2021年06月07日 13時05分 JST | 更新 2021年06月07日 13時05分 JST

生まれはハワイ、ルーツは日本。サーファー・前田マヒナの笑顔の裏にある「美しさへの葛藤」に迫る #CHANGEDESTINY

SK-II STUDIOが公開したアニメーション作品「VSルール」。ハワイ生まれのプロサーファー・前田マヒナ選手が日本の美意識と向き合う姿を通じて、美のあり方を考える。

SK-II STUDIOが公開した「“VS”シリーズ」は、運命に立ち向かい乗り越えた女性アスリート6組の実体験をもとにしたアニメーション作品群。本シリーズの中でも美の価値観と正面から向き合い、多くの女性の共感を呼んでいるのが、ハワイ生まれで日本にルーツを持つプロサーファー・前田マヒナ選手が出演する「VSルール」だ。

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SNSでは「前田マヒナさんの回が一番好き。『美しくなるにはルールがあるのです。従えばあなたも美しくなれます』という親や世間の声に、女性は幼い頃から曝されているから」などの声が寄せられている。

また、前田マヒナ選手は自身のInstagramアカウントで「初めて見たときは、泣きそうになりました」と本作を紹介。

日本の伝統的な美意識と自分らしさの狭間で揺れ動き、思い悩む前田選手。彼女が辿り着いた美のあり方は、日本で生きる私たちに「美しさとは何か?」を問いかける。

 

サンセットビーチで父と二人乗り」サーフィンが運命を変えた

「VSルール」について語る前に、前田マヒナ選手のプロフィールを紹介したい。日本人の両親のもとハワイ・オアフ島で生まれ育った前田選手は、現在23歳のプロサーファー。東京五輪の出場権を獲得したことも話題を集めている。

4歳からサーフィンを始め、2013年にISA(国際サーフィン連盟)、WSL(世界プロサーフィン連盟)のジュニアタイトルをダブルで獲得。ジュニア時代から世界トップクラスの選手として活躍し、日本代表にも選ばれる才気溢れるサーファー。それが前田マヒナ選手だ。

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そんな彼女が「運命を変えた」と語る、初めて波に乗った瞬間は父と一緒だった。「サンセットビーチで父と二人乗りのサーフィンに乗って、それがすごく楽しかったんです」4歳の少女だった前田選手は、およそ10年後に世界チャンピオンの座に就き、今も第一線で活躍している。

 

「私が感じていたプレッシャーは美や見た目、カルチャーのこと」

弾けるような満面の笑みが魅力的な前田選手だが、「VSルール」では自身の見た目やルーツ、日本の美意識に対して葛藤する姿が描かれている。

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「私が感じていたプレッシャーは美や見た目、そして自分のカルチャーのことです。私はハワイ生まれだけど、バックグラウンドは日本。なので、自分自身の中で迷いがある時期も経験しました。自分がどこに属するのか中途半端になってしまい、まっすぐ進めないこともいっぱいありました」

そんな彼女の内面を描くように、作中では着物に身を包んだ日本人女性が「美しくなるにはルールがあるのです。従えばあなたも美しくなれます」と繰り返し語りかける。そして、日本の伝統的な美意識を反映した美しさのルールが教え込まれていく。

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「私はただ…、目立つつもりなんてなかった」日本の美意識に馴染めない

とくに筆者の心に留まったのは、5つ目のルール「謙虚(美しさとは、目立とうとしないこと)」。幼い前田選手は、海を目にして「海だー!」と立ち上がり全身で喜びを表す。そんな彼女に対し、「マヒナ、座ってなさい」と注意する着物姿の日本人女性。

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その悲しいやりとりを思い起こす前田選手は、「私はただ…、目立つつもりなんてなかったんです」と伏し目がちに呟く。筆者はこのシーンに強烈に共感した。少年野球チームで少年たちに混ざって白球を追う幼少時代を過ごした私自身、前田選手のように活発で意図せず「目立ってしまう」ことも少なくなかった。

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「静かにしなさい」「行儀良くしなさい」「おしとやかにしなさい」…周囲からかけられるそうした言葉は、(良かれと思っての注意だったと今はわかるが)非常に窮屈で、子供ながらに激しい違和感を覚えた。

 

スランプに苦しむ前田選手が辿り着いた、美のあり方

この違和感の正体は、周囲が期待する「日本人女性らしい美しさ」と「自分らしさ」の乖離から生じる感覚だと思う。そして、その感覚を心の奥に押し込めて周囲のプレッシャーに迎合することは、「自分らしさ」の否定であり深い葛藤を生む。 

「サーフィンも見た目も自分のカルチャーも…何もかも嫌になって、何もかも上手くいかなかった時期がありました」スランプに陥った前田選手は、どのように葛藤を乗り越えたのか?

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作品のクライマックスとなるシーンでは、次のセリフと共に、それまで身につけていた着物を脱ぎ捨て、サーフスーツ姿になる前田選手の姿が描かれる。

「私の道はこれ。ここにいるのが、本当の私。信じる。

美しさとは、自分の心に従うこと。

人に決めてもらうものじゃない。

何が美しいか、自分のルールは自分で決める」

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そして、美しさのルール(=日本の伝統的な美意識)を語っていた着物姿の日本人女性と見つめ合い、頷き合う。お互いを認め合うような表情が印象的なシーンだ。

 

日本の伝統的な美意識=悪ではない。そこに潜むのは、もっと複雑な問題

ここで注目したいのが、前田選手に美のルールを言い聞かせていた着物姿の女性は“倒すべき敵”として描かれておらず、最終的に理解し合うような描写がされている点だ。 

この表現からわかるよう、本作が提起する問題は、「日本文化/日本の伝統的な美意識=時代錯誤で、女性を抑圧する悪」といった極めて単純化されたものではない。

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むしろ日本にルーツを持ち、日本の文化に愛着を抱く女性が「日本文化」と「自分らしい自分自身のあり方」の折り合いを上手くつけられずにいること。その複雑な心境と深い葛藤が本作の肝なのだと感じた。

つまり、真の倒すべき敵は、既存の文化や美意識を「押し付ける」プレッシャーにある。私たちには常に選択の自由があるべきで、文化に依拠する画一的な美が絶対善と見なされるべきではないと筆者は考える。

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日本文化がフィットし、その行動様式に自分らしさを感じる人は、そのように振る舞ったらいい。一方でフィットしない人は、異なる振る舞いをする。そこには優劣などなく、ただ「その人らしさ」があるだけではないか。

 

「日本人である誇りを、次の世代に伝えたい」前田選手の唯一無二の美しさ

最後に、本作のクリエイティブ面にも触れておきたい。「VSルール」の幻想的なアニメーションにインスピレーションを与えている美しい日本画の数々。これらは、現代美人画を代表する気鋭の日本画家・池永康晟(いけなが・やすなり)氏が描いている。日本の伝統的な女性像や風景を美しく描写する表現からは、SK-II STUDIOの日本文化へのリスペクトが感じられる。

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日本人の両親のもとハワイで生まれ育ち、日本にルーツを持つ前田マヒナ選手。「日本人である誇りを、次の世代の人たちに伝えたい」そう語る、彼女の唯一無二の美しさを描いた「VSルール」を含む6作品は、バーチャルシティ「SK-II City」で視聴できる。