているという。
「都は事業者に指導しないのか」という質問に対して、担当者は「どのタレントを起用しどういう番組を作って新しい公園をPRするかはテレビ局の判断」と説明した上で次のように回答した。
「公園の整備や管理に支障がないよう今後も求めていきます。また、社会情勢を踏まえて、適切に判断していただきたいということも求めていく必要があるとは思っています」
日本テレビの回答では、タレント起用の経緯についての説明はあったものの「50年間コンクリートだった場所」と表現した理由や、建国記念文庫の森で行われる樹木伐採に対する直接的な説明は見られなかった。
企業や組織などが、環境保護に熱心だとPRして良いイメージを作る一方で、環境にダメージを与えるような事業や行動に従事することはグリーンウォッシングと呼ばれる。
国連はグリーンウォッシングについて、気候危機に対する誤った解決策を促進し、具体的で信頼できる行動を遅らせると指摘している。

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