坂口憲二さん、コーヒーブランドの立ち上げから約2年。今の心境を聞いた

コーヒー焙煎士としてセカンドキャリアの道を歩む坂口憲二さん。「2年目の会社で、まだ様子を見られている状態」としながらも、「自信がついたと思います」と手応えを語りました。
坂口憲二さん
写真:三浦安間
坂口憲二さん

無期限で芸能活動を休止し、セカンドキャリアとしてオリジナルの焙煎豆やコーヒーグッズを提供するビジネスを2018年にスタートさせた坂口憲二さん。都内にオープンしたコーヒーショップは、この夏に1周年を迎えた。

ブランドの認知も広がり、リピーターも増えているが、2020年は新型コロナ禍で店舗を営業停止する事態にも見舞われた。

坂口さんは「2年目の会社で、まだ様子を見られている状態」と言うが、「強い思いをもってやり続ければ、必ず人に伝わっていく。自信がついたと思います」と手応えを語る。いまの心境を聞きにいった。

 

コーヒービジネスを立ち上げるまで

人気俳優として、芸能界の第一線で活躍していた坂口憲二さん。コーヒーロースターとしてセカンドキャリアの道を歩み始めたのは、2018年のことだ。

活動休止のきっかけは、国指定の難病である「特発性大腿骨頭(だいたいこっとう)壊死症」を発症したため。股関節を形成する大腿骨頭のまわりに血が巡らなくなり、壊死が生じてしまう病気だ。

治療を受け、数年は体調管理をしながら芸能活動を続けていたが、徐々にセカンドキャリアを考え始めたという。3人目の子どもを授かったタイミングで所属事務所の契約を解除し、コーヒーの焙煎士(ロースター)として新たな一歩を踏み出した。

焙煎の技術は、バリスタ・ロースターの成澤敬介さんからプライベートレッスンを受けて学んだという。成澤さんと坂口さんは10歳以上年が離れているが、意気投合し、2018年にコーヒーブランドThe Rising Sun Coffee(ザ・ライジング・サン・コーヒー)」を共に立ち上げた。

拠点となっているのは、サーフィンの聖地・九十九里。

海からわずか3分の場所に焙煎所を開設し、生産から流通までを透明化した高品質の「スペシャルティコーヒー」と呼ばれる豆を焙煎している。コーヒー豆のほか、Tシャツやマグカップなどのグッズも展開している。

2019年夏には、都内に住所非公表の1号店を開店した。

「The Rising Sun Coffee」1号店
Aya Ikuta / HuffPost Japan
「The Rising Sun Coffee」1号店

 

立ち上げから2年 「自信がついた」

ブランドの立ち上げからおよそ2年。 

設立した会社のスタッフは3人から5人になり、卸売の取引先も増えた。Instagramのフォロワー数は12万人を超えている。

ブランドを支えるリピーターも多く、「本当にありがたいです」と坂口さんは語る。

「強い思いをもってやり続ければ、必ず人に伝わっていくと感じて、自信がついたとも思います。注目していただいてから、Instagramのフォロワー数もすごく増えて。すごくありがたいことなんですけど、動向を気にされているということへの意識、発信をする上での緊張感は常に持っています」

一方で、ゼロからブランドを立ち上げることの難しさにも直面している。

「物を作る時、ただ作ればいいというわけではなく、その先を見据えてやらなくてはいけない。コーヒー豆の物販も、アパレルも、常に需要と供給のバランスを考えながら丁寧にやらないと在庫ばかりになって、食品ロスに繋がってしまいます。Instagramの投稿一つにしても、気分であげるのではなくて、戦略を立てながらやらないとやっぱり反応が全然違う。日々、試行錯誤していますね」

《ショップの開店1周年に投稿された写真。ブランド立ち上げ当初の3人のメンバー。中央が坂口憲二さん、右は成澤敬介さん。》

新型コロナで休業も

一方で、2020年は予期せぬ事態にも見舞われた。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、都内のコーヒーショップは4月〜5月までの約2カ月間、休業を余儀なくされた。

「卸販売しているショップも営業停止になったので、4月から5月の間、注文は激減しました。ただ、ラッキーだったのは、もちろん影響はゼロではなかったんですけど、うちはオンラインショップでの売り上げが中心なので経営に大きく打撃を受けたというほどではなかった。オンラインを主軸に展開していたのが功を奏したと思います」

むしろ、「ステイホーム」や在宅ワークが広がったことで、「おうちで美味しいコーヒーを飲みたい」という需要の高まりも感じたという。

「豆を挽いてコーヒーをいれると、香りも味も全然違いますし、本当に美味しい。ステイホームで、そういうゆっくりしたひと時へのありがたさ、大切さを感じた人もいるんじゃないかなと思います」

「コーヒーを好きになる人をもっと増やしたい」

筆者が初めて坂口さんを取材したのは2019年10月のことだった。

病気のこと、芸能活動休止に至るまでのこと、そしてコーヒー焙煎士としてのセカンドキャリアへの思いについて、率直に語っていたが、当時も現在も、坂口さんが強調したのは「コーヒーの魅力をたくさんの人に伝えたい」ということだ。

ブランドでは、焙煎時に出る「チャフ」という燃え殻を再利用した『コーヒー染めTシャツ』なども販売している。多様なアプローチでコーヒーの奥深さを伝えていこう、という試みを積極的に行なっている。

「コーヒーと関わるようになってから、コーヒーの多様性、可能性を肌で感じています。こんなこともできるのか、というほどすごいパワーを持ってるんですよ。

もちろん、一番大事なのはコーヒーのクオリティですし、スペシャリティーコーヒーの取り組みを伝えることも使命だと思っています。それと同時に、グッズとか色々なものに転化させることで、コーヒーを好きになる人をもっと増やしたい。あらゆる手段でコーヒーの魅力を伝えることで業界の底上げをしたいですし、結果的に生産者への恩返しにもなると思っています」

「『The Rising Sun Coffee』と言われるまでを目指さないといけない」

今後も、「The Rising Sun Coffee」の商品を扱う取引先を増やし、リアル店舗の拡大を目指していくという。

「まだスタートして2年目の会社ですから、様子を見られている状態だと思います」

坂口さんはそう語る。

「3年、5年と頑張って、ちゃんと一つのブランドとしてかたちにしたいですね。少しずつビジネスは大きくなっているけど、そうするとスルーできない問題も起きてくる。ゼロからイチをやるのは本当に大変だと身に染みています。そこに生きがいを感じないと続けられないし、何よりも『好き』だという思いが大事だなと感じています」

「自分の名前を出すことにジレンマはもちろんあります。ブランドを成長させるためには、スタッフに対して『信じてやってほしい』とお願いしています。『坂口憲二のコーヒー屋』ではなく、『The Rising Sun Coffee』と言われるまでを目指さないといけない。美味しいコーヒーを真剣に作り続けていれば、いつか絶対に結果がついてくると信じて、ブレずにやり続けたいと思います」

オリジナルラテベース
The Rising Sun Coffee
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