「ここがつらいよ!付き添い入院」イラスト付き体験談に反響。脳梗塞と診断された娘と共に2カ月間

子ども用のベッドで添い寝。シャワーは30分交代制。食事は出ず、3食全て病院の売店。「おにぎりとパンとスープ春雨を朝昼晩と繰り返す日々は本当に辛かった」と振り返りました。
四月さよならさんが投稿したイラスト付き体験談「ここがつらいよ!付き添い入院」より
Twitter/suika_apr
四月さよならさんが投稿したイラスト付き体験談「ここがつらいよ!付き添い入院」より

生後まもなく脳梗塞と診断された娘の世話をするために約2カ月間、24時間の付き添い入院をした女性のイラスト付き体験談が8000回以上もリツイートされている。

満足に食事も睡眠も取れない苛酷な病院生活。同様の体験をしたとみられる人たちから「めちゃくちゃ分かります!」「まったくもって同じ状況でした」「子供の命のためになんとかがんばることができるけど、冷静に考えたらとても過酷」と反響を呼んでいる。

この体験談を10月5日にTwitterに投稿したのは、0歳で脳梗塞になった娘についてイラストや文章を「gooいまトピ」で連載している「四月さよなら(@suika_apr)」さん。「#病院の付き添いを考える」のハッシュタグをつけた上で、付き添い入院について「めちゃくちゃつらいけど、知らない人は本当に知らない世界なのでぜひ知って欲しいと思います」と訴えている。

■「#病院の付き添いを考える」は、ハフポスト日本版で呼びかけたハッシュタグだった

入院中の子どもに24時間、保護者が付き添うことになる「付き添い入院」について、ハフポスト日本版では何度も問題提起してきた。

今回、四月さよならさんが体験記を投稿する際に付けた「#病院の付き添いを考える」のハッシュタグは2017年当時、ハフポスト日本版の錦光山雅子記者(当時)が記事上でTwitterユーザーに投稿を呼びかけたものだった。読者の反響は大きく4年後の2021年現在も、さまざまな体験談が寄せられている。

錦光山さんによると、全国の病院で「『付き添いは原則お断り』と言いながら、あたかも親の希望という体裁をとり、実際には付き添いを半ば強要し、睡眠や入浴、息抜き、食事も満足にできないベタ張りの付き添い生活を余儀なくさせている」ケースがみられるという。

こうした付き添い入院について、中日新聞は「制度上のグレーゾーン」と指摘。以下のように解説している。

<患者負担による付き添い看護は1994年の健康保険法改正に伴う新看護体系の導入で原則、廃止されている。ただ、治療や入院について理解が難しい子どもや知的障害者などは家族の付き添いが認められている。その場合も病院側が強制することはできないが、家族側が付き添いを希望するよう促すことは可能で、制度上のグレーゾーンといえる>

■2カ月の間、「おにぎりとパンとスープ春雨を朝昼晩と繰り返す日々は本当に辛かった」

 今回の体験記を投稿した四月さよならさんによると、2017年1月に生まれた娘の「すいか」さんが生後22日目の朝に「けいれん」の症状が出て入院、脳梗塞と診断された。症状が落ちついて集中治療室から小児病棟に移ってから5日目、「じゃ、お母さん、明日から付き添い入院行ける?」と看護師長から聞かれて「できます!」と答えたという。

「やっと娘と一緒に夜過ごせる。授乳もできる」と嬉しかったが、待っていたのは想像もしなかったほどつらい「24時間付き添い入院」の生活だった。期間は2017年2月〜4月の2カ月間に及んだ。

マンガでは「ここがつらいよ!付き添い入院」として、①3食すべて病院の売店 ②シャワーは30分交代制 ③子ども用のベッドで添い寝する…の3つを挙げている。大人用の食事は出ないため、売店でおにぎりやパンを買って病室に戻って食べる生活。夜は柵のついた子ども用ベッドで娘と添い寝するが、モニターは常時点滅していてまぶしい上に、狭いため体勢を変えることが出来ず体がバキバキになったという。

四月さよならさんはハフポスト日本版の取材に、この3点の中で最もつらかったのは①の食事だったとして、以下のように答えた。

「買いに行くタイミングを見計らうのも疲れますし、買いに行っても炭水化物と味の濃いお惣菜ばかりで食べたいものがなく、おにぎりとパンとスープ春雨を朝昼晩と繰り返す日々は本当に辛かったです」

パートナーは当時仕事が忙しく、朝7時に家を出て、病院の面会時間21時ギリギリ来るという日々を送っていたという。

しかし、苛酷な生活が続いたことで四月さよならさんのメンタルに負担がかかり、入院2週間目で少しのことでも涙が出てしまうようになった。パートナーに数日間付き添いを代わってもらったところ、精神的に回復。「自分がいかに疲れていたか」自覚したという。

「gooいまトピ」の連載からイラストを切り出してTwitterに投稿した理由について「こんなに過酷な状況であるにも関わらず世間にあまり知られていないのではないかなと思いました」と振り返っている。

■四月さよならさんとの一問一答

―― 看護師長さんから「明日から付き添い入院いける?」と聞かれて「できます!」と即答したとのこですが、病院側からは「付き添い入院をしてほしい」というニュアンスだったでしょうか?それとも付き添い入院しない選択肢も選べるような提案でしたか?

個人的な感覚では「付き添い入院をしてほしい」というニュアンスだったと思います。私に拒否する理由がなかった(育休中、第一子で他に兄弟なし、介護なし)ので、こちらから敢えて聞くこともしていませんが、付き添い入院しない選択肢も選べるような提案は病院側からはありませんでした。ただ、他のお子さんを見ていると、生後半年くらいの赤ちゃんが付き添われていないことなどを見かけたので、可能なのかなと思ったりはしました。(病院に確認はしていません)

―― 付き添い入院の実態について病院側から事前に説明はありましたか?

事前にしっかりした説明を受ける機会はなく、付き添い入院初日に食事は出ないので売店で、シャワーはシャワー室で〜などひととおりの説明をサラッと受けた感じでした。

―― 付き添い入院中には大変な思いをされたかとお察しします。漫画では、シャワー・食事・ベッドの3点について特に触れていましたが、この中でもし一番つらかったのはどれですか?

一番は食事です。買いに行くタイミングを見計らうのも疲れますし、買いに行っても炭水化物と味の濃いお惣菜ばかりで食べたいものがなく、おにぎりとパンとスープ春雨を朝昼晩と繰り返す日々は本当に辛かったです。

―― 基本的には一日中、椅子に座っているような生活でしたか?

椅子とベッド、半々くらいだったと思います。ベッドで子どもが寝ている側で座っているときもありましたし、夜間夜泣きなどで眠れなかったときは日中でも一緒にベッドで添い寝してました。食事のときは椅子に座っていました。

―― 入院2週間目で少しのことでも涙が出てしまうようになった……とありますが、具体的には?

入院中、様々な検査を定期的にしていたのですが、ある日の脳波検査は親が午前にするか午後にするかを選べて、それを看護師さんが朝確認に来られたとき、看護師さんとしてはただの質問で「午前?午後?どっちにしますか?!」と聞いただけだと思うんですが、「朝の時点で子どもが午前に寝るか午後に寝るかなんて分からないし、どうしたらいいか分かりません…」と泣きながら答えたり、授乳がうまくいかない私にアドバイスをくださる看護師さんにも「そんなこともうやってます!」とまた泣きながら怒ったり。夜、夫が面会に来たら「帰りたい」と泣いて、そんな状態でした。看護師さんの些細な言動に過敏になっていました。

―― パートナーの方に夜の付き添いを交代してもらったとき、どのようなお気持ちになりましたか?

久しぶりに自分の身体を自分で見つめた感覚でした。子どもとベッドしか見えていない世界に自分の姿が飛び込んできたような。端的に言って自分自身を労る気持ちをもう一度持つことができ、心に余裕が生まれました。一方で私がいなくて大丈夫かなと心配もありました。

―― パートナーや他のご親族の方などに交代してもらったのは計何日間でしたか?

不確かですが、夜の付き添い交代は全部で3日間で、昼間数時間夫に見てもらって家に帰る、というのが3日くらいはあったと思います。あとは私の姉に一度だけ日中見てもらって外出したことがあります。

―― 今回、付き添い入院の体験を「#病院の付き添いを考える」のハッシュタグをつけてTwitterにご投稿されたのは、どんなお気持ちからでしょうか?

このハッシュタグを目にする以前に、今回話題になった漫画の初稿をいまトピの編集の方に見せた際「こんなひどい状況なの?!」と驚かれたことに、こちらも少し驚きました。付き添い入院の話はしていたので、なんとなく知っていてくれていると勝手に思っていたのです。その時にこれまで自分が周りの友人などにも「2ヶ月付き添い入院してて」と話したことは何度もあったものの、それがどんな状況だったか詳しく話したことは一度もないことに気づきました。

もしかしたら私が思っている以上に付き添い入院について知ってる人は少ないのかも知れないと思い、ネガティブ過ぎないか悩みながらも付き添い入院についての辛いことをまとめて漫画にしたという経緯があります。

そして、その後TLで「#病院の付き添いを考える」を目にして、私と同じように過酷な経験をしている方が多数いること、そしてそれを社会問題として捉え問題提起している方もまたたくさんいることを知り、私も少しでもそこに加われたらと思い、投稿しました。

―― 「#病院の付き添いを考える」のハッシュタグに多くの声が寄せられているのですが、「24時間の付き添い入院」について疑問を持つ声が続出しています。四月さよなら様は、付き添い入院についてどうなってほしいとお考えでしょうか?

まずは付き添いの親の分の食事を出して頂けたらそれだけで本当に違うと思います。子どもの看病をしながら食事を調達しなければならないストレスと栄養状態の悪いものを毎日毎食食べなければならないストレスから解放されるだけで精神的にだいぶ楽になります。その上で売店で好きなものを食べたいという人は各自で用意するというような仕組みにできたらいいのになと思います。

―― 今回投稿された漫画に2万5000件以上の「いいね」がつくなど多くの反響を呼んでいますが、どう感じていらっしゃいますか?

少しでも多くの方の目に留まればと思っていたものの、ここまでたくさんの反響を頂けるとは想像していなかったのでとても驚いています。印象的だったのは、今回私の漫画を読んでくださって「記憶が蘇ってきた、私もあのとき辛かった」という方が多くいたことです。私もそうなのですが、付き添い入院している渦中は子どものことを第一に考えて行動しているためどんなに過酷な状況でも耐えてしまいがちですし、退院してしまうと今度は日々の生活に追われて辛かった病院生活のことを忘れてしまう(もしくは忘れたい)ので、こんなに過酷な状況であるにも関わらず世間にあまり知られていないのではないかなと思いました。

「#病院の付き添いを考える」の声が広まって、今まさに辛い思いをしている方たちを救う何かに繋がればいいなと期待しています。また、付き添い入院の経験がない方から「知らなかった。こんなにひどい状況なの?!」というコメントをたくさん頂いたことも励みになりました。

■「#病院の付き添いを考える」ハッシュタグの考案した錦光山雅子さんのコメント

今回の体験記のように「#病院の付き添いを考える」には2021年10月現在も活発に投稿が続いている。2017年に、このハッシュタグを考案した錦光山雅子さんはこうした現状について以下のようにコメントを寄せた。

「朝日新聞に在籍中の2017年、肺移植を受けた1歳の女の子を取材した際、病院の求めで生まれたときからずっと24時間の付き添い入院を家族が担っていたことを知り、衝撃を受けました。表向きは『付き添い原則お断り』と言いながら、あたかも親の希望という体裁をとり、実際には付き添いを半ば強要し、睡眠や入浴、息抜き、食事も満足にできないベタ張りの付き添い生活を余儀なくさせている。しかも、この状態が『ないこと』になっている。

 

だから「あること」にしなければならない。そこでハフポストに出向して再びこの問題を取り上げ、その際読者に広く投稿を呼びかけようと『#病院の付き添いを考える』 のハッシュタグを作りました。

 

それから4年たった今も、このマンガのような投稿を見るにつけ、この問題がいまだに『ないこと』になっていることに、無力さを痛感します。いまだに24時間ベタ張りの付き添いを求める病院側の人的体制や意識、その誘因となる公的医療制度に大きな変化がないことは非常に問題です。

 

家族に付き添いを強いることがどれだけ精神的・肉体的な負担になるのかを理解し、そのうえで、『あること』として、正面から政策課題として取り組むための議論が始まってほしいと思います」