バスを間違えた五輪選手を救ったティヤナさんが語る。競技に出られなければ「一生後悔させてしまう」

「ここまで(反響が)大きくなってこんなにも多くの方に賞賛されて、正直まだずっと驚きっぱなしです」
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パーチメント選手が贈呈したジャマイカチームのシャツを身につけたティヤナさん
パーチメント選手が贈呈したジャマイカチームのシャツを身につけたティヤナさん
ティヤナさん提供

東京オリンピックで、競技会場に向かうバスを間違えたジャマイカ代表選手を救った大会関係スタッフのティヤナさんが8月13日、ハフポスト日本版の取材に答えた。

手持ちの1万円札をタクシー代として渡した理由を、競技に出られなければ「一生後悔させてしまうかもしれない」と思ったからと述べた。

■ジャマイカ代表のパーチメント選手を襲ったハプニングとは?

陸上男子110メートル障害で金メダルを獲得したパーチメント選手(8月5日撮影)
陸上男子110メートル障害で金メダルを獲得したパーチメント選手(8月5日撮影)
Xinhua News Agency via Getty Images

ジャマイカ代表のハンスル・パーチメント選手は8月4日、陸上男子110メートル障害準決勝に出場予定だった。しかし、公式Instagramに投稿した動画 によると、新宿区のオリンピックスタジアムに向かうバスに乗るはずが、音楽を聞いていて違うバスに乗ってしまい、気づいた時には江東区の「海の森水上競技場」に到着していた。

バスで選手村まで戻ると、ウォーミングアップに間に合わない。途方に暮れたパーチメント選手は「ボランティア」のティヤナさんに助けを求めたところ、タクシーに乗るためのお金を渡された。オリンピックスタジアムに向かうことができ、ウォームアップにも間に合ったという。

その後、パーチメント選手は決勝進出を果たし、シーズンベストの13秒04で金メダルを獲得した。後日、ティヤナさんに再会してお金を返し、ジャマイカチームのシャツを渡した。そして、金メダルを手に「あなたのおかげで、あの日決勝に進めた」と感謝を伝えている。

■ティヤナさん「お金は誰にも言わずこっそり渡しました」

ティヤナさんと再会したときの様子(パーチメント選手のInstagramより)
ティヤナさんと再会したときの様子(パーチメント選手のInstagramより)
Instagram/parchment_hansle

ハフポスト日本版は、ティヤナさんにパーチメント選手との交流について聞いた。

日本とセルビアにルーツがあるというティヤナさんによると、正確には「ボランティア」ではなく、大会関係スタッフだった。大会関係者のバス輸送を担当する近畿日本ツーリストの委託業者だったという。

ティヤナさんは、タクシーの手配は組織委員会と話したが、タクシー代についてはポケットマネーの1万円をこっそり渡した。パーチメント選手が「人生かけて日本に来てくれたんだろう」と思い、「試合に出られなくて一生後悔させてしまうかもしれない」ことを放っておけなかったという。

ティヤナさんとの一問一答は以下の通り。

—— パーチメント選手にタクシー代を渡したのはティヤナさんですか?

タクシーの手配は組織委員会さんと致しましたが、お金は誰にも言わずこっそり渡しました。問題になったらみんなに迷惑かけてしまうと思って…

—— ティヤナさんのことをパーチメント選手が動画で「ボランティア」と説明していましたが、着用している衣服に「近畿日本ツーリスト」のロゴがありました。スタッフの方ですか?

近畿日本ツーリストさんの委託業者でスタッフです。ボランティアではないです。

—— パーチメント選手からの相談はどんな内容でしたか?

「バスを乗り間違えてきてしまってオリンピックスタジアムに向かいたい」「もう次の選手村経由のバスを待ってる時間がない」ということで、「タクシーを手配できるのでお金はありますか?」と尋ねたところ「無い」とおっしゃって。お金についてはわたしの独断でお渡ししました…。ポケットマネーです。その時その1万円札しか持っていなかったので渡しました。

—— パーチメント選手にお金を渡した理由は?

現場で働いてるからこそ分かるんですが、現場にいるスタッフやボランティアの方でさえ道案内の表記の見方やどこに何があるのか分かってなかったりする中、知らない土地に来て、頭の中は試合の事でいっぱいのはずで、集中していて余計に判断が鈍って間違ってしまうのは無理もないだろうと感じました..

私が持っている1万円は、私が働けばまた手にすることができる。でも、彼は何の選手か分かっていなかったけど、開催されるかずっと分からなかったオリンピックが急遽やっと開催されることになって、今ここに彼が居られることは奇跡かもしれなかったわけで。「きっと国中のいろんなものを背負って、人生かけて今日本に来てくれたんだろう」と思うと、試合に出られなくて一生後悔させてしまうかもしれないことを私にはできなくて……。それで誠に勝手ながら手で隠しながら手渡しました。

—— 後日、パーチメント選手に再会して、金メダルを取ったこととお礼を言われたとき、どんな気持ちでしたか?

「必ず探しに戻ってくる」と言われていました。私は「忙しいだろうしそんな事はしなくてもいい」と断っていたのに、ちゃんとまた会いに来てくれて、しかも金メダリストになって戻ってきて、サプライズとプレゼントもくださって、言葉が見つからなくてありがとうばっかり言ってしまった気がします.. 彼が喜んでくれていて本当に嬉しかったです。ただただずっと驚きが止まりませんでした。

—— ティヤナさんをジャマイカに招待したいと観光大臣が述べています。招待を受けるご予定はありますか?

ジャマイカ大使館の方からも電話を頂いてお話ししました。話し合いをしながら決めようと思っています。

—— ティヤナさんの行為は、世界で広く報道され賞賛を集めていますが、そのことをどう感じていますか?

私は特別な行動をとったわけではなくて、相手の立場に立って考えて自分の心を貫いただけだったので、ここまで(反響が)大きくなってこんなにも多くの方に賞賛されて、正直まだずっと驚きっぱなしです。私の方が皆さんに感謝の思いでいっぱいになっています。

■金メダルを手に「あなたのおかげ」とティヤナさんに感謝するパーチメント選手の動画