PRESENTED BY WOWOW

日本の製作費の20倍以上。日米のスターが共演、超大作ドラマ『TOKYO VICE』の舞台裏と役作りを主演アンセル・エルゴートが語る

ハリウッド水準で制作された、WOWOWの連続ドラマ『TOKYO VICE』。コロナ下にもかかわらず、一切の妥協を許さない制作スタイルが既に評判だ。日米の才能が火花を散らした、かつてない作品。日本の新聞社で働くアメリカ人記者を演じた、主演のアンセルがその貴重な制作の舞台裏をハフポスト日本版に語った。
Photo Kaori Nishida

WOWOWがハリウッドと本格タッグを組んで制作した連続ドラマ『TOKYO VICE』の配信が4月7日から始まった。渡辺 謙、伊藤英明、菊地凛子ら日本人キャストへの注目も集まるなか、あらためて脚光を浴びたのが主演を務めたアンセル・エルゴートだ。

ロケ地にもこだわり、全編日本ロケを敢行。渋谷の街角や邦画及びドラマ史上初となるJR新宿駅の撮影も行った。
ロケ地にもこだわり、全編日本ロケを敢行。渋谷の街角や邦画及びドラマ史上初となるJR新宿駅の撮影も行った。
©️HBO Max / James Lisle

スティーブン・スピルバーグ監督の最新作映画『ウエスト・サイド・ストーリー』に主演するなど、今ハリウッドで最も勢いがある実力派若手俳優と呼ぶにふさわしいアンセル・エルゴート。日本で新聞記者としてキャリアをはじめたジェイクを演じたアンセルは、時に日本語も交えながら取材に応じた。その姿は異文化を理解し、知り尽くそうとした主人公の役柄そのものでもあった。

自然な演技の裏には日本への深い理解と毎日4時間の日本語の猛特訓があった

Photo Kaori Nishida

WOWOWとアメリカの配給プラットフォームHBO Maxが共同制作した『TOKYO VICE』。日米の実力派スタッフ、キャストが結集し、1990年代の東京を細部まで再現した美術にも評価の声が高まっている。彼らのなかでも、アンセルの存在感に注目が集まった理由は明らかだ。

卓越した役作りである。簡単な挨拶を日本語で済ませるだけならば、よくある話だ。だが、彼は違う。インタビュー取材でも通訳はいるが、なるべく日本語を使いながら返そうとする。

第1話の監督であり、全話を通じてエグゼクティブ・プロデューサーを務めたマイケル・マンの印象をアンセルに聞けば、日本語でこう返ってくる。

「マイケル・マンは力強い監督です。キャストには厳しいけど、私はマイケル監督を信じていました。他の回で監督を務めたHIKARI監督はキャスト達を信頼してくれて、現場に下駄を預けてくれました」

舞台は1999年の東京。日本の暗部へ切り込むため、記者ジェイク(アンセル・エルゴート)は片桐刑事(渡辺 謙)と不思議な縁で結ばれ、次第に信頼関係を築いていく。
舞台は1999年の東京。日本の暗部へ切り込むため、記者ジェイク(アンセル・エルゴート)は片桐刑事(渡辺 謙)と不思議な縁で結ばれ、次第に信頼関係を築いていく。
©️HBO Max / James Lisle

最大の見どころである東京の街の映像と、そのなかで違和感も覚えながら溶け込み、ヤクザの世界を解明しようとするジェイクの姿と、アンセル自身が持つ仕事への真摯さはやはり近いようだ。彼の日本語での答えに耳を傾けてみよう。

「毎日、日本語を4時間練習しました。そのうえで合気道も勉強しました。事件記者の勉強もして、実際にロサンゼルスで記事を書く練習もしました。日本語の記事も書きました。日本の新聞社にも行って、仕事をする様子を見せてもらいました。

合気道での練習で私は汗をかき、体が震え、早く呼吸をしていました。ところが合気道の先生も道場の人たちも汗をかいていません。そこでリラックスが大事であることを学びました」

劇中では宮本刑事(伊藤英明)とジェイクが道場にいるシーンも。リアリティある演技のために合気道を学ぶ、アンセルの妥協なき姿勢が伺える。
劇中では宮本刑事(伊藤英明)とジェイクが道場にいるシーンも。リアリティある演技のために合気道を学ぶ、アンセルの妥協なき姿勢が伺える。
©️HBO Max / James Lisle

最初は日本語で澱みなく話し、それ以上に複雑な説明が必要な部分は英語に切り替える。毎日4時間に及んだという勉強方法について、やはり日本語で仔細に語った。

「例えば先生は月曜日にひらがなを教えて、週末までにすべてを覚えておくように、と言いました。私はきちんと覚えました。日本語のセリフもずっと頭のなかで話すようにしていました。

その時間は決して嫌ではなかったです。日本の人たちは自分の仕事に対し、非常に献身的に取り組みます。私の日本語も先生のおかげで上達したと思います」

大きかった渡辺 謙の存在。より良い作品のための「アドバイス」とは

撮影のなかで、大きな影響を受けたのが渡辺 謙の存在だったとアンセルは明かす。新聞記者ジェイクとバディを組むことになる敏腕刑事、片桐を演じた渡辺は役者としても最良の先輩と言える存在だったようだ。映画『ラスト サムライ』で、アカデミー賞®助演男優賞にノミネートされた経験も持つベテランは異国の地で撮影に臨むアンセルに貴重なアドバイスをした。

「(日本語で)渡辺 謙さんと仕事ができることは本当に光栄なことです。謙さんからアドバイスをもらいました。それは私が語る日本語のセリフであっても英語、つまり私の母語で覚えておくといいというものです。

私は日本語の勉強にもなるから英語のセリフでも、日本語で覚えておこうとも思いました。撮影時に日本語と英語の両方を使っていました。よりリアルなジェイクになりますよね」

「謙さんの演技は緻密で完璧」とアンセル。渡辺はアンセルと日本語と英語のセリフの使い分けに関してアドバイス。現場ではアンセルと忌憚なく話し合ったという。
「謙さんの演技は緻密で完璧」とアンセル。渡辺はアンセルと日本語と英語のセリフの使い分けに関してアドバイス。現場ではアンセルと忌憚なく話し合ったという。
©️HBO Max / James Lisle

彼が演じる新聞記者ジェイクは、日本文学を学ぶために上智大学に留学してきたアメリカ人だ。日本語で入社試験をこなし、新聞記者としてのキャリアをスタートさせていく。だが、劇中の事件取材はジェイクが思い描いていた通りの世界ではなかった。彼は何度も悩み、壁にぶつかる。

「このドラマのストーリーにはミステリーもあるし、サスペンスもある。物語が進むなかで、ジェイクも誰を信じたらいいかわからなくなる。観客にも同じような気持ちになってほしいと思っています。

ジェイクはヤクザを取材し、自ら記事にしようとする。そのなかで、ヤクザを取り締まる側の警察にも汚職があることに気がつくのです」

Photo Kaori Nishida

「(日本語で)ジェイクは多くの記事を読んだり、雑誌を読んだり、合気道をしたりと日本のカルチャーをリスペクトしています。でも規則に従わず、時に権威に歯向かいます。それは日本文化らしくないですね。おもしろいコントラストになっていると思います。多くの日本人キャストのなかでも目立つ存在です。マイケル・マン監督はきっとこのコントラストを描きたかったのでしょう。

撮影の合間には自転車に乗って、代々木公園に行ってバスケットボールをする時間もありました。ジェイクのように日本文化を大切にしながら、別の時間も大切にしていたのです」

日本の俳優たちの高い実力。なかでもプライベートで親交を深めたのは…

見どころについて、自分ばかりではなく他のキャストを引き立てる発言もあった。ジェイクとは気心が通じ合うのだが、敵なのか味方なのか、素性がわからない若きヤクザのリーダー、佐藤を演じた笠松 将を激賞する。

笠松 将は「とてもエキサイティングな現場。マイケル・マン監督たちが余計な要素を取り除いてくれて、演技だけに集中することができた」と、本作品の現場の“特別感”を語った。
笠松 将は「とてもエキサイティングな現場。マイケル・マン監督たちが余計な要素を取り除いてくれて、演技だけに集中することができた」と、本作品の現場の“特別感”を語った。
©️HBO Max / James Lisle

「(日本語で)このドラマのおもしろさはかなりリアルなヤクザの姿を描いているところにあります。例えば笠松 将の演技を観てほしい。将はクールでありながら、感情もよく表現します。誰もが魅力を感じる俳優です」

第1話から裏社会との接点を匂わせる暴力団担当の刑事、宮本として印象的な演技を披露した伊藤英明とは、この撮影を機にプライベートでも交友を深めたようだ。

「(日本語で)英明さんとウマがあいました。新年には岐阜にある英明さんの実家にも行きました。文字通り、裸の付き合いで温泉に毎日入りました。お母さんの手料理をごちそうになりました。岐阜城のある山にも登って、初詣にも行きました。おみくじで英明さんの息子と私は大吉を引きました。英明さんに本当に感謝しています」

アンセル自身はS・スピルバーグ、マイケル・マンら大物監督からの抜擢が続く理由を「大吉を引きましたから」と笑いながら答えたが、その裏にあるのはハリウッド水準の役作り、役への没入にあるのは間違いないだろう。

WOWOWによる『TOKYO VICE』がキャスト達だけでなく、日本のエンタメ界の大きな変化のはじまりになった── 。そんな歴史が語られる日も近いのかもしれない。

ハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE』
WOWOWにて毎週日曜午後10時より独占放送中。WOWOWオンデマンドにて配信中。

■『TOKYO VICE』番組サイトはこちらから

(撮影:西田香織  文:石戸 諭  取材・編集:佐藤健秀/ハフポスト日本版)